Hagexさんがなぜ狙われたのか、色々な意見が出ている。
わたしはHagexさんが続けて来られたネットウォッチとその芸風よりも、会場選びと集まりの規模、そしてHagexさんの風貌によるところが大きいと思う。
地元民としてあの会場が惨劇と関連付けて覚えられるのは辛い。
しかし今後同様の集まりを計画している方にとって、少しでも不安を軽減し、危機管理をする上で何かの参考にしていただけたらと思うので書きます。
出入り自由な会場
元小学校だったあの会場は万年文化祭をしているような場所で、起業を夢見る元気で意識高い系の若者と気持ちが若い中高年が仕事なのか遊びなのかわからない服装で四六時中出入りしている。いつ誰が入り込んでも何の用で来たのか誰も気にしないし、TPOに合った服装もないから、その場で浮いている人がいない。Hagexさんはスーツだったが、ラフな格好をしている人も大勢いたし、逆にフォーマルなドレスアップした人が校内を歩いていても「そういう集まりがあるのかな」としか思わない。
安価な会費と簡単な受講手続き
会費は2000円で、ニックネームで受付をしていた。個人情報をその場で確認することもないから、紛れ込むこともさほど難しくない。実際受付で「自分のニックネームがすでに払い込み済になっている」と言っている人がいたが、とくに帳尻合わせはされなかったようだった。
犯行に及んだ加害者が例の人物だとすれば、一般的な社会生活を送るのは難しい暮らしをしているのではないかと思う。そうした人物であっても2000円を払って、駅に近い誰が出入りしても目立たない会場まで日曜日の夕方に出かけるのはそれほど難しくない。「着ていく服がない」ということもない。
印象に残らない参加者
講座はHagexさんの独壇場だったので、質問時間はあったけれど、講座の中で参加者にニックネームで呼び掛けたり、話に参加させるということもなかった。どこの誰がどういう動機で参加していたのかわからないし、会場内で見た顔と服装のほとんどをわたしは覚えていない。
去年渡辺葉さん主催のタウンミーティングに参加した。100人規模の集まりであったにも関わらず、葉さんはそれぞれの顔と名前とだいたいのプロフィールを把握しておられた。そして会が終わった後は互いに紹介しあう時間を設けて、積極的に会話の輪を作っておられた。あのタウンミーティングのあとに何かあったら、誰が何をいっていたか、ある程度思い出せたと思う。
威圧感を感じさせない登壇者
Hagexさんの鋭い論調や芸風が加害者を煽ったのではないかという意見を数多くみた。この説が正しければもっと早く事件に巻き込まれておかしくない人が大勢いる。わたしは単純にHagexさんの見た目が怖くなさそうだったから、反撃されなさそうだったから狙われたのだと思う。
わたしはHagexさんに実際にお会いして「こんなに普通の柔和そうな方だったのか」と驚いた。小柄で、どちらかといえば色白で、全身に文字通りの意味で角がなく、サイズの合っていないグレーのスーツにピンクの開襟シャツでノーネクタイ。声も高めでやわらかい。服装にも態度にも強者男性でございというギラギラしたものがなく、筋肉隆々の大柄な男という風でもない。発言と行動力はすごいけれど、外見からはそれがわからないという点で、エストニアにいる木野さんに似ているかもしれない。
わたしは電車で痴漢に遭ったことがほとんどない。通りすがりに男性から暴言を吐かれるというありがちな被害もない。それは自衛上手だからではなく、単純に体格の問題だ。人は頭で考えるよりずっと、図体が大きいものにはひるみ、小柄な相手には態度が大きくなる。
確かにかなり攻めた発言もあったけれど、登壇者がレスラー並みのバリトンボイスだったら、あるいはそうした人たちに囲まれていたら、加害者は加害行為を諦めて帰ったかもしれない。匿名で増田に呪詛を吐くのが関の山だっただろう。
「怨みを買うようなことをしたら顔を出すな」
わたしは仕事で会場を借りてささやかな講座を開くことがあるので、今回の事件は他人事ではなかった。上記のあれこれは主催者やHagexさんの不備をあげつらうためのものではないことを念押ししておきたい。
「怨みを買ったのは本人の言動のせいだ、自業自得だ」という被害者落ち度論を持ちだすのは加害者擁護にしかならない。確かに「そこまで言わんでも」という話もあったけれど、それで命を奪われても仕方がないという説にはまったく同意できない。
わたしは出来る限り仕事相手には愛想よくしているけれど、それでもびっくりするようなところから吹き上がって大変な呪詛を吐く人がときどきあらわれる。そういう人ははじめのメールからおかしいし、会ったときに挙動がやばいとわかる。
こういう場合、対個人なら対応できるけれど、こうした講座でシャットアウトすることは難しい。Hagexさんが誰でも気軽に参加できる集まりを開いてくださったことには心から感謝する。しかし会場や参加費である程度参加者を選別できない集まりは、やはりリスクが伴うものだと改めて思った。
「病院へいけ」案件
先日Twitterで在日朝鮮人叩きをするネトウヨから執拗に絡まれた在日朝鮮人男性が「現実を見ろ、それができないなら病院へいけ」と発言したことを咎められていた。批判する人達は「『病院へいけ』という発言は精神疾患を持つ人間への差別だ、ヘイト行為は精神疾患と関係ない」といっていた。
確かに精神疾患はヘイトに直結していない。しかし精神疾患は現実の認知をゆがめ、人を異常な行動へ駆り立てることがある。異常な言動を繰り返す人物が精神疾患を抱えていないと断定できる根拠はない。
Hagexさんも今回の講座で「福祉事務所から精神疾患の診断書を取るようにいわれている」と自分から語る人に粘着された話をしていた。「プリントアウトして病院へ」は冗談ではなく惨劇を未然に防ぐチャンスになることがある。
今回の事件の加害者が例の人だとすれば、もっと早く医療上の措置を受けられていたらと思わずにいられない。Hagexさんはただ彼にとって都合のいい条件であらわれたはてな村民のひとりだっただけだ。会場にいた人々が村の誰だか知っていたら、襲う相手を変更した可能性だってある。
いま本当に必要なのは100万PVで知名度を上げる講座ではなく、知名度のあるブロガーや特定の属性を持つアカウントへの激しい粘着行為をやめるにはどうしたらいいのかという講座かもしれない。