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【村上春樹】『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の真実に君はたどり着けたか!【ネタバレなしレビュー】

2013年4月12日に発売された『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。

今から約5年前に発売されたこの本、当時は村上春樹が久しぶりに出版する長編小説ということで連日ニュースに取り上げられかなり話題になりました。当時たまたま取った有給の日が発売日だったので、売り切れも多かったですが運よく3件目の書店で買うことができました。もう読んだことのある人も多いのではないかと思います。 

 

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

 

 

なぜ私が今になってこの小説を取り上げているのかというと、それはこの小説を再読してみて今更ながら衝撃を受けたからです。ふと、書棚から手にとって懐かしくなり読んでみることにしました。5年前に読んだ感想は「村上春樹にしては嫌に読みやすい本だな。でも面白い」そのくらいでした。確かに面白いです。だけど特別に面白いかといわれるとそうでもなかったような。そんな印象でした。

 

だけど今回は違いました。全然違いました。危なかった。本当に。この事実を知らないで私は5年間ものうのうと生きていたのかとさえ思いました。それほどまでに衝撃を受けました。村上春樹は天才だと思いました。それでは今回もネタバレをせずにレビューしていきます。

 

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あらすじ

 

多崎つくる(36)は高校時代、4人の友人といつも行動を共にしていた。5人は名古屋市の郊外にある公立高校で同じクラスに属していた。多崎は大学を卒業後、東京の鉄道会社に就職し駅舎を設計管理している。ある時知り合った大手旅行代理店の木元沙羅(38)と交際関係になり、高校時代に仲の良かった4人の友人ことを話す。大学2年生のときに突如、絶交を言い渡されたことも。

沙羅は、なぜ4人から絶交されたのか「そろそろ理由を聞いてもいいんじゃないか」と言う。4人の友人の名はそれぞれ色のついた苗字を持つ。
アカ―赤松慶(あかまつ・けい)
アオ―青海悦夫(おうみ・よしお)
シロ―白根柚木(しらね・ゆずき)
クロ―黒埜恵理(くろの・えり)
 
つくるは沙羅の言うとおり4人に会いに行く。
 
 

ネタバレなしレビュー

 

「大学二年生の七月から、翌年の一月にかけて、多崎つくるはほとんど死ぬことだけを考えて生きていた」

この一文から物語は始まります。あらすじの通り、多崎つくるは大学二年のときに心から信頼を寄せていた4人の友人から「二度と会わないこと」を突然言い渡されてしまいます。進学で一人だけ東京に上京していた多崎は、帰省した時4人の友人に会うことを非常に楽しみにしていましたし、安らぎでもありました。それがある日の帰省時にいきなり理由もなく拒否され、二度と連絡をしてこないように通告されます。

 

物語は彼が38歳の現在まで進み、交際相手の2歳年上の木元沙羅の助言により4人の友人に会いに行き、当時自分が突然拒否された真相を探っていく。そんな物語です。

 

まずは普通に読んでみてほしい

 

まずはあまり深く考えずに読んでみてください。村上春樹を読んだことがある人は違和感を感じるほどに、すらすらと読めます。非常に読みやすいです。この読みやすさがベストセラーとなった理由の一つかもしれませんが。

 

普通に読んだ後、あなたは思うはずです。なるほど、面白かったなと。うんうん、確かにこれは読みやすくて、万人受けしそうだ。人にも勧めてみよう、と。確かに普通に読んでみて面白いです。私も5年前に読んだ時はそう思いました。そしてそれで終わりました。「面白かったな」で終わりました。

 

5年後の今、読み直してみて、やはり思いました。うんうん、面白かったなと。まったく同じです。感想は5年前とまったく同じ。じゃぁなぜ私がこのようにブログで紹介するほどに衝撃を受けたのかというと、ある一つのネタバレのサイトを見たことが原因です。

 

ふと、他の人がどんな感想を抱いたか気になって、本のタイトルとネタバレで検索してみました。すると興味深い一つのサイトが目に飛び込んできました。そしてそのサイトに書いてある「一つの仮定」を見て、心から衝撃を受けました。「まさか...嘘だろ...」と。この仮定を見ることで、物語は全く別物に変わります。

 

そのサイトはもの凄く詳細に『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』について推察しています。本を読んでいて、時折よく理解するのが難しい場面が出てきます。普通に読み進めれば特に気にする必要もなく続きを読んでいけるのですが、その細かい場面も一つ一つ意味があって、それをサイトが説明してくれています。

 

読み終わった後、このサイトを読んで欲しい

 

私は貪るようにこのサイトを読みました。次々と衝撃を受けていきます。そうか、あの時のあの人の発言はそういう意味があったのかと。あの描写はここに繋がっていたのかと。全てが腑に落ちていきます。

 

5年前、私は発売日当日に本を買ってその日のうちに読んでしまったのでこのようなネタバレサイトが出来る前だったのです。特に気にすることもありませんでした。

 

村上春樹はこの本の作者の意図を公開していません。だからあくまでこのサイトに書いてあることも推察に過ぎないのですが、あまりに理論的に書かれているのでその通りなのかとも思います。信じるに足る見事なまでの推察っぷりです。

 

物語の終盤、多崎つくるが木元沙羅に一つの質問をし、その答えを聞こうとする場面で物語は終わります。普通に読んでいれば、その答えが「どうなるんだろうな」程度の感想で終わるのですが、このネタバレサイトを見た後に読むと、その先に待っている多崎の運命に、心が張り裂けんばかりの感想を抱きます。

 

そのネタバレサイトがこちらです。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。① - 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である。(感想・考察・謎解き) (ネタバレあり)

 

くれぐれも、まだ読んだことのない人は、このサイトを読む前に一度普通に読んでみてください。もし読んだことのある人は、最近読んだばかりで記憶が鮮明ならいいですが、忘れている人は是非もう一度だけ読んでみてから、このサイトを見てみてください。記憶が鮮明のうちの方が、衝撃の度合いが違います。

 

最後に

 

春樹は読者にそこまで読み取られうることを思って書いたのでしょうか。本当の真相は書いた本人に聞いてみないことにはわかりませんが、もしそうだとしたら、凄すぎるの一言です。ノーベル賞を取ってふさわしい人だと思います。

 

読んだことのない人は図書館で借りるか、お近くの書店もしくはアマゾンで買ってみてください。ネタバレサイトを見た後に、私と感想を語り合ってほしいです。

 

 kindle版

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

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 通常版

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

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