イタリア、移民救助船を差し押さえへ 政策に批判集まるなか

Lifeline ship carrying migrants in the Mediterranean Image copyright EPA
Image caption ミッション・ライフラインの船に乗る移民

イタリアは21日、地中海で移民を救助したドイツの非政府組織(NGO)が保有する船2隻について、法的地位を確認するために差し押さえる考えを明らかにした。

イタリアで先に発足したポピュリスト政権は厳格な移民政策を取っている。今月初めには海上で救助された630人の移民を乗せた「アクエリアス号」の入港を拒否し、大きな批判を浴びた。

こうした動きについてエマニュエル・マクロン仏大統領が反EU感情を「やまい」だと糾弾し、伊政府の反感を買った。

アクエリアス号はイタリアとマルタに入港を拒否された後、スペインに寄港した。

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欧州連合(EU)の加盟10カ国は24日にブリュッセルで会合を開き、域内への移民流入を防ぐ方策を協議する予定だ。

イタリア政府は先に、イタリアが優先されなければどんな計画にも参加しないと公表している。またポーランドとチェコ、スロバキア、ハンガリーの中東欧4カ国は、協議をボイコットすると発表した。

国連難民高等弁務官事務所は21日、リビア沖で220人が溺れた事故について「衝撃を受け、打ちのめされている」と述べ、早急に対策を取るよう呼びかけた。

EU各国の断絶は、マクロン氏の演説によってさらに浮き彫りになった。

仏北西部ブルターニュでの演説でマクロン大統領は、国名を明言せずに、反EU感情は「隣国」を含む「欧州全土に広がったやまいのようだ」と発言した。

「彼らは最低のことを言っているが、我々はそれに慣れ始めている」

イタリアのポピュリスト政党「五つ星運動」の党首も務めるルイジ・ディ・マイオ副首相はツイッターで、マクロン氏の発言は「不快で見当違い」だと反論し、「本当のやまい」は移民に背を向けた国々が、移民を他のEU加盟国に移動させるよう「我々に説教する」ことだと述べた。

A float in Germany depicting the EU migrant crisis February 2018 Image copyright Getty Images
Image caption 欧州の移民危機を表現したブイ

なぜイタリアは船を取り押さえる?

ライフライン号とゼースクス号は共に、ドイツのNGOミッション・ライフラインに属している。ミッション・ライフラインによると、ライフライン号は21日朝に224人の移民を救助した。

ライフライン号はオランダの国旗を掲げていると報じられているため、イタリアの極右政党「同盟」の党首も務めるマッテオ・サルビーニ内相兼副首相はフェイスブックで、ライフライン号は「オランダに行くべき」で、イタリアに入港すべきではないと述べた。

しかしオランダのEU外交官はツイッター、この船がオランダ船籍ではないことを確認したと発表している。

また、イタリアのダニロ・トニネッリ・インフラ相は、ライフライン号はリビアの沿岸警備隊が介入した後に移民を連れて来ており、違法行為だと指摘した。

トニネッリ氏は、法的地位を確認するためにライフライン号とゼースクス号を差し押さえる必要があると述べると共に、イタリアは「再び移民を救うことになる」と話した。

ライフライン号はツイッターに、オランダ船籍であることを示す証明書とする写真を公開した。

イタリアが移民に厳しいのはなぜ?

先に発足した連立政権は、証明書のない移民50万人を送還したい考えだ。彼らの多くは不潔な移民受付センターに収容されている。過去4年で、60万人がリビアからイタリアにたどり着いている。

イタリアの国営放送ライのインタビューでサルビーニ氏は、「1、2年のうちに助ける、その間に他の人も送るからとどめておいて欲しい」と命令されるのは「受け入れられない」と話した。

ジュゼッペ・コンテ首相は、北アフリカからイタリアへの移民流入を減らす政策が最優先で、移民をEUの他の加盟国に移すことではないとしている。

移民の中にはシリアなどの紛争地帯から来た、亡命の権利がある難民もいる。

なぜEUは船を止めない?

イタリアの軍艦は、EUの反密入国ミッション「オペレーション・ソフィア」の急先鋒として、リビア沿岸の広範囲を警備している。

EUはこれまでにもリビアの沿岸警備隊と協力し、移民を乗せたボートを阻止してきた。しかし、密入国をあっせんしているギャングはリビア国内の混乱に乗じて拡大し、必死になった移民から1人当たり何千ドルもの乗船料をとっている。

欧州委員会は、国連などの機関が北アフリカで欧州への難民申請資格があるかどうかを見極める「地域下船プラットフォーム」を提案している。資格がないとされた人は、自国内での再定住支援が受けられるという。

しかし、ディミトリス・アブラモポロス欧州委員会移民・難民担当委員は、EU外に置かれるこうした施設が移民の「グアンタナモ湾収容キャンプ」になってはいけないと警告している。

EUはこのほか、欧州対外国境管理協力機関(フロンテックス)の人員を2020年末までに1万人に増やす計画だ。

イタリアに到着した移民の出身国一覧。緑が2018年1~4月、深緑が前年同期
Image caption イタリアに到着した移民の出身国一覧。緑が2018年1~4月、深緑が前年同期

EUのいわゆる「ダブリン規約」では、亡命申請は最初にたどり着いたEU加盟国で取り扱う決まりになっている。

ダブリン規約は現在、見直しが行われているが、現状ではEU加盟国は亡命申請者を最初の到着国へ送り返すことができる。地中海に面するイタリアとギリシャは、不公平な重荷を化せられているとしてこの政策を拒否している。

(英語 Italy to seize NGO ships amid migrant row

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