お金は増やさなくていい
ここまで「貯める」「使う」について述べてきましたが、本章からはいよいよお金を「増やす」ステップに進みましょう。具体的にいえば、賢いお金の使い方で貯めたお金を元手に、株式などへの投資を始めるのです。
でも、ちょっと待ってください。
入社1年目のあなたは、すぐにお金を増やそうとしないでください。
矛盾したことを言いましたね。混乱させて申し訳ありません。
正確に言うと、本書を読んでこれからお金との付き合い方を見直す段階の人は、まだ投資に手を出す必要はありません。
なぜなら、まずは貯金体質をつくることが最優先事項だからです。
元手となるお金が貯まらなければ、思うように投資はできません。
また、投資は少なからずリスクがありますから、ある程度、資金を貯めてからのほうが安全というのも、最初から投資をすすめない理由のひとつです。
だから、まずは「貯め方」と「使い方」で説明した考え方やノウハウを活用し、貯金することに専念してください。
給与の20%(給与が少なければ最初は10%でもかまいません)を銀行の自動積み立てで貯金していくのです。
まずは金額を増やすことよりも、貯める習慣をつくることのほうが大切ですから、金利の大小を気にすることはありません。ひたすら貯めていくのです。
といっても、自動積み立てなので、意思とは関係なく勝手に貯まっていきます。ですから、最初は「お金のノート」などを活用して、お金の賢い使い方を身につけることが肝となります。
しばらく浪費を最小限にし、お金を正しく使っていくと、しだいに今の生活に慣れていき、無理なくお金を貯められるようになります。
まずは、自動積み立てで貯金する生活を1年続けてみてください。
無事、1年間貯め続けることができれば、賢いお金の使い方が身につき、貯金体質に変化したといえます。
そうしたら、晴れて投資デビューの準備が整ったことになります。
なお、本書の読者には入社1年目以外の人もいるかもしれません。
すでに毎月一定額の貯金ができている人、または投資にまわせる余裕資金がある人は、1年を待たずに投資を始めてもいいでしょう。
どれだけリスクを許容できるかは個人差がある
貯金体質が身についたら、次は投資でお金を増やすステップに進みましょう。
投資にまわす資金は、毎月の給与から自動積み立てしている金額(③投資)の半分を目安とします。
たとえば、もしあなたが毎月2万円を自動積み立てで貯金しているなら、そのうち1万円は自動積み立てを継続し、残りの1万円は投資にまわすのです。
ただし、「貯金50%、投資50%」という配分は、あくまでひとつの目安にすぎません。「貯金0%、投資 100%」にしてもかまいませんし、「貯金70%、投資30%」にするのも、「貯金100%、投資0%」にするのも自由です。
貯金と投資の配分バランスについては、どれだけをリスクをとれるかによって個人差が生まれるものです。
私はこれから投資を始めたいという人から相談を受けたとき、必ず次のような質問をします。
「どのくらい資金が減っても平気でいられますか?」
そうすると、「30%減っても大丈夫」と答える人もいれば、「10%なら耐えられます」と答える人もいます。
投資はお金が増えることもありますが、お金が減るというリスクもあります。
30%減っても大丈夫であれば、それなりにリスクの高い金融商品に投資できますが、10%減っただけで動揺してしまうようであれば、リスクの低い金融商品を中心に投資することになります。
しかし、実際に投資を始めてみると、「30%減っても大丈夫」と答えていた人が、15%減った時点で大きく動揺し、パニックになることもあれば、逆に「10%なら耐えられる」と答えていた人が、実際に15%減っても意外と冷静でいられることもあります。同じ金額が減っても、そのとらえ方は人それぞれ。つまり、自分がどの程度投資のリスクをとることができるかは、実際に投資をし、値動きを経験しなければわからない、ということです。
ですから、まずは「貯金50%、投資50%」で様子を見ることをおすすめしています。「お試し期間」を設けるのです。
投資を始めると、必ず値動きがあります。万一お金が減っていく局面で、ドキドキして不安になるようであれば、投資のパーセンテージを小さくすることを考えたほうがいいかもしれません。
反対に、長期で運用するつもりだから、小さな値下がりはあまり気にならないという人であれば、投資のパーセンテージを増やしても問題ありません。
投資 1 0 0 %でも大丈夫?
本音を言うと、私は「貯金0%、投資100%」の配分でも大丈夫だと思っています。あとでくわしく述べますが、本書でおすすめする金融商品は、短期的に見れば、値下がりすることもありますが、長期的に見れば高い確率で増えていく性格の投資対象だからです。実際、私もほぼ100%投資にまわしています。
また、投資の割合を高めたほうが、資産が増えるスピードがアップする可能性も高くなります。ぜひ本章を最後まで読んで、どのくらいのリスクをとるか参考にしてください。
ただ、「投資」の比率を高める場合には、ひとつ注意点があります。
近い将来、まとまったお金が必要になるイベントがあるなら、その分は貯金で増やしたほうが安心です。たとえば、結婚式、資格取得や留学の資金、出産の資金、子どもの教育費などが該当します。
金融商品に投資していると、短期的には大きく値下がりする可能性があります。そのとき、まとまった資金が必要なイベントが重なると、「資金が足りない」とい
う問題に直面する可能性もゼロではありません。
また、貯金はすぐにお金を引き出すことができますが、金融商品を換金しようとすると、2〜3日かかるのが一般的です。
現金化のしやすさを「お金の流動性」と言いますが、人生のイベントに使う予定の資金は、流動性の高い貯金でもっていたほうが、なにかと安心できます。
一方、「とりあえず使い道がはっきりしていない」「老後資金をつくりたい」という ことであれば、一時的に資産が減っても実害が出るわけではないので、貯金ではなく、投資にまわしたほうが賢明です。
*次回『若い人こそ「長期投資」を始めよう』は、6月26日(火)更新予定*