サインコサインタンジェント。わかりません。呪文ですか。動く点P、動かないでほしい。水溶液の濃度、計算したくない。こんな風に思いながら過ごしてきました。
珠算検定を持っているので単純な数字の計算は得意なんですが、公式を使った計算や割合を求めるような問題が死ぬほど苦手で、高校生の時に数学のテストで一桁点数を叩き出した時、僕は完全に数学から逃れることを決意しました。
「文系・理系」などという有難いやら分類の仕方が意味不明な制度により都合良く文系の道に進み、国語、英語、社会学を専攻することで何とか大学に受かり、無事に就職までたどり着いたのですが、その後の職業選択により、笑っちゃうんですが数学の壁にことごとくぶち当たることになりました。
僕は大学を卒業後、専門卒でもなければプログラミングの経験もないまま、無謀にもソフトウェアを受託開発する零細企業に就職しました。理由は、「何か自分でサービスを作ってみたい」という漠然とした動機と、IT業界が文系理系問わず人材を募集していたことでした。今だからわかることですが、プログラムを書くという行為は「プログラミング言語への理解力、国語力、論理性、情報の取捨選択と分類能力」を非常に問われ、あるレベルを超えてくると文系とか理系だとか、そういったことは関係のない世界なのです。
プログラミングは基本的にコードを上から順に読み上げる逐次実行、条件分岐(IF)、繰り返し実行の3パターンになり、あとは顧客の要求をどのようなデータ構造を使って満たすのか、どのタイミングでどういった処理をするのかといった要件を整理していくような仕事です。また複雑な計算や処理は誰かが作ったフレームワークを使うこともでき、「便利な世界だなあ」と思っていたのですが、仕事をしていくうちに結局数学の知識の欠如にぶち当たりました。
僕はとある店舗の来店顧客管理システムを作っていたのですが、客の待ち時間の集計をするプログラムを書く時に、いわゆる論理和と論理積と否定についての処理を書かなければいけなかったのですが、なにせ「数学を捨ててやったぜ」と思っていた若造であったのでコーディングに時間がかかってしまい、当時一緒に働いていた社長に「お前ド・モルガンの法則もしっかり理解できてないのかよ、大学出てるくせにバカだな」と言われ、非常に恥ずかしい思いをしました。なので、仕事をしながらこうした数学の勉強を平行して覚えないといけなくなり、非常に苦労しました。
ド・モルガンの法則について指摘されたことが一番印象深かったのですが、それ以外にも細々とこうした「数学を知らないことで起きる弊害」が少なからずあり、我ながら生き恥を晒しているような気分で仕事をしていました。
また現在は転職して3Dスキャナーや3Dプリンターを販売する仕事をしているんですが、3Dスキャナーを使った測定業務が増えてきたことで、営業職になったにも関わらずまた数学に翻弄される日々が始まりました。例えば「現地点から45度に10mの距離にある測定物が50度に移動した時に距離は何m変わるのか」みたいなことを計算する必要が出てきました。またですよ。「お前大学出てるのに三角関数も理解していないのかよ」と言われる日常がやってきました。なので僕は今測量士補という資格の勉強をしており、三角関数の基本から勉強をしています。
今は「必要だからやるしかない」という理由でしっかり勉強ができているんですが、学生の頃からこうした基本的な数学の知識があれば、もう少し恥ずかしい思いをせずにいきてこれたかもしれないです。また最初からもっと違う仕事についていたかもしれません。
「先生、数学をしっかり勉強しないとどうなるというのですか」「お前が数学を使わない仕事に就くだけさ」みたいな会話をどこかで耳にしたのですが、僕のように変なキャリアを積んでいくとあらゆるところで見て見ぬ振りをしてきたツケに追い回されます。
学校の勉強、本当に大事だったし、もっとやっておけばよかった。
でも、こうした仕事をすることで、勉強をする機会が得られてよかったと思うべきなのかも...。