日々多忙を極めている孫正義、ジェフ・ベゾス、ジャック・マーの偉大な経営者たちが日々行っているのと同じ行動を、実は我々も知らないうちにやっていることをご存じだろうか。
その行動とは「ミッション」と表現される。
孫正義、ジェフ・ベゾスやジャック・マーの3氏は「ビジョナリー」とも称される。たとえばアマゾンを創業し、巨大化させたジェフベゾスが若かりし頃に構想した「ファストデリバリ」(迅速な配達)という壮大なビジョンは、誰にでも持てるものではないかもしれない。
しかし実は彼が日々行っている「ミッション」は、本質的に我々もやっているのである。ただし残念ながらそのことに多くの人が、気が付いてはいない。これほどもったいないことはないだろう。そのミッションに気が付けば、それは人生において生きるための重要な「武器」になるからだ。
「ミッション」を理解すれば、その人生は偉大な3人の経営者と同様に、有意義で豊かなものになること請け合いで、しかも我々にも簡単に真似することができる。それは、未来の目標であるビジョンとは違い、ミッションとは、「存在意義」や「使命」であり、決して遠い未来の遠い場所にあるものではないからだ。あなたの目の前の仕事の中に、すでに「今ここ」に存在しているものであるからなのだ。
まずは偉大な3人の経営者の「ミッション」とは何かを見て行こう。
3人に共通するのは「リアルな未来志向からの戦略」を持っていることである。しかもそれは「前例のない世界を築くこと」。これが構想できることがまずもって彼らを偉人たらしめている。
私は経営コンサルタントであり、ビジネススクールの教授でもあるが、経営者の参謀も務め、大手企業にアドバイスを求められることもある。その経験から言えば、「前例のない世界を構想する」ことは、非常に難しい。それは3人の偉人がそうであるようには、筆者にはとても「未来を見てきたように」は語れないからだ。
ソフトバンクで社長室長を務めた嶋聡さんは「週刊現代」での私との対談でこう語っていた。
「携帯事業に参入する前夜、孫さんはまるでタイムマシンに乗って、スマホが普及したいまの世界を見て来たかのように饒舌に語っていた。『こんなことができる』、『あんなことができる』と」
だからこそ孫さんはアップルのスティーブ・ジョブズから開発前のiPhoneの独占契約をもらうために、ボーダフォンまで買収することができた。勝機がスマホにあることを自分の中で信じることができないと、こんなことはまずできないだろう。
とくにサラリーマンは、その行動原理からしてこうした考えを取ることが非常に難しい。上司を説得したり、納得させたりするためにはまず市場のニーズがあるのかどうかを探らないとならないからだ。今後、どんなことが起こるのかと、未来を探ろうとするために、過去の携帯事業の実績やデータを必死で読み込む。これでは3人の偉人のように「前例のない世界」が彼らの頭の中に浮かぶことはない。
ジェフ・ベゾスがファストデリバリの「アマゾン」を描いたとき、もちろんそんな前例などありはしなかった。そもそも、誰もそんなことができると考えていないし、それどころかファストデリバリそのものすら知らないのだから、当然ながらニーズはゼロだった。しかし、ジェフ・ベゾスには自分の頭の中でファストデリバリが構築された世界にニーズが溢れることをリアルにイメージできたのだ。
さらにこの3人にはもう一つの共通点がある。それは「超長期的な思考」である。
ジャック・マーには「105年続く会社」というビジョンがある。孫正義には「300年ビジョン」、ジェフベゾスにはテキサス州の山岳地帯に建設中の「1万年時計」が、彼の超長期的思考を表現している。
彼らは「リアルな未来志向」を目標に掲げ、長期的なビジョンを描く。そして長期的なビジョンから逆算して、そこに至るまでのプロセスを考え抜く。しかも構想したその日から今に至るまで、そのビジョンにむけた布石を打ち続け、これからもそれを続けて行くのである。
それがいま現在の彼らの行動の本質であり、その布石こそが「ミッション」と呼ばれるものなのである。