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企業・経営 週刊現代

「あの社長に任せていたら武田薬品は危ない」創業家一族・決意の告白

7兆円買収に猛反対…!

立場が立場だけに、余計な口出しはしないつもりだった。だが、会社の財務状況を急激に悪化させる買収を見過ごすわけにはいかない。不安を抱く現役社員の代わりに言おう。社長、あなたは間違っている。

身の丈を超えた買収

「我々は、グローバル化を進める方針に反対しているわけでも、外国人がトップを務めることに反対しているわけでもありません。

ますます国際競争が激しくなる時代、新薬を開発していく体力を得るためにも、ある程度の規模の拡大が必要なこともわかります。

しかし、今回の買収を独断専行で決めたウェバーの姿勢は、創業から230年余りにわたって武田が築いてきた歴史を、あまりにも蔑ろにしています。このまま彼に任せていたら、武田は確実に潰れてしまう」

本誌の取材に重い口を開いたのは、武田薬品工業のOBで、創業家の縁戚にあたる原雄次郎氏(88歳)だ。

かつて、武田薬品不動産の社長まで務めた原氏は、戦中に武田薬品と合併した小西新兵衛商店を創業した小西家の血筋にあたり、武田薬品の社長を長らく務めた七代目小西新兵衛氏の甥にあたる。

5月8日、武田薬品工業は、アイルランドの製薬大手シャイアーを日本円にして約6.8兆円で買収することを発表、日本企業による過去最大のM&Aとして、大きなニュースになった。

 

それは、創業家出身の原氏にとっても寝耳に水のことだった。

「3月末、この買収話が取り沙汰されて驚愕しました。現役の社員たちも知らされていなかったようで、あれだけの規模の会社だというのに、本当にごく一部の経営陣だけで決めた話なのです。

しかも、話がまとまってみたら、およそ7兆円などという途方もない買収金額だった。身の丈をはるかに超えたカネを借りて、自分のところより時価総額の大きな会社を買う。そんな馬鹿な話が、どこにあるでしょうか。

ただでさえ、武田は'11年にスイスの製薬会社・ナイコメッド社を約1兆円で買収するなど、大型の買収を繰り返しており、有利子負債が膨らんでいた。シャイアーが抱えている有利子負債も加えれば、6兆円規模の借金を抱えることになる。

案の定、いま武田の行く末を日本中が不安視している。2月には6000円台だった武田の株価は4000円台まで急落し、その後は値が戻りません。さらに、アメリカの格付け会社は、買収合意を受けて武田の格付けを最大2段階下げるとまで言っている。

知らない間に会社がなにかとんでもないことになっていると不安に思っている現役社員もいっぱいいるんです。だけど、内部から声を上げることはなかなか難しい。

だから、憚りながら、何も失うもののない私がお話しすることにしたのです。日本の製薬業界を支えてきたリーディングカンパニーの内部でいま何が起きているのかを、多くの方に知っていただきたいのです」

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