ティーバイティーガレージという中古車等の販売会社が、口コミサイトを運営する「ヒカカク!」を運営するジラフ(株)を、商標権侵害等で、仮処分の申請し、申請を認める決定がなされました。
口コミサイトへの書き込みが商標権侵害になるの?、というのが、一般的な意見と思います。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160921/k10010702051000.html
札幌市の中古車販売業者が、中古品の買い取り価格を比較する口コミサイトに、社名や事実と異なる情報を掲載されたとして、削除を求める仮処分を申し立てたのに対し、札幌地方裁判所は、商標権の侵害にあたるとして、サイトを運営する東京の会社に情報の削除を命じました。
札幌市の中古車販売業者、「ティーバイティーガレージ」は中古品の買い取り価格を比較する口コミサイト「ヒカカク!」に無断で社名を使われたほか、「今すぐ売るか売らないか即決してくれないと困ると言われた」などと、事実と異なる情報を掲載されたとして、サイトを運営する東京・渋谷区のインターネット関連会社「ジラフ」に削除を求める仮処分を申し立てていました。
これについて、札幌地方裁判所は、商標権の侵害にあたるとして、申し立てがあった22件の情報の削除を命じる決定を出しました。「ティーバイティーガレージ」の代理人の弁護士によりますと、商標権の侵害を理由に、口コミサイトの情報の削除を命じた仮処分の決定は、全国で初めてと見られるということです。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0318719.html
インターネットの口コミサイトに事実ではない記載をされて会社の信用を傷つけられたとして、札幌の中古車買い取り販売業者がサイト運営会社に対し、サイト内での商標の使用禁止と口コミの削除を求めた仮処分を申し立て、札幌地裁(須藤隆太裁判官)が削除を命じる決定を出した。
ティーバイティーガレージのサイトは以下になります。評価1が極端に多く、同業者等による誹謗中傷が疑われる事案です。
ティーバイティーガレージの登録商標は、以下の内容です。
指定役務「自動車又は中古自動車の販売店の経営に関するコンサルティング」や、「インターネットオークション及び電子商取引に関する損害保険の引受け」等について、商標登録をしています。
(111)登録番号 | 第5682351号 |
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(151)登録日 | 平成26年(2014)7月4日 |
(210)出願番号 | 商願2014-5421 |
(220)出願日 | 平成26年(2014)1月14日 |
先願権発生日 | 平成26年(2014)1月14日 |
(180)存続期間満了日 | 平成36年(2024)7月4日 |
最終処分日 | |
最終処分種別 | |
出願種別 |
商標(検索用) | ティーバイティーガレージ |
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(541)標準文字商標 | |
(561)称呼(参考情報) | ティーバイティーガレージ |
(531)図形等分類 |
(732)権利者 | |
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氏名又は名称 | 株式会社ティーバイティーガレージ |
法区分 | 平成23年法 |
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国際分類版表示 | 第10版 |
(500)区分数 | 2 |
(511)(512)【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】 【類似群コード】 | ||
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35 | 自動車又は中古自動車の販売店の経営に関するコンサルティング,二輪自動車又は中古二輪自動車の販売店の経営に関するコンサルティング,フランチャイズシステムに基づく中古自動車買い取り・販売加盟店の経営の診断及び指導 | |
35B01 | ||
36 | インターネットオークション及び電子商取引に関する損害保険の引受け,その他の損害保険の引受け,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,保険料率の算出,中古自動車の評価 | |
36C01 36F02 |
誹謗中傷が疑われる事案だったため、裁判長としては、迅速な差止を重視し、商標権侵害として差止仮処分を認めたのでしょう。
商標は同一、役務が類似する可能性もありますので、形式上、商標権侵害と考えられなくもありません。
しかし、指定役務に係る商標の使用に該当するかというと、該当しない事案であったのではと思います。あるいは、平成26年改正で設けられた、商標法26条1項6号「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」により、商標権の効力が及ばない事案かもしれません。
ちなみに、須藤隆太裁判長は判事補で、まだ任官6年です。おそらく30歳くらいの方でしょう。
http://www.e-hoki.com/judge/3662.html?hb=1
迅速な仮処分を急ぐあまり、法律の解釈をやや誤ってしまった事案ではないかと推測します。裁判長は商標の品質保証機能を重視したのかもしれません。
債務者となった「ヒカカク!」を運営するジラフ(株)からは、請求異議の申立てがなされると思われます。その審理では、不競法の虚偽事実の流布、民法上の営業妨害(不法行為)など、より妥当な法文による決定がされるのではと予想しています。
したがって、この仮処分決定に先例的価値はないと思います。
なお、特許権等に関する訴えについては、東京地裁・大阪地裁の専属管轄です。特許訴訟は、これら地裁での知財事件は専門部で扱われます。そのため、特許に慣れていない裁判官が審理することはなく、このような問題は生じないと考えられます。
当事者の利便性のため、地方でも特許事件を扱えるようにして欲しいという声もありますが、時期尚早と思われます。