インスタグラム、縦長動画に成長期待

デイブ・リー北米テクノロジー担当記者

インスタグラムの共同創業者、シストロムCEOは長い動画を見る人が増えていると認める Image copyright Instagram
Image caption インスタグラムの共同創業者、シストロムCEOは長い動画を見る人が増えていると認める

もしインスタグラムの主要な「インフルエンサー」(ソーシャルメディアなどで大きな影響力を持つ人)をイベントに招待するなら、インスタグラムに投稿できるありとあらゆる材料を準備しておくべきだろう。

米フェイスブック傘下の写真共有サイト、インスタグラムがサンフランシスコで20日に開いた、動画アプリ「IGTV」を発表したイベントには、シェフが腕を振るった料理から高級コーヒー、風変わりな舞台セットまでそろっていた。

インスタグラムに追加される機能のほか独自のアプリでもある、縦長で時間の長い動画のサービスは、親会社のフェイスブックにとって非常に重要だ。

フェイスブックは10~20代のユーザーから、自分たちの親あるいは祖父母世代向きのサービスだとさえ思われている。

彼らは、ソーシャルメディアとしてはスナップチャットをより好み、もっとじっくり見たいものはYouTubeを使う。

従来の放送局が制作する派手な番組を敬遠し、クリエイティブなインターネット上の有名人たちが「やあみんな!」と語りかける親密さの方を好む。

当然だろう。役員会で大人たちが考えたものより、ティーンがベッドルームで作った方が彼らにとって魅力があるのはあたりまえだ。

これまでと同様、インスタグラムはIGTVでも他社が最初に始めた機能をまねしている。かなり後発だとしても、規模と資源が自社のサービスを成功させられると考えている。

インスタグラムはすでに、ユーザーの一連の投稿が1日で消えるという、スナップチャットにあるストーリー(Stories)機能のコピーの導入に成功している。

YouTube上のクリエイターたちやスナップチャットのディスカバー(Discover=ニュースなどのコンテンツが見られる機能)を次の標的にするのは合理的かつ予想されたことでもあった。

ビッグ・マネー

IGTVには開始当初は広告がないが、インスタグラムのケビン・シストロム最高経営責任者(CEO)は、間もなく広告が入るだろうと認める。

そうしないはずがない。

オンライン広告では通常、ビデオ広告により高い料金が設定される。米調査会社イーマーケターは、デジタル動画広告の市場規模は今年、180億ドル(約2兆円)に達するだろうと予想している。2017年と比べて22%増だ。

IGTVによって、デジタル動画広告市場でより大きなシェアを獲得する機会が得られるわけだ。

調査会社エンダース・アナリシスのジョゼフ・エバンズ氏は、「フェイスブックは、短い動画で最初に広告を流すのはあまりうまくいかないと気が付いている。人々は見るのをやめてスクロールしてしまう」と指摘した。

「短い動画は、途中で広告を流すには短かすぎる。最後に流すのはまるきりだめ。人々は画面をスクロールしてしまうからだ。なので、動画広告のために必要なのはより長い動画だということになる」

米調査機関ピュー研究所によると、マーケティング業界が非常に好む18~24歳の層では、YouTubeの方がフェイスブックよりも人気がある。

より重要なのは、ユーザーはYouTubeでただスクロールしているのでなく、より長い時間視聴しており、大量の広告も一緒に見ていることだ。

インスタグラムはさらに後を行っているかもしれないが、ユーザーは今でも急速に増加している。

注目すべきなのはピュー・リサーチ・センターの調査で18~24歳の層はYouTubeよりもインスタグラムを一日数回開いていると分かったことだ。

一方で、アプリの出発点でもある写真からサービスの軸を移すのは危険な賭けになるかもしれない。

エバンズ氏は、「動画視聴の時間を増やすことが主に意味するのは、インスタグラムの収益を向上させようとする努力だと思うが、これにはリスクがある。そもそもインスタグラムがこれだけ人気を集めた理由を損なうことになるからだ」と指摘した。

才能を集める

IGTVの運命を決めるのは最終的には、現在のインスタグラム上のスターたちやほかのユーザーが良い縦長動画を作ろうとするかどうかにかかっている。

IGTVの宣伝のために集められたクリエイターたちが、今後もYouTubeを使うし、どうなるか様子を見ると語っていたのは象徴的だろう。

しかし、インスタグラムの取り組みは、YouTubeが議論を呼ぶような規定変更をしたことに助けられるかもしれない。YouTubeは今年、各チャンネルの広告掲載の基準を厳しくする措置をとった。

そもそもIGTVはクリエイターたちに収益を還元する仕組みを持っていないが、広告が掲載される可能性は否定していない。

筆者はどんなコンテンツが投稿されるようになるのか懸念している。

フェイスブック上のオンデマンド動画サービス、フェイスブック・ウォッチは開始から間もなく、日中に放送される質の高くないテレビ番組のようになった。

IGTVの紹介動画では、我々が最初に見せられた動画の一つはパイを顔に投げつけるというものだった。

YouTubeで最も人気のあるクリエイターたちの多くは、「映画のような」映像にこだわっている。映画は縦長ではない。

視点を広げてみよう。もしこの新サービスが成功すれば、フェイスブックは寡占企業であり分割されるべきだという、米国などの一部の政治家たちの主張を勢い付けるかもしれない。

フェイスブックは今回の発表とは別に、双方向型のクイズ機能の導入を明らかにした。過去8カ月間で驚くべき成功を収めているクイズアプリ「HQトリビア」を大胆なまでにまねしていると一部で指摘されているものだ。

米国の独占禁止法は、主要な企業の合併阻止に重きを置いているが、芽が出つつある新しいアイデアをソーシャル・ネットワークの先駆者が飲み込んでいくことについては、あまり触れられていない。

(英語記事 Instagram pins hopes on IGTV's vertical video

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