新製品レポート
ヒーリングサウンドでノイズをマスクして入眠をサポート

Boseが睡眠用イヤホン型デバイス「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」を発表! NYから現地レポート

Boseは2018年6月20日(現地時間)、米国ニューヨークにてプレス向けの発表会を開催。新基軸の睡眠用イヤホン型デバイス「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」の発売を発表した。昨年11月にクラウドファンディング「indiegogo」に登場し、わずか6日で完売した同製品が、6月21日より北米(米国及びカナダ)で一般に発売される。

Boseの睡眠用イヤホン型デバイス「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」が北米で発売

Boseの睡眠用イヤホン型デバイス「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」が北米で発売

ニューヨークのセントラルパーク近くのホテルTHE QUINで米国と海外プレス向けに発表会を開催

ニューヨークのセントラルパーク近くのホテルTHE QUINで米国と海外プレス向けに発表会を開催

Boseによると、ニューヨーク市の「311ダイヤル」(緊急時ではない通報ダイヤル)に寄せられ苦情のもっとも大きなものが騒音で、その数は2010年の18,500件から2017年には38,000件へと増加している。苦情の多くは夜9時から午前1時までの騒音と、入眠の時間帯の騒音だ。睡眠を妨げる騒音の中身は、一般に「パートーナーいびき」「犬の鳴き声」「うるさい隣人」「交通騒音」「エアコン、製氷機、エレベーター」と、まさに生活のなかに日常的にあるものだ。

そんな睡眠を妨げる夜中の騒音を防ぎ、癒やされるようなサウンドを流して入眠を助けるデバイスとして今回登場したのが「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」だ。

米Boseのチーフ・ブランド・オフィサー、Ken Jacob氏による製品解説

米Boseのチーフ・ブランド・オフィサー、Ken Jacob氏による製品解説

ニューヨーク市に寄せられる騒音の苦情。2017年は38,000件にまでのぼるという

ニューヨーク市に寄せられる騒音の苦情。2017年は38,000件にまでのぼるという

「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」は、外見はスマホとワイヤレスで接続する“完全ワイヤレスイヤホン”に近い。だが最初に断っておくと「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」はスマホから音楽を流す機能はないので、ポータブル・オーディオとしてのイヤホンではない。

また、Boseといえば交通機関や路上の騒音を軽減する“ノイズキャンセル”に関連する製品が多く、こちらを想像する人もいると思うが、「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」はマイクを内蔵しておらず、“ノイズキャンセル”のテクノロジーも搭載していない。

「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」は、今までのBose製品ともまったく異なる“ノイズマスキング”のアプローチで作られた製品だ。

「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」は、“睡眠を妨げる騒音を解決する”という目的のために新たに開発された

「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」は、“睡眠を妨げる騒音を解決する”という目的のために新たに開発された

「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」の目的と機能は、大きく分けてふたつある。ひとつは騒音をパッシブにブロックする、つまり耳栓の役割だ。

イヤホン部の筐体には外部ノイズを物理的に遮音する新しい「StayHear+」チップが取り付けられており、文字通り外音をカットする。イヤホンにあたる本体は約1cm×約1cm、重量1.4gで、音楽用の完全ワイヤレスイヤホンとして比較すると極めて小さい。

Boseが「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」で小ささを重視した理由は、睡眠時に装着したときの快適さだ。「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」の装着感は、イヤホンと呼ぶより耳栓に近い。完全に外耳の溝に収まり、横向きに寝る人でも付けたまま枕に耳を当てても快適に過ごせる設計だ。

1セント硬貨より小さい約1cm四方の超小型筐体

1セント硬貨より小さい約1cm四方の超小型筐体

小型で耳にぴたりと収まる「StayHear+」チップも遮音性を高める

小型で耳にぴたりと収まる「StayHear+」チップも遮音性を高める

イヤホンの内部構造も公開

イヤホンの内部構造も公開

もうひとつは、音によるノイズのマスクと入眠のサポートだ。イヤホン型の本体には、「sleeptrack」と呼ばれるヒーリングサウンドがあらかじめプリインストールされている。こちらを流しながら眠りに付くことで、外環境からのノイズをマスクし、騒音を意識しないようにするという訳だ。Boseの研究によれば、一般的な音楽を流すだけでもノイズマスキングはできるが、バッテリーライフや効果的な音という観点から、「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」のような専用デバイスが有利だという。

ちなみに、「sleeptrack」には、木の葉と雨音の「Rustle」、流水の「Downstream」、寄せる波の「swell」など全部で10種類が用意されている。クラウドファウンンディング「indiegogo」のユーザーからのフィードバックがもっとも大きかったのが、これら「sleeptrack」のバリエーションで、今後アップデートによる追加も予定しているという。なお、自分のお気に入りの音楽や音源を転送するような機能はない。

10種類ものヒーリングサウンド「sleeptrack」を本体にプリインストール

10種類ものヒーリングサウンド「sleeptrack」を本体にプリインストール

落ち葉に雨が落ちるような「Rustle」を試聴

落ち葉に雨が落ちるような「Rustle」を試聴

なぜ、“ノイズキャンセル”ではなく、“ノイズマスキング”なのか。Boseの調査によると昼間の騒音と、夜の騒音ではまったく事情が異なり、“ノイズキャンセル”は公共交通のような重低音の騒音向きだが、夜の騒音は、たとえば身近な人のいびき、隣室から壁越しに聞こえる話し声、交通騒音とやや中高域寄りなのだという。夜の騒音を低減するには、“ノイズキャンセルではなくノイズマスキング”が効果的だというのがBoseの見解というわけだ。

深夜に窓の外から漏れるノイズは日中のノイズとは大きく異なるという

深夜に窓の外から漏れるノイズは日中のノイズとは大きく異なるという

完全ワイヤレスイヤホンのような外見の「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」は、もちろんバッテリー駆動となっている。イヤホン部の内蔵バッテリーには酸化銀電池を採用し、最大16時間の連続使用に対応するという。一般的なリチウムイオンではない理由は長時間も安定動作し、睡眠中でもより高い安全性を確保するためだ。充電専用ケースによるイヤホン充電は約8時間、ケース充電は約3時間かかるという。

ケースによる充電も完全ワイヤレスイヤホン風だ

ケースによる充電も完全ワイヤレスイヤホン風だ

発表会の会場で実際に「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」を体験してみた。充電ケースから取り出して耳に装着するところまではまさに完全ワイヤレスイヤホンといった感じだったが、ここからが大きく異なっていた。基本的には、iOS/Android用に提供される専用アプリ「Bose Sleep App」を利用する形で、スマホとペアリングしても音楽を流すことはできず、「sleeptrack」の選択やタイマー、目覚ましの時間の設定等などができるのみ。「sleeptrack」の音源はすべて「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」側に保存されているので、あらかじめ設定してやれば、スマートホンがなくても使えるようになっていた。ちなみに、片側のみ装着して利用することも可能だった。Bluetoothについては、もっとも電波の弱いClass 3で、Bluetooth BLEが使われている。

製品デモンストレーションを行った米BOSEのプロダクトエンジニア・Daniel Lee氏

製品デモンストレーションを行った米BOSEのプロダクトエンジニア・Daniel Lee氏

専用アプリ「Bose Sleep App」では、スリープタイマーや目覚ましアラームも設定可能

専用アプリ「Bose Sleep App」では、スリープタイマーや目覚ましアラームも設定可能

発表会の会場内ではいびきや隣人の騒音を模したノイズがスピーカーから再生され、「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」の効果を体験できた。「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」の装着感は超小型で耳への収まりが抜群によく快適だが、「sleeptrack」を流していない状態では、いびきや、窓の外から漏れ聞こえる交通騒音は聴こえる。

そこで、「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」を通して木の葉と雨音の「Rustle」、流水の「Downstream」、打ち寄せる波の「swell」と切り替えてみたところ、普段は気になる不規則な夜の騒音の音が上手く埋もれ、気にならなくなった。機能として重要なことは、元の騒音がなくなる訳ではなく、埋もれるということ。これが“ノイズマスキング”の働きだ。「sleeptrack」の環境音は主に自然のヒーリングサウンドなので、入眠用のサウンドとしてゆったりとした気分で眠りに落ちる効果はありそうだ。

なお、「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」のコンセプトとしてあるのは、人々を悩ませているノイズの種類や環境は、人それぞれであること。そのため騒音を自動判別して処理したりはしないし、騒音別の「sleeptrack」の推奨設定などはないようだ。

会場ではいびき、交通騒音、隣室の声を模した音をスピーカーで流してデモ

会場ではいびき、交通騒音、隣室の声を模した音をスピーカーで流してデモ

基本的に屋外利用は想定せず、ベッドルームが主な利用シーンになる

基本的に屋外利用は想定せず、ベッドルームが主な利用シーンになる

「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」は完全ワイヤレスイヤホンに近い見た目をしているので、僕も当初はイヤホンの仲間だと思っていた。だが、実物を見て、機能を体験した上で考えてみると、「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」はヒーリングサウンドの環境音を流せる耳栓、として捉えるのが正しいのかもしれない。もちろん、その裏にはBoseによる騒音に対する研究成果が反映されているのは言うまでもない。

Boseがまったく新基軸の商品として発売する「BOSE NOISE-MASKING SLEEPBUDS」は、米国、カナダで発表会翌日の6月21日より249ドルで発売。日本では今年秋の発売を予定している。Boseが“ノイズキャンセル”に続き“ノイズマスキング”でも成功を収めるのか、今年秋の日本での発売も楽しみだ。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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