日本国内でも、ほかに透明にするべきこと、報道するべきことがあるのではないかという意見は多い。先述の高度プロフェッショナル制度など、働く人間にとって考えなければならない問題は山積みだが、国会ではろくに審議もされないまま強行採決されているのが現状だ。そういったなか、今回の中抜けが大々的に会見を開いてまで謝る内容だとはとても思えない。

 また、一部には「公務員であるから」という理由で謝罪会見を擁護する意見もあるが、そこに対しても海外からの視線は冷たい。

「公務員だろうが、なんだろうが、労働者であることには変わらないでしょ。一般企業でも何か不正をしたら、謝罪して罰を受けるべきだし、今回の件については誰がどう見たっておかしいよ。だいたい、それぞれ仕事のはかどり具合も違うのに、みんな同じ時間に食事をとるっていう仕組みもムダだと思う。なんでわざわざ謝罪会見を開いたのかも謎だし、いろいろ要領の悪い国なんだなって感じるね」(ポーランド人・男性・28歳)

 厳しいバッシングを受けなければ謝罪できない、問題を指摘されても知らぬ存ぜぬで押し通す……。そんなケースと比べれば、今回の会見は誠実だったかもしれない。

 それだけに、この些細な出来事がキッカケで、日本社会全体が抱える問題に世界が注目するようになったことは皮肉としか言いようがない。

<取材・文/林泰人>