新幹線殺傷、逮捕の男「人を殺して刑務所に行く」
新幹線の車内で乗客が襲われ3人が死傷した事件。逮捕された男が、「死刑になりたいからやった」と供述していることが新たにわかりました。身勝手な動機はなぜ生まれたのか、それを探るため、男の生い立ちを取材しました。
潮干狩りを楽しむ家族連れで賑わう愛知県の東幡豆海岸。男性もかつて、家族でここを訪れました。
「一朗くんが2歳ぐらいのころが初めてで、そこから毎年のように」
しかし、年に一度の家族旅行は、男性が「一朗くん」と呼ぶ息子が7歳の時が最後になりました。今、22歳になった小島一朗容疑者。今月9日、走行中の東海道新幹線の車内で乗客の男女3人がナタで襲われ、会社員の梅田耕太郎さん(38)が殺害された事件で逮捕されました。
小島容疑者は、母親の兄=伯父に、去年、こう話したと言います。
「『俺は人を殺して刑務所に行くんだ』って。働かなくても生きていける所。人は殺しちゃいかんと言った」(小島容疑者の伯父)
「人を殺して刑務所に行く」。小島容疑者は職場で疎外感を募らせていた上、両親との関係にも問題があったと伯父は言います。去年、母親からの提案で、小島容疑者は、母方の祖母の養子になり、引き取られたのです。
「養子にしたんですけど、あれが結局全ての歯車を狂わせたのかなと。なんで自分の子を育てられないんだって。最後は、おばあちゃんに渡しましたから。関係ありませんって。育児放棄を受けたような形、ネグレクトですね」(小島容疑者の伯父)
小島容疑者が小さい頃描いた絵です。カラフルに色付けされ、たくさんの生き物も登場。子どもらしく無邪気な絵に見えます。父と子の写真、仲が良さそうに見えます。しかし、父は、甘え上手だった姉とは対照的に、小島容疑者を厳しく育てたと言います。
「(小島容疑者は)自分を表現するのが下手で、一度挫折すると立ち直れないような子だった」(小島容疑者の父親)
感情表現がうまくできず自分の意見をなかなか曲げない。そんな小島容疑者を、時に叩いたり、罰として食事を与えなかったりしたこともあったと言います。
小島容疑者の同級生の母親は・・・
「お父さんも小学校の運動会に一切出ていなかった。(お母さんに)『ご主人は仕事ですか』と聞いたら、家で寝てると。幼稚園の送り迎えもおばあちゃん。もっと手をかけてあげればいいのになと」(小島容疑者の同級生の母)
中学で不登校になり、関係はさらに冷え込みます。
「話し合っても無理だなと。こうでしょと言っても、違うと。さじを投げたというか」(小島容疑者の父親)
そして中学3年の夏休み、亀裂は決定的に。
「9月から新学期が始まるので、本人から水筒が欲しいということで、母親が渡した。それが新品ではないということで、僕だけがなんで中古なんだと」(小島容疑者の父親)
姉のは新品で、なぜ自分のは中古品なのか。小島容疑者は包丁と金づちを投げつけました。そして、この後、母親は、小島容疑者を自分が勤める自立支援施設で生活させることにしたのです。
事件後、母親は・・・
「一郎は小さい頃から発達障害があり、大変育てにくい子でしたが、私なりに愛情をかけて育ててきました」
小島容疑者は、中学生の頃に父に買ってもらった甚平を、ボロボロになるまで着ていました。父は、最近になってそれを知ったと言います。
先週、両親と祖母は、小田原警察署へ。面会室のドアを開けた小島容疑者は、3人をちらりと見ると無言でドアを閉め、面会を拒否しました。
「一朗に、どうしてこういうことを起こしたのか、どんな寂しさがあったのか、『なんで帰ってこられなかったの』って聞きたかった。(小島容疑者は)会わないって。気づつない(心苦しい)」(小島容疑者の祖母)
下着などの差し入れも、一切受け取りませんでした。
「死刑になりたいからやった」
両親に対する反発を口にしながら、小島容疑者がそう供述していることがわかりました。あまりにも身勝手な動機。父は2年前、小島容疑者と電話で話しました。
「何かひと言、どっちか言ってほしかったなと。本当は、帰ってきたいのか、やっぱりここがいいのか。おばあちゃんとしても『やっぱりお父さんとお母さんの愛が欲しいんだ』と言ってまして。『じゃあ、おまえどうしたいんだ』と聞きたかったけど、彼は終始無言でした」(小島容疑者の父親)
その時のことを父は悔いていると言います。
※母親の手記に、容疑者の発達障害に触れた部分がありました。これは、犯罪の原因に障害があるという趣旨ではなく、家族の証言から容疑者の生い立ちをつづるのに必要な情報としてお伝えしたものです。