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【社会】

平和詠んだ「国民詩人」 金子兜太さんお別れ会に800人

金子兜太さんのお別れ会で、お礼の言葉を述べる発起人の黒田杏子さん=22日、東京・有楽町で(木口慎子撮影)

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 現代俳句の第一人者で、二月に九十八歳で亡くなった金子兜太(とうた)さんのお別れ会が二十二日、東京都内で開かれ、約八百人が参列した。

 発起人代表の宮坂静生(しずお)・現代俳句協会特別顧問(80)は、金子さんが選者を務めた本紙「平和の俳句」などを挙げて、「兜太の人気は俳人の枠を超え、国民詩人とでも呼びたいほどになった」とたたえた。

 俳人の黒田杏子(ももこ)さん(79)は「女性を下に見ることはなく、いばらない、平等な方。素敵な方でした」。その死を知人の作家瀬戸内寂聴さん(96)に伝えると「あんな立派な人(金子さん)に信頼されたことはあんたの宝。それだけを宝に生きていけばいい」と言われたという逸話も明かした。

 長男真土(まつち)さん(70)は、金子さんを考える鍵として、戦争体験を挙げた。戦時中の南洋で、普段は人殺しさえする部下らが、仲間の死に際して助け合う姿を「大変美しいと感じた」と話していた金子さん。「父は人間は二面性があり、性悪(しょうわる)なものだとも思っていた節がある。じゃあどうするか。父が頼ったのが知性。このごろの反知性主義の横行を危惧し、日記にもたびたび書いていた」と語った。

 一般参列者も惜しんだ。「平和の俳句」で入選した野崎憲子さん(64)は、香川県から駆け付け、「金子先生を親のように感じていました」としのんだ。 (小佐野慧太、出田阿生)

 

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