まさか起きると思っておらず、油断している時に限って起こりがちという意味では、天災だけでなく、他の災難も同じと言えるかも知れません。自転車の盗難という災難もそうです。まさか自分の自転車が盗まれるとは思っていなかった私の知り合いが昨年、自転車を盗まれました。
先日、この知人の話を聞く機会があったのですが、私も油断を戒めたり、盗難防止について改めて考える機会になりました。自転車の盗難については、これまでに何度も取り上げましたが、話を聞いた中から、注意すべきと思われる点について整理してみたいと思います。
日本での自転車盗の発生は、かなりの件数に上ります。警視庁のサイトによれば、東京都内だけでも年間6万件程度の自転車盗が発生しています。1日に換算すると160件余りです。ただし、このうちの6割は無施錠であり、大多数はママチャリの盗難だと思われます。
しかし、換金することを狙った高額のスポーツバイクの盗難も起きており、いつ自分の身に起きてもおかしくありません。ふだん盗難防止には気をつけている人が多いと思いますが、スポーツバイクの盗難の場合、実際に被害に遭う人は一部であり、盗まれたことがないからと油断している人もあるのではないでしょうか。
この知人も、それなりに高額なロードバイクに乗っていたこともあり、盗難には気をつけていました。都合で自転車でよく行く場所があって、そこではとめる駐輪場が決まっていたのですが、ある程度の頻度で利用するので、目をつけられる可能性を意識して、U字ロックなどを複数使って厳重に施錠していたと言います。
プロの窃盗団なのか、知識と技術があって強力な工具を用意した個人の常習犯なのかはともかく、高額なスポーツバイクを狙うような窃盗犯が、手当たりしだいに何でも盗むとは思えません。対象となる自転車を物色し、狙いを定めて盗むはずです。よく使う駐輪場にとめる場合は目をつけられる可能性が高くなります。
あまり外から物色されないような駐輪場にとめる、犯行に及ぶ際に人目につきやすい場所にとめる、防犯カメラが監視している場所にとめる、管理人がいる場所を選ぶなど、考えて駐輪するのも重要な要素でしょう。まず、狙われる可能性を少しでも低くするという考え方です。
厳重に施錠することも、一定の抑止効果を持つと思います。どんなに頑丈なロックであったとしてもプロなら破ってしまうと言われますが、盗む手間をかけさせれば、犯行を断念したり、ターゲットから外す可能性が高くなり、相対的には盗まれにくくなることが期待できます。
携行するには重くなりますが、なるべく頑丈なもの、施錠が面倒ですが複数のロックを使うのも有効でしょう。技術と道具を持つ窃盗犯ならば、盗んで盗めないことはないにしても、わざわざ面倒なもの、時間がかかるもの、通報されるリスクの高いものを選ぶより、盗みやすいものを狙うと思われます。
ママチャリではないのですから、タイヤとフレームを結ぶだけでいいと思っている人はいないと思います。当たり前のことですが、何か固定物を使って施錠する必要があります。その際、その固定物が壊れやすかったり、抜けてしまったりなどしないか、信頼性を確認するのも忘れてはなりません。
犯人は、U字錠やワイヤー錠を切断する際、空気圧や油圧などを使った強力なカッターやジャッキなどの工具を使うと推測されます。工具の片側を地面に押し当てたりするので、なるべく地面から高い位置に施錠し、U字錠とフレーム、固定物との隙間が少ないほうが切断しにくく、盗まれにくくなるという話もあります。
ちなみに、勤務先などにとめる場合、理想的には室内保管でしょう。それが無理なら、保管庫やロッカーなど、車体が隠せる保管方法がベターだと思います。盗まれるリスクを考えて、通勤用は比較的価格の安いクロスバイクにするなど使い分ける人もいます。
個人の住宅の軒先から盗まれるケースもあると言います。別の人に聞いた話ですが、不用品、不要オートバイなどの回収を装って住宅街を物色し、引き取ったフリをして持っていってしまうそうです。回収業者を装えば、集合住宅の駐輪場にいても怪しまれないのでしょう。
知人はキャリアも長く、こうしたことをよく理解し、いろいろと実践していました。でも、いつもそのような対策のとれる駐輪場を選んでとめられるわけではありません。例えばツーリングに出かけて、どこかで昼食をとるような場合、必ずしも理想的な場所にとめられるとは限りません。
どこか店に入って昼食をとるような場合、出来れば目の届く範囲にとめたいですが、いつもそう出来るわけではないでしょう。固定するためのうまい構築物が見つからないような場合もあります。出来る範囲で盗難のリスクを減らすことになると思います。
ただ、いつも駐輪する街中の駐輪場などと違って、窃盗犯に狙われる可能性は低いと考えられます。たまたま通りがかった場所に無作為にとめるわけですし、とめる時間も短い時間、昼食をとる間くらいでしょう。窃盗犯の狙うような場所でない場合が多く、それほど盗難の可能性は高くないと思います。
知人も、ツーリング時など、基本的に自転車から離れないような場合には、携帯に向く細めのワイヤー錠しか持っていかないことが多かったと言います。それで、長いこと盗難に遭うようなことはありませんでした。そのことで、油断と言えば油断と言えるような要素があったのかも知れません。
今回、盗難にあってしまったのは、郊外の大型ショッピングセンターでした。ツーリングの途中、たまたまショッピングセンターが見えたので、食事の出来る施設も多いだろうと立ち寄りました。大きな駐車場の片隅にワイヤー錠で施錠し、食事をとっている、わずかな間に盗まれてしまいました。
一応、ワイヤー錠で固定物に施錠したあったので、通りがかった人が出来心でとか、足代わりにちょっと拝借といった犯行は考えらず、プロか熟練した窃盗犯の犯行と思われます。もちろん警察に届けましたが、未だに犯人の検挙や盗難された愛車の発見には至っていないそうです。
ショッピングセンターの駐輪場は、よくあるスタンドの付いたママチャリ用のもので、区画だけがあって、固定するための構築物が何もありませんでした。そこで、仕方なく駐車場の中を走り、固定できそうな場所を見つけ、駐車場の隅に駐輪したわけです。
大きなショッピングセンターですから、駐車場の隅とは言え、昼間ですし、クルマに戻る人など、それなりに人目があったそうです。おそらく、周囲に怪しまれる間もない瞬時の犯行だったのでしょう。やはりプロには携帯向きのワイヤー錠など、ものの数にも入らないことがよくわかります。
それでも、昼食の間のわずかな時間の間に犯行が行われたのは、不思議と言えば不思議です。初めてとめた場所であり、犯人があらかじめ目をつけていたはずはありません。ほとんどが地元の人のママチャリで占められるような場所ですから、まさか待ち伏せしていたとも思えません。
知人が考えるに、たまたま駐車場に入るのを見た窃盗犯に後をつけられたか、駐輪場所を探してウロウロしていいたので、偶然駐車場内に駐車していた窃盗犯から目をつけられたのかも知れないと言っています。真相は不明ですが、不幸な偶然があった可能性は否定できません。
ツーリングの途中で、目につきやすい、自転車が集まる大型ショッピングセンターにとめてしまったのが失敗と言えば失敗だったのかも知れません。いろいろパターンを考えて対応していたのが裏目に出て、細めのワイヤー錠で盗みやすかったのが敗因と言えないこともありません。
長年、盗難に遭わなかったことから油断があったと言えば、そうかも知れないと言っていました。それまで盗難に遭わなかったのが、いろいろな防止策のおかげだったのか、単に偶然で運がよかっただけだったのかわからなくなったとも言っていました。
盗難防止のため、どれほど手間をかけるのか、費用をかけるのか、その兼ね合い、考え方は人それぞれだと思います。強力な工具にかかれば、どんなロックも意味がないかも知れませんが、一方で、他に容易な対象があるのに、わざわざ手間のかかる、時間のかかる、よりリスクの高いものを盗もうとは思わないのも道理です。
盗難対策も、全くの無駄ではないはずです。やはり、ちょっとした油断があった時に盗難に遭うように思えます。せっかくの盗難対策も少しの油断で台無し、ふだんの努力も水の泡です。あらためて自分の普段の行動に隙はないか、油断はないか、チェックのきっかけにしていただければと思います。
本当に偶発的な軍事衝突が起こりかねないレーサー照射、領空侵犯に核実験と、相変わらず周辺国の動向が気になります。
私は昨日自転車に括りつけていたズボンの裾留めを盗られた。1ヶ月前はグローブを盗られた。その時は大変。寒くて指がちぎれそうでした。2年前にはサドルバックがヤラレ工具やチューブを盗られ、今この記事を読み、気をつけなけりゃと思います。盗っ人は背後にいると思い油断しない。残念ですが。
盗みの目的がある。それは換金だけではない。ズボンの裾留めならば、同じ自転車乗り、忘れた、なくした、くたびれてきた、グローブならば寒いから、そこらに在るものを拾う感覚で持っていく。「盗む」という概念がないカラスみたいな輩がいる。