サポーターズによるイベントで、Rubyの開発者まつもとさんによる、若手エンジニア向けの生存戦略が開催されました。
参加したので、そのメモを残します。
◯概要
・開催日:2018年6月23日(土)
・講師:まつもとゆきひろさん(Matz、thinkpad使用、1番上のお子様が25歳)
・参加者:300人以上
・目的:若手エンジニアの生存戦略(エンジニアとしての生き方を考える、何かを始めるきっかけにする)
◯まとめ
・鶏口牛後を意識しよう
・我慢に価値はない
・自覚的、自発的に考えよう
・自分を知ろう
・アウトプットをしよう
◯まつもとさんの自己紹介
・Rubyを作った人
・各賞受賞
・日本で一番有名なプログラマ
・政府とも仕事(政府IT総合戦略本部委員)
・松江市名誉市民
◯生存戦略とは
・死なないこと
→IT業界は平均収入がやや高めである
→無茶な働き方をしている方もいる・・・
→常識が壊れてしまうかもしれない・・・
→人によって生存戦略は違う
→これをすれば絶対に正しいという具体的な方法はない
→しかし、成功者から学ぶべきことはある
→成功者の得意なこと(共通して得意なこと)は何だろうか?
→IQが高い、お勉強の成績が高い、ではない
→「パターン認識能力が高い人」が成功しやすいと言われている
◯パターン認識能力
・状況は違いつつも、共通するものは何かを取り出してくる能力(抽象化)
→まつもとさんは「メタ戦略」と読んでいる
→パターン認識≒メタ化(抽象化)
・抽象化の強み
→寿命が長い
→例えば、「アプリ解説書(具体的、短い)」と「アルゴリズム教科書(抽象的、長い)」
→例えば、「アプリ」(短い)→「プログラミング言語」(けっこう長い)→「OS」(かなり長い)
・抽象度が高い程、応用が効き、持続期間が長くなる
→しかし、抽象化は万能ではない
→具体的なアプリを作る必要もある
・抽象化のデメリット
→抽象度上げすぎて、みんながついていけなくなる(アーキテクチャ宇宙飛行士)
→漏れがある(例外が出てくる)
・まつもとさんが我々若手エンジニアのロールモデルになるか?
→まぁ、そのままロールモデルにならないでしょう
→まつもとさんの経験を話しても、都合の良い改変をして語ってしまっている(バタフライ・エフェクト的な)
→まつもとさんの経験をパターン認識(抽象化)してね
◯まつもとさんとプログラミング
・12歳でボードマイコン遭遇(L-kit16)
・15歳でプログラミングを始める(ポケコンBASIC)
→400ステップしかない(400行)、ユーザー定義関数なし、変数1文字のみ
→他にもプログラミング言語があることを知る
→コンピュータがない(当時のコンピュータはいきなりBASICが動く)、
・ローカル変数や再帰に感動
→自身の中の常識が壊れる
→プログラミング言語は誰かが意図目的意志を持って作成されたもの
→自分でも作りたいと思った
◯大学に進学(コンピュータ・サイエンス)
・周りにコンピュータに興味がある人々が多くいた
→しかし、プログラミング言語を作りたいと思っている人はいなかった
→自身がマイノリティであることに気付く
→プログラミング言語研究室に入る
→新しく言語をデザインするのではなく、「コンパイラをいかに効率的に作るか」とかをしている研究室
→卒論で、プログラミング言語を作った
◯就職活動
→東京は嫌(通勤とか含め)
→浜松に就職、職住近接
→同期200人、CS(コンピュータ・サイエンス)専攻6人
→ライバルが少なかった(優遇された)
→社内システム開発(客がわがままを言わない)
→裁量が大きく、「どうあるべきか」を決められる
◯以上のパターン認識編
・鶏口牛後を意識しよう
→小さなところで、先頭に立ったほうが良い
→人間はみんながやっていることに従いたい気持ちがあるが、それは役に立たない
・我慢の価値
→「頑張って」とは?
→英語に訳せない(類語にhang in thereがあるが、これは、「耐えてぶらさがっている」という意味)
→「みんながやっている」は我慢の理由にならない
→目的のある我慢(オリンピック選手におけるスポーツとか)は意味がある
→理不尽に耐える必要はない
→納得できない理由を押し付けられることもある
・プログラマ3大美徳がある
→「怠惰、短気、傲慢」
→反対の意味の「勤勉、気長、謙虚」には「苦労、苦痛、我慢」を内包していることがある
・無意識の価値構造
→一生懸命、我慢して働くことを良いとしてしまっている
→それが無自覚である恐れがある
→労働は我慢ではない
→労働は、本来「価値」を提供するものである
→「我慢」を「価値」としている人が多すぎる
→報酬が苦痛の対価ではなく、報酬は価値の対価である
→「結果よりも過程が大切」、や「生産性より忍耐が大切」となっている
→多くの組織で理不尽の拒否ができない環境になっている
→理不尽は拒否しなければならない
・死の鎖
→仕事に命をかける必要はない
→我慢による苦痛への耐性、鈍感になる
→「致死量」は変わらない
→いつか限界を超える
→「本当にこれで良いのか」を考える
◯ポジティブ思考
・みんながやらないが、やっても良いことがある
→え、そんなことできるの?ってやつ
→裏技的、楽をする、我慢しない
・空気を読まない
・目的を明確にする
・成果を上げる、結果を出している
・どうやって拒否するか
→価値観にアプローチする
→上司は、無自覚に考えている
→社会的圧力を自覚する
→理不尽に声をあげる
→上司とリスペクトできる関係を構築する
→基本は、Win-Winの関係にする(『7つの習慣』)
→あるいは、Win-WinかNoDealにする(永続的な関係のために)
→「そもそも取引をしない」という選択肢を持つ
◯あなたの場合
・メタ戦略を考えよう
①我慢に価値をおかない
②自覚的(ある判断をするときに、どうしてその判断をするのかを考える)、自発的に考える
③自分を知る
→自分にとって、良い判断をするために
→自分がどういう状態で、どういう環境にいて、自分の「得意」なことは何か
④思い込みに自覚的になる
→思い込みは脳内キャッシュではないか
→コンピュータ・サイエンスではキャッシュの無効化、名前付けが難しい
→脳内キャッシュは無効化がない、同じ結果ばかり返ってくる
→昔は理由があったかもしれない
→意識的にキャッシュインバリデーション(無効化)しなければならない
→プログラマーの仕事は問題解決(問題把握、問題分析、ソリューション提案、ソリューション実装、テスト、プロセス改善)
→よくやる失敗は何か
→もっと便利なツールを作りたい!
→同じ原則を人生に適用する
◯まつもとさんの場合
→好き、得意
・「作りたいってどういうこと?」
・継続すること
・Rubyひとすじ25年
・勘、こっちに行けば幸せになれそう
・社会的圧力に対する鈍感さ
◯コントロール意識
・生産性の下げ方
→貶す、叱る(-60%)
・強制されると生産性が低下する
・コントロール意識が生産性を高める
・プログラミングの楽しさは、万能感
・コントール意識がプログラマーの醍醐味
→自分にポジティブに働く
・コンピュータを道具として使う
→コンピュータに奴隷として仕えることにもなりえる
・アルファシンドローム
→誰が主人か
→自分の人生の主人公になろう
◯インプット・アプトプット
・インプットは必要
→でも、差別化要因にはならない
→差別化するためには、アウトプットする必要がある
→羞恥心とかが邪魔をする
→「あんなの誰でもできる」と思いがち
→これは「半分」本当
→しかし、心理的障壁がある、ほとんどの人がやらない、思い込みと同じ心理障壁がある
→アウトプットが本当に大切
・アウトプット
・他人に評価される必要がある
・クオリティは棚上げしておく、とりあえず出せ
・人間の可塑性にかける
→置かれた環境で人間は変わる(変われる)
◯今日は、人間の心理の話をしてきたよ
・プログラマーの仕事も人間の心理を扱うようなもの
・「心理」に興味を持つことは大事
◯質問
・プログラマー35歳定年説
→日本のキャリア構成では必然、マネジメントの方に価値が置かれているから(年功序列とプログラマの価値が低く思われている組織で起こりうる)
・注目している言語
→Elixir、たくさんのコンピュータ
・羞恥心の乗り越え方
→小さい勉強会からはじめてみる
・理不尽を耐えている人にはどう対処するか
→言うしかない
→個人よりも、組織が問題。そういう組織からは逃げたほうが良い
・技術書以外で読んでいる本を教えてください
→ライフハック大全
→巨神計画
→火星の人(オデッセイの原作)
・アメリカ人に当てはまるが、日本人にあてはまらないとは?
→採用の違いにある
・ロールモデルはいますか?
→パールを作ったラリーさん
・データ分析をしているが、流行が終わるかもしれない、どうしたら?
→
・中年エンジニアの生存戦略
→体力と自分の得意分野を見つけ磨きをかける
・情報収集の仕方
→RSSリーダーを使う
・コントロール意識を他の人に持たせるためには?
→上司は何もしない
→非常事態だけ対応する
・もし20代だったら、何にハマっていたと思いますか?
→ゲーム
・今の目標、目的は?
→「継続する」がテーマ
→オープンソース開発者でもやっていけるんだと周囲に示し続けること
◯参考図書
・『career skills』今日の話のこと書いてる部分がある(まだ出版されていない)
同じ著者が
この本を書いているそうです。
・『7つの習慣』
- 作者: スティーブン・R・コヴィー,フランクリン・コヴィー・ジャパン
- 出版社/メーカー: キングベアー出版
- 発売日: 2013/08/30
- メディア: ハードカバー
- この商品を含むブログ (9件) を見る
気になるところがあれば、私が覚えているうちにコメントいただければ。
おわり