地上で最も魔法があふれた国には蚊がいないようだ。
そう、ディズニーランドである。
蚊の多い地帯にもかかわらず、アメリカ、フロリダ州にあるディズニーワールドでは、ゲストに蚊のいない一時を楽しんでもらうために全力を尽くしている。
一体どうやっているのだろうか?
もちろん魔法を使っているわけではない。
スポンサードリンク
蚊の多い、フロリダ州ディズニーワールド
うっとうしい蚊を駆逐できればお手柄だろうが、ディズニーワールドのあるフロリダ州は29%が湿地に覆われた、ことさら蚊が多い地域だ。
蚊はうっとうしいだけでなく危険だ。マラリアやジカウイルスなどの病気を媒介しており、WHOによれば世界では毎年100万人の人が蚊のために亡くなっている。
それが問題となっているのはアフリカや南アメリカの一部が主であるが、最近ではアメリカ国内でも、西ナイルウイルスや脳炎ウイルス、直近ではジカウイルスが懸念されている。
ディズニーは蚊の危険性を訴える映画を作っていた
ディズニーは、1943年、第二次世界大戦中に『The Winged Scourge(羽の生えた災難)』というプロパガンダ映画を作成している。七人の小人たちが殺虫剤を散布し、蚊が媒介するマラリアの危険性を訴えている。
第二次世界大戦では、太平洋で戦っていた数多くの兵士たちがマラリアで命を落としているのだ。
The Winged Scourge (1943)
徹底した「蚊監視プログラム」
本当のことを言えば、ディズニーワールド内にも蚊はいる。
だが園内にいるゲストを守る責任を負っているディズニーは、殺虫剤や蚊の寿命を縮める成長抑制剤の散布、蚊を食べる生物を飼育するなど、一般的な蚊の駆除対策を厳戒態勢レベルで実施しているのだ。
かといって闇雲に殺虫剤をばら撒くようなことはしない。その基礎となり、最大限の効率化を可能にするのが、「蚊監視プログラム(Mosquito Surveillance Program)」だ。
園内の60ヶ所には蚊をおびき寄せる二酸化炭素トラップが仕掛けられている。これは蚊が呼吸に含まれる二酸化炭素に誘われる仕組みを利用し、二酸化炭素で蚊をおびき寄せて捕えるものだ。
そこにかかった蚊は冷凍された後に解析され、種や個体密度、年齢、産んだ卵の数など、ありとあらゆる情報が集められる。そして、これを元に駆除するために最も有効な手段が決定される。
ニワトリを飼育し、蚊に媒介される危険なウイルスを検査
面白いことに、園内ではニワトリも飼育されている。ディズニーはこれを指標鶏(sentinel chiken)と呼んでいるが、園内の各所に設置した囲いの中で飼っている。
そしてその血液を定期的に検査し、蚊に媒介される危険なウイルスなどがいないか調査される。
幸運なことにニワトリは西ナイルウイルスなどに感染したとしても病気を発症することがなく、体内の抗体によって他の蚊にウイルスが伝わるようなこともない。
定期的にニワトリの血液を調べ、そこに抗体が存在すれば、付近に蚊がいるサインだ。あとはそのエリアで速やかに殺虫剤などを撒けばいい。
1日に2度殺虫剤の散布
さらに用心のために園内には1日に2度、蚊が最も活発になる日の出と日没の時間帯に殺虫剤が散布される。
ディズニーワールドの場合、道路、フィールド、運河、防火帯を合わせて138キロもの範囲が対象となる。
もちろん、それで広大な園内の蚊すべてを駆除できるわけではない。またゲストに殺虫剤がかからないように、他と比べると処理レベルが低いエリアもある。
例えば、フォート・ウイルダネス・リゾート&キャンプグランドは、ゲストに自然の中でアウトドアを楽しんでもらうためのエリアであり、あまり処理されない傾向にある。
最悪の事態に備えて最善を尽くす
このように最善の努力が払われているのだが、最善では済まないような場合はどうするのだろうか? ディズニーにとって最大の関心事はゲストの安全だ。それが確保できないような場合は、あらゆる手段が講じられる。
有名な事例としては、1990年と1997年に脳炎が懸念されたときのことが挙げられる。ディズニーはいっそう用心することにして、ゲストに明け方と夕暮れ時は長袖を着て、できるだけ施設内にいるよう注意を呼びかけた。
さらにゴルフコースや水を使うアトラクションを日没前に終了させ、屋外のポリネシアンショーも一時的に屋内での公演に切り替えた。フォート・ウイルダネスでの干し草ライドやキャンプファイアは完全に中止されている。
また最近では2016年にジカ熱騒ぎがあった際、園内で無料の虫除けスプレーが提供された。
こうした努力は魔法などではない。しかしディズニーの魔法を感じられるのは、その徹底した努力のおかげなのだ。
おそらく日本にあるディズニーランドでも蚊に対する対策は取られているだろう。
今度ディズニーランドへ遊びに行くことがあったら、蚊のいないユートピアのありがたさをじっくりと味わってから帰ってこよう。
References:Why Are There No Mosquitoes at Disney World?/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
選ばれし者専用、ディズニーランド、秘密の会員制レストラン「クラブ33」に関する真実
アメリカのディズニーランドにまつわるちょっと面白い35のコネタトリビア
1936年、ミッキーマウスとミニーマウスは結婚していた?
怖すぎて営業中止となったディズニーランドの3つのアトラクション
知ってた?アメリカ、ディズニーランドのキャストに求められる10の規定と規則
今、あなたにオススメ
Recommended by
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「動画」カテゴリの最新記事
「歴史・文化」カテゴリの最新記事
- 岩塩坑で発見された古代イランの塩漬けミイラ「ソルトマン」(※ミイラ出演中)
- アメリカ全土に点在する巨大な矢印。この正体はいったい?
- 教会から呪いをかけられた、スペインの神秘的な魔女の村「トラスモス」
- アメリカで最もミステリアスな「ビール暗号」を解読して、60億円相当のお宝をゲットしよう!
- アメリカ軍に新たに宇宙軍を創設。トランプ大統領が国防省に指示
- 火星の衛星の数、クレジットカードの登場、海難事故など、予言が的中した10冊の本
- 世界で最も謎のベールに包まれた「影のサミット」西側の権力者が世界の行く末を決定する「ビルダーバーグ会議」
- いつの時代も「まだまだ世界は捨てたもんじゃない」心温まる歴史上の8つの出来事。
この記事をシェア : 89 144 10
人気記事
最新週間ランキング
1位 3252 points | トラフザメだって甘えたい。水槽のガラスを掃除していたダイバーにモフを要求し、撫でられて幸せそうなトラフザメ | |
2位 2821 points | 養鶏業者がゴミ処理場に腐っていたはずの大量の卵を捨てたところ、ほとんどが孵化してしまうハプニング(ジョージア) | |
3位 2147 points | 炭水化物で太りやすい体質かどうかわかる簡単なテスト。まずはクラッカーを用意しよう! | |
4位 1725 points | スタンフォード監獄実験は仕組まれていた!?被験者に演技をするよう指導した記録が発見される | |
5位 1540 points | 予期せぬ攻撃から2つの大切なドラゴンボール的なものを守るためのパンツが開発されナウオンセール! |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
徹底してるな、流石だ。
2. 匿名処理班
蚊までも徹底してるのか
さすが夢の国
3. 匿名処理班
ワニは居るけどね
4. 匿名処理班
こういうの本当流石だと思うし、末端までプロ根性の塊になってるからすごいと思うけど
金はちゃんと支払ってやれよな…友人のキャストが夢の国なのはゲストだけだよと嘆いてたよ
5. 匿名処理班
ディズニーシーもあんなに水場があるのに水場で生まれるタイプの虫を見かけないのすごいよねえ
6. 匿名処理班
これもうマラリアとかで苦しんでる国から蚊のコントロールの仕事を受注できるレベルのノウハウ持ってるだろうね
7. 匿名処理班
ポリシーというかプライドというか…本当に尊敬するわ
8. 匿名処理班
東京だとパーク内の池に結構カモ見かけるけどあれも関係あるのかなないのかな
9.
10. 匿名処理班
さすがにディズニー徹底してる
ここまでやるかって感じだ
東京のディズニーも蚊がいない何らかの方法で対処してるんだろう
ディズニーの都市伝説はこうした地道な努力が産み出したものかもね
11. 匿名処理班
日本は塩素処理されてる水だよね
プールの匂いがしてて、水場に行ったら納得した
12. 匿名処理班
138キロと長さで記載されていますが、範囲でいう場合は、平方キロメートルで言うのが良いのではないかと
アメリカはSI単位のメートル法を使っていないから翻訳しにくいのではないかと思いますが
13. 匿名処理班
シンガポールのナイトサファリでも蚊がいなかったから同じ事してるのかも。
14. 匿名処理班
確かにワールドで結構外を練り歩いてたけど蚊には刺されなかった記憶
一方サマーキャンプでは蚊に刺されて救急車で運ばれた人がいたな
15.
16. 匿名処理班
※5
あれはほとんど浜だから、
風が吹いているせいで蚊が湧きにくいって聞いたよ。
成虫になったところで、浜風で海に流されてしまう。
17. 匿名処理班
蚊は夢の一部
18. 匿名処理班
東京のディズニーは水場に濾過装置が付いてると聞きました
19. 匿名処理班
天然植物が無い
池の水が酸性
20. 匿名処理班
蚊に刺されるくらいも思い出のひとつと思ったけど、蚊って怖いんだね。そこが勉強になった。
21. 匿名処理班
いろんなことしてるんだな
そら金がかかるわけだ
22. 匿名処理班
日本でも蚊は快適性の敵だけど
向こうはリスクが桁違いなんだな
勉強になった
23. 匿名処理班
行くことあったらニワトリ探してみよっと
24. 匿名処理班
ディズニーの安い小物一つ買っても
ちょっとしたパーツに気の利いた細工が施してあったり
本当に愛とお金がかかってるなぁと思わされる。
まさか蚊の対策まで考えてたなんて…