沖縄は6月23日、「慰霊の日」を迎えた。
73年前、日米両国で20万人以上が犠牲となり、県民の4分の1が命を落としたとされる沖縄戦の組織的戦闘が終結したこの日、糸満市摩文仁の平和祈念公園では戦没者の追悼式が営まれた。
式では、浦添市立港川中学3年の相良倫子さん(14)が、平和の詩を朗読した。
生まれ育った島の美しさ、忘れることのない戦禍の悲しみ、平和への誓い。真剣な眼差しで会場を見渡し、力強い口調でこう訴えた。
「あなたも感じるだろう。この島の美しさを。あなたも知っているだろう。この島の悲しみを」
「私は手を強く握り、誓う。奪われた命に思いを馳せて。心から誓う。私が生きている限り、こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを」
「もう二度と過去を、未来にしないことを」
激しい地上戦を生き抜いた曽祖母の体験から「平和とは当たり前に生き、命を精一杯輝かせて生きること」と考え、紡いだという詩には「生きる」と名付けた。
相良さんの姿にTwitterでは「圧倒されて鳥肌がたった」「本当の平和とは何かを自分の言葉で訴えてくれた」「誇り高くて、頼もしくて、平和への決意に溢れていて。こんな素晴らしい若者がいることに嬉しくなった」などの反響があった。
全文は以下の通り。
私は、生きている。
マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、心地よい湿気を孕んだ風を全身に受け、草の匂いを鼻腔に感じ、遠くから聞こえてくる潮騒に耳を傾けて。
私は今、生きている。
私の生きるこの島は、何と美しい島だろう。
青く輝く海、岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、ヤギの嘶き、小川のせせらぎ、畑に続く小道、萌え出づる山の緑、優しい三線の響き、照りつける太陽の光。
私はなんと美しい島に、生まれ育ったのだろう。
ありったけの私の感覚器で、感受性で、島を感じる。心がじわりと熱くなる。
私はこの瞬間を、生きている。
この瞬間の素晴らしさが、この瞬間の愛おしさが、今という安らぎとなり、私の中に広がりゆく。
たまらなくこみ上げるこの気持ちを、どう表現しよう。
大切な今よ、かけがえのない今よ、私の生きるこの、今よ。
73年前、私の愛する島が死の島と化したあの日。小鳥のさえずりは恐怖の悲鳴と変わった。
優しく響く三線は、爆撃の轟に消えた。
青く広がる大空は鉄の雨に見えなくなった。
草の匂いは死臭で濁り、光り輝いていた海の水面は、戦艦で埋め尽くされた。
火炎放射器から噴き出す炎、幼子の泣き声、燃え尽くされた民家、火薬の匂い。
着弾に揺れる大地。血に染まった海。魑魅魍魎のごとく、姿を変えた人々。阿鼻叫喚の壮絶な戦の記憶。
みんな生きていたのだ。
私と何も変わらない、懸命に生きる命だったのだ。彼らの人生を、それぞれの未来を。疑うことなく思い描いていたんだ。
家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。仕事があった。生きがいがあった。
日々の小さな幸せを喜んだ。手を取り合って生きてきた、私と同じ、人間だった。
それなのに。壊されて、奪われた。
生きた時代が違う。ただ、それだけで。無辜の命を。当たり前に生きていた、あの日々を。
摩文仁の丘。眼下に広がる穏やかな海。
悲しくて、忘れることのできない、この島のすべて。
私は手を強く握り、誓う。奪われた命に思いを馳せて。心から誓う。
私が生きている限り、こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを。
もう二度と過去を未来にしないことを。
全ての人間が、国境を越え、人種を超え、宗教を超え、あらゆる利害を超えて、平和である世界を目指すことを。
生きること、命を大切にできることを、誰からも侵されない世界を創ることを。
平和を創造する努力を、厭わないことを。
あなたも感じるだろう。この島の美しさを。
あなたも知っているだろう。この島の悲しみを。
そして、あなたも、私と同じこの瞬間を一緒に生きているのだ。
今を一緒に、生きているのだ。
だから、きっと分かるはずなんだ。戦争の無意味さを。本当の平和を。
戦力という愚かな力を持つことで得られる平和など、本当はないことを。
平和とは当たり前に生きること。その命を精一杯輝かせて生きることだということを。
私は、今を生きている。みんなと一緒に。
そして、これからも生きていく。一日一日を大切に。平和を想って。平和を祈って。
なぜなら、未来は、この瞬間の延長線上にあるからだ。
つまり、未来は、今なんだ。
大好きな、私の島。誇り高き、みんなの島。そして、この島に生きる、全ての命。私とともに今を生きる私の友、私の家族。
これからも、共に生きてゆこう。
この青に囲まれた美しい故郷から。真の平和を発信しよう。
一人一人が立ち上がってみんなで未来を歩んでいこう。
摩文仁の丘の風に吹かれ、私の命が鳴っている。
過去と現在。未来の共鳴。
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
命よ響け。生きゆく未来に。
私は今を、生きていく。
BuzzFeed Newsでは、人工知能を使った自動色付け技術でカラー化した写真から沖縄戦を振り返る記事【あの時、島は戦火にのまれた。米兵が見た「沖縄戦」カラーで振り返る】も配信しています。
Saori Ibukiに連絡する メールアドレス:saori.ibuki@buzzfeed.com.
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