【6月23日 AFP】グエン・チュオン・チン(Nguyen Truong Chinh)さんは、精巧に作られた動物、花、ハートをかたどった工芸品を誇らしげにかかげている。プラスチック袋から作られた、ベトナムの死刑囚監房にいる息子からの秘密の贈り物だ。

 贈り物は、不当に有罪判決を受けたと主張する子どもたちを自由にするため、必死で闘っている親たちの心の支えでもある。

 息子のグエン・バン・チュオン(Nguyen Van Chuong)死刑囚(35)は、10年前に警察官を殺害した罪で有罪判決を受けた。公式には死刑囚監房での手工芸品制作は禁じられているが、チュオンさんはこのような作品を作る数少ない囚人の一人だ。

 家族たちは死刑囚たちが、他の囚人が捨てようとしていたプラスチック袋を譲ってもらい、引き裂いて、編んで、小さな置物を作っていると推測している。

 作品は刑期を終えた受刑者がこっそりと持ち出していた。だが、親族は数年前から作品を受け取っていない。刑務所内で手工芸品の制作が禁止されているため、チンさんや他の死刑囚の親たちは、看守が取り締まりを厳しくしたのではと懸念している。

 息子は有罪判決を受けた事件の現場に近づいたこともないと主張し、10年にわたって息子の釈放を訴えてきたチンさんは、これらの作品は今でも自分の活動の原動力となっていると言う。

 事件の関係書類が詰まったバッグを抱えて座ったチンさんは「この動物たちを見ていると、息子はまだこのようなものを作れるぐらい安定していて、精神的にも強いのだと分かる」と話した。「これらは、正義を求める私たちの闘いのモチベーションになる」