最新鋭のSM-6 日本も運用できるのか? | 因幡のブログ

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 昨今とある番組のお陰で大分知名度の上がったNIFC-CA(海軍統合火器管制 対空)という言葉ですが、その重要な構成品の一つがSM-6という新型のミサイルです。

そもそもSM-6とは?
 ではSM-6とはどのようなミサイルなのでしょうか。従来イージス艦は艦隊防空用に射程約170キロほどのSM-2を運用していました、SM-6はこのSM-2の後継に当たるミサイルです。元になったのはSM-2に短距離弾道ミサイル迎撃能力を付与したSM-2ブロックⅣで、SM-6の第1段目のブースターと第二段目のモーターはSM-2ブロックⅣと共通です。
 このミサイル最大の特徴は弾頭部で、戦闘機に搭載されるAIM-120AMRAAMで使用されているアクティブレーダーシーカーが搭載されているのです。従来のSM-2ではイージス艦が発見した標的に対して発射すると、途中までイージス艦のレーダーと慣性航法により目標へと誘導され、終末段階ではイージス艦のイルミネーターが目標へ照射した電波の反射波を捉えてそこに向かっていくというもので、この方式をセミアクティブ方式と言います。対してSM-6は、終末段階において自らが目標をレーダーで捜索し向かって行くことが可能になりました。これにより、たとえイージス艦が目標を捉え続けずともミサイル自身が勝手に命中する、というわけです。
 さらに射程もSM-2に比べて大きく増大した370キロを誇り、さらに遠くの敵を迎撃できるようになっています。
 
NIFC-CAとSM-6
 このSM-6のアクティブレーダーシーカーと長大な射程が可能ならしめたのがNIFC-CA(海軍統合火器管制 対空)というものです。これはイージス艦の弱点とされていた水平線以遠を低空で飛翔する巡航ミサイルや対艦ミサイルを早期に発見・迎撃することを目的としたコンセプトで、米海軍が生み出し現在セオドアルーズベルト空母打撃群がこの能力を唯一具備しています。
 ではなぜ水平線以遠の低空目標がイージス艦の弱点なのでしょうか。周知の通り地球は丸い形をしています、対してレーダーは直線しか描けません。つまり水平線の下を見ることはレーダーでは出来ないわけです。つまり水平線以遠を海面すれすれで飛翔する目標の探知は極めて困難ということになります。実際日本でも尖閣諸島に中国の小型機が領空侵犯した際に、高度が低かったために自衛隊のレーダーサイトはこれを探知できませんでした。
 さてNIFC-CAの鍵となるのはE-2D早期警戒(管制)機・CEC(共同交戦能力)端末を搭載したイージス艦(ベースライン9A/C)・そしてSM-6です。まずE-2D早期警戒機、あるいはCEC搭載イージス艦が敵が発射したミサイルを探知します。そしてこのデータをデータリンクによって付近CEC搭載イージス艦に送付します。ここで重要なのがデータを送付された側のイージス艦にはまだ目標が感知出来ていない状態という点で、つまり見えていない敵があたかも見えている状態になるわけです。そしてこの送付されてくるデータに基づき、見えていない目標にSM-6を発射します。SM-6は発射された艦から誘導を受け、発射艦から見えない位置に来ると今度は付近のイージス艦が誘導を担当します。そして最終的にアクティブレーダーシーカーによって目標を捜索・迎撃します。 実際にSM-6は低高度標的のGQM-163AやBQM-74Eの迎撃に成功しています。
 大まかにですがNIFC-CAとはこのようなもので、SM-6は重要な要素の一つというわけです。

SM-6の多用途性
 記したようにSM-6の特徴は長大な射程とアクティブレーダーシーカーです。これを活かして米海軍ではSM-6を単なる艦隊防空用ではなく、他の運用方法を考案しています。
 一つは弾道ミサイル防衛です。そもそもSM-6は短距離弾道ミサイル防衛用のSM-2ブロックⅣを元にしているのは先述した通りです、そこでSM-6を改良したSM-6インクレメント1/2が考案されました。インクレメント1は2015年頃、インクレメント2は2018年ごろの導入を予定しています。このBMD用のSM-6が担当するのはSBD(海上配備型ターミナル段階迎撃)というもので、名前の通り大気圏内に入ってきた弾道ミサイルを迎撃するものです。
 もう一つはつい先日明らかにされた対艦ミサイルとしての運用です。実は従来から米海軍では対空ミサイルを対艦ミサイルとして用いるようにしていました。例えばSM-2もこのように運用出来るようにしていたようですが、終末誘導がセミアクティブのため発射艦が目標をイルミネーターで照射しなければならず、水平線より自艦側の標的しか狙えませんでした。しかしSM-6はアクティブレーダーシーカーを搭載しているため、目標の位置さえ分ければ終末誘導で自艦の電波照射の必要がありません。そのため例え水平線以遠の目標でも攻撃が可能であり、かつ射程は370キロなので対艦ミサイルハープーンより遠距離の敵を攻撃可能です。ただし対艦ミサイルとして運用するために弾頭部の炸薬増加など改良がされていると思われますが、詳細は不明です。

SM-6は日本も使えるのか?
 ここまで見てきて、SM-6がいかに優れた兵器かお分りいただけたでしょうか。しかし実はSM-6はどのイージス艦にも搭載できるわけではありません、ここから先はイージス艦の能力のお話になります。
 イージス艦の能力段階についてはベースラインという単語が使われます。イージス艦をパソコンに例えると、ベースラインはパソコンの基本ソフト(OS)のようなものです。さて、SM-6が運用可能になるのはベースライン9からで、ベースライン9にはさらにA・C・D・E(Bは計画中止)と種類があり、タイコンデロガ級用でBMD能力が付加されないのがA、アーレイバーク級用でBMD能力が付加(BMD5.0)されるのがC、将来建造されアーレイバーク級用がD、そして地上配備型のイージスアショア用がEとなります。
 では日本の海上自衛隊にベースライン9を積んだイージス艦はいるか、現在はいません。こんごう型4隻はベースライン5.3に相当するAWS J3が、あたご型2隻はベースライン7に相当する同 J5が搭載されています。しかしあたご型2隻はBMD能力付加のためにベースライン9C相当の同 J6が搭載される予定です。さらに今後建造が予定されているイージス搭載護衛艦の27・28DDGも、このJ6が最初から搭載される予定です。つまり将来日本はSM-6を運用出来る艦を4隻持つことになります。
 さらに昨年1月に米海軍はSM-6が運用出来る艦について、ベースライン9だけではなくベースライン5.3を加えると発表しています。続報がないためこの話がどうなったかは残念ながら筆者にはわかりませんが、そのまま話が進めばこんごう型にもSM-6が搭載可能になるということになります。
 いずれにせよSM-6が海上自衛隊でも運用されるようになれば、我が国の安全に大きく寄与することは明白でしょう。
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