怒りを通り越して、心底悲しい。
現在国会で審議されている受動喫煙防止策などを盛り込んだ「健康増進法」改正案に関して、衆議院厚生労働委員会において参考人の意見陳述が行われた。
参考人の1人として、「日本肺がん患者連絡会」理事長、長谷川一男氏が発言していたさなか、自民党の穴見陽一議員が「いい加減にしろ」などとの暴言を複数回にわたって浴びせたというのだ。
長谷川氏は、自らもステージ4の肺がん患者であり、すぐれない体調をおしての出席だったという。発言では、喫煙者の立場も十分に配慮しながら、肺がん患者の立場から「受動喫煙をなくしてほしい」という思いを訴えた。
この発言の一体どこに暴言を浴びせるような問題があるのだろう。
この事態を受けて、「全国がん患者団体連合会」は声明を発表し、そのなかでは「参考人として国会から招かれ、体調が必ずしも良くない中をおして出席し、がん患者や家族の声を国政の場へ届けようとした肺がん患者である参考人の心情を無視したものであり、議員の発言は参考人のみならず、がん患者の尊厳を否定するものとなりかねません」と述べられている。まったくそのとおりである。
穴見議員の態度は、参考人に対して、まったく敬意の欠片もない非人間的な態度であると言わざるを得ない。
さらに言えば、言論の府である国会で、たとえ自らとは意見が異なったとしても、国民の意見に対して、国民に選ばれた議員が暴言を浴びせるとは言語道断であり、国民全体に対する信用失墜行為でもある。
この暴言が報道され、大きな反発が広がったことを受け、議員本人が自らのウェブサイトとフェイスブック上で、「お詫び」と題する文面を発表した。
たった9行のその「お詫び」は、議員の秘書か誰かがどこかからテンプレートを持ってきて、片手間で書いたとしか思えないようなまったく心のこもっていない内容だった。
そこには、周りがうるさいからとりあえず詫びておこうという本心が透けて見える。
まず冒頭で、「私が『いい加減にしろ』といったヤジを飛ばしたという報道がありました」と記載し、暴言を浴びせたという「事実」ではなく、「報道」があったことに対する「お詫び」だとしている。
そもそも事実を潔く認めることを回避し、曖昧にするような態度であり、これで一体何の反省や謝罪ができるというのだろうか。
そして、議員が謝罪する際の毎度の決まり文句であるが、「不快な思いを与えたとすれば、心からの反省と共に深くお詫び申し上げる」と続く。
不快な思いをしたに決まっているではないか。