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「タレが響く」? 誰もがその表現にうなる、詩人による食エッセー

矢内裕子AERA

伊藤比呂美(いとう・ひろみ)/1955年、東京生まれ。詩人。78年に現代詩手帖賞を受賞してデビュー。「女の生」に寄り添い、独自の文学に昇華する姿勢が共感を呼んでいる(撮影/植田真紗美)

伊藤比呂美(いとう・ひろみ)/1955年、東京生まれ。詩人。78年に現代詩手帖賞を受賞してデビュー。「女の生」に寄り添い、独自の文学に昇華する姿勢が共感を呼んでいる(撮影/植田真紗美)

『ウマし』は、卵やポテトチップスから黒トリュフまで、詩人・伊藤比呂美さんが出合った「食べ物」について思いの丈を語ったエッセー集だ。今回は著者に、同著に寄せる思いを聞いた。

*  *  *
〈うなぎの身は柔らかい上にも柔らかかった。雲を食べてるようであった。タレはきりりっと引き締まっていた。潔くてすがすがしかった〉

 詩人・伊藤比呂美が書くと、うなぎの食感は空にまで広がっていく。続きはこんなふう。

〈雲の中には滋養がみっしりとつまり、それでいて引き締まった感じは、まるで日照りがつづいた後の雨雲のようであった。雷鳴のようにタレが響いた。愕然とした。衝撃だった〉

 タレが、響くって! このような調子で、『ウマし』では、伊藤さんが愛してやまないクリームパンや桜餅、黒トリュフのかき卵、スコッチウイスキーをかけた牡蠣、インド料理、などなどが紹介される。

「どういうわけか食べ物に執着しているんです。本にも出てくる料理研究家の枝元なほみさんとは本当に仲が良いんですが、知り合った20代の頃から『なぜ』と思うくらい、食べ物の話しかしてこなかった。と言っても、いわゆるグルメではないし、好き嫌いもものすごく多い。食べ物に対して愛憎があるのは、10代の頃の摂食障害の影響が大きいんでしょう。食べ物について考えざるをえませんでしたから」


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