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NASAは宇宙船のナビゲーションに18世紀の発明品「六分儀」を使用するかもしれない


by Alyson Hurt

六分儀」とは、天体や物体の高度や水平方向の角度を測るための道具であり、天体の高度測定や自身の位置を割り出すことができます。小型で持ち運び可能な六分儀は、海を航海する船舶にのせられて航海時のナビゲーションツールとしても使用されてきました。そんな六分儀を、「宇宙船の操縦に使うかもしれない」とNASAは表明しています。

Deep space navigation: tool tested as emergency navigation device
http://www.spacedaily.com/reports/Deep_space_navigation_tool_tested_as_emergency_navigation_device_999.html

六分儀は1757年に発明されてからというもの、島や大陸といった道しるべを得ることができない外洋を航海する船舶が、自身の位置や向かうべき方角を知るために使用されてきました。六分儀には小さな光学望遠鏡が搭載されており、コンピューターなしでも空に光る星の間の正確な角度を測定することができます。

数世紀にわたって海上を航海する船乗りたちを助けてきた六分儀ですが、1961年から1966年にかけてアメリカが行った有人宇宙飛行計画である、「ジェミニ計画」においては、宇宙船に搭乗した宇宙飛行士が「宇宙空間で六分儀を使用する」という実験を行っていたとのこと。ジェミニ計画における六分儀の使用は、後に行われるアポロ計画を念頭に置いたものだったそうです。

人類初の月面到達に成功したアポロ計画において、「搭乗員が地球との通信が不能な状態に追い込まれてしまった場合、どのように地球へ帰還するのか」という懸念は避けて通れないものでした。そこで、NASAの研究者らは六分儀を使って宇宙船の位置を割り出し、地球までのナビゲーションに使用するというアイデアを思いつきました。実際にアポロ8号に搭乗した宇宙飛行士のジム・ラヴェル氏は、宇宙空間でも六分儀によるナビゲーションが可能であるというデモンストレーションを行ったとのこと。

by gelle.dk

1973年から1979年まで地球を周回した宇宙ステーションの「スカイラブ」においても、NASAは引き続き六分儀を用いた宇宙空間ナビゲーションのテストを行っており、宇宙船に非常事態が発生した場合に六分儀を使用することを真剣に検討しています。NASAでナビゲーションシステムのエンジニアを担当しているグレッグ・ホルト氏は、「宇宙空間においても、六分儀の基本的な使用法は地球上での使われ方と変わりません」と述べました。

「しかし、六分儀の基本的な使用方法は地球上でも訓練が可能ですが、非常時に宇宙船の窓から安定した視界を確保し、六分儀で方角を測定することは地球上では難しいものです」ともホルト氏は語っており、非常事態用のバックアップに「車輪の再発明」をする必要はないものの、宇宙飛行士は常に非常時に備えて技術を磨いておく必要があるとしています。

NASAはスペースシャトルの代替としてオリオンという有人ミッション用宇宙船を開発中であり、オリオンを含む最新鋭の宇宙船の緊急航行で六分儀が使用される可能性は十分にあるとのこと。地上との通信が途絶えた状態で安全に帰還するため、できるだけ電力の消費を抑えて宇宙空間のナビゲーションを行うには、六分儀のように少ない部品で構成されており、単純な操作で方角を割り出せるツールは非常に有用です。21世紀に開発される最新鋭の宇宙船にも、18世紀の航海で使われた道具が搭載されるかもしれません。

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