やたナビTEXTは基本的にCC BYーSAライセンスで公開している。CCとはクリエイティブ・コモンズのことで、BYーSAは、著作権者を明記することと、すべて同じライセンスで公開することを条件に、複製・配布・改変が自由にできるという意味である。

逆に言えば、それが著作権で保護される著作物でなければ、CCライセンスを付与することはできない。やたナビTEXTの場合、翻刻以外の校訂本文及び全体のページには著作権が発生すると考えて、〈基本的に〉CC BYーSAライセンスとしている。

前置きが長くなったが、東京大学附属図書館の画像データ利用条件のページを読んで、面白いことに気づいた。

利用条件:画像データ等の利用について:東京大学附属図書館
東京大学総合図書館が公開する、著作権の保護対象ではない総合図書館所蔵資料の画像データ、それに関連するメタデータ等(以下「画像データ等」といいます。)の利用条件は、以下のとおりです。
はて、面妖な。著作権の保護対象ではないデータに条件をかけるとは。

どういうわけだろうと思って、その条件を見ると・・・。
利用条件
配布が入っていないのが気になるが、条件はないも同然。著作権の保護対象ではないのだから、本来書く必要すらないのだが、もし書くとするならこんな感じだろう。

さらに読み進めていくと・・・。
※この利用条件は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの「CC BY」(クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際ライセンス)相当の条件です。
一瞬、「え?CCライセンス?著作権の保護対象じゃないのにダメじゃん」と思っただが、よく見ると「相当」と書いてある。

これはうまい。「CCライセンス」ではなく、あくまで「CCライセンスのようなもの」になっているのだ。たしかに、どこにもクリエイティブ・コモンズのマークがない。これでは文句はいえない。

こういうデータベースでは、資料を利用した場合、その成果を提出するように求められる場合が多い。法律的には、所蔵者にそんなものを求める権利はないのだが、どういうわけかさも強制力があるように書かれることが多い。しかし、東大図書館の場合は、これもよくできている。
成果物提供のお願い
・この画像データ等を利用して、図書や論文、資料などを作成された場合は、是非それを当館にご提供ください。
・ご提供いただいた資料は、当館所蔵資料として利用に供する場合がありますので、予めご了承ください。
・提供が難しい場合は、利用実績を電子メールでご報告いただくだけでも結構です。
うまいと思ったのは、太字にした「是非それを」である。これがないと、ありもしない権利を主張していることになる。

わずか五文字を付け加えることで、ありもしない権利の主張から、「提出しなくてもいいけど、できたらしてほしいなー」という、穏便なお願いに変えてしまったのである。さすがは東京大学の図書館というほかない。