(さて。聖王国の件も片付いたし、久々にアイテムの整理でもしようかな)
アインズはようやく帰り着いたナザリックの自室で寛いでいた。八肢刀の暗殺蟲も室外に出し、寝室のベッドの上でごろごろして一息つくと、徐にアイテムボックスに手を入れる。中を確認すると、そこにはザックリとした区分にしか分類されないまま放置されていたアイテムがドッサリと入っていた。
(……ガチャのハズレアイテムでも、何か勿体なくって売れなかったんだよなぁ)
完全なる狂騒のような、ある意味とんでもないアイテムは流石にもう持っていないと思いたかったが……何せ、所持アイテム数が半端ない。かつては廃課金プレイヤーだったのだから、それは仕方の無い事ではあったのだが。
「とりあえず、出してみるか」
ベッドの上に、次々と並べてゆく。木彫りの像もまだ何点かあったが、多分もう使うことはないだろう。
「うーん。エクスチェンジボックスに入れたら、査定されるかな?」
アインズはサクサクと査定用と使う用にアイテムを振り分けてゆく。大抵のアイテムは、何となく使用方法がわかったので、いちいち鑑定する必要もなかったからだ。……が。いくらアインズでも、全てのアイテムを覚えているわけではない。
「……。何だっけ、これ」
楕円のルース。光沢のあるミルクホワイトに、七色の輝きがある。
「えーと、宝石……かな。いや、普通の宝石ならとっとと処分してる筈だし……」
ブツブツとそう言いながら、ルースを持ち上げる。アインズはルースを目に近づけて、よく見ようとしたが……その形状のせいで、手が滑る。
「あ」
落としたそれを慌てて拾い上げようとしたが、間に合わない。
パリン
まるでガラスが割れるような音がして、それはあっさりと壊れてしまう。その瞬間。アインズは体に違和感を覚える。
「えっ、ちょっ、まさかこれ……!」
(完全なる狂騒みたいなアンデッドにも効果が出るアイテムか!?)
そう気付いた時には、もう遅い。アインズの意識は、あっという間に闇に飲み込まれていった。
「……んっ……」
(何だか久々に眠ったような……)
掌に触れる、柔らかな感触。目を開けると、それが自分のベッドだとわかる。
(!?って、手!?皮膚が、ある!?)
転移してきてからは骨のみだった自分の手。それが、アインズにとっては当たり前だった。だが、今目の前にあるのはアンデッドとしての彼の手ではなく……。
(……何か、もの凄く嫌な予感がする)
慌ててアイテムボックスに手を突っ込み、鏡を取り出す。ガチャのハズレアイテムの一つで、何の効果もない物でアイテムボックスの肥やしになっていた物だ。
(査定に回そうと思ったアイテムが早速役に立つとか……何の冗談だろうな)
そんなことを考えつつ、アインズは鏡を覗き込み……。
「……嘘だろ……」
呆然と、そこに映った姿を見つめる。それは、かつて何度も見た姿。……人間だった頃の自分。『鈴木悟』が、そこに居た。