『宇宙戦艦ティラミス』 第十二話「MAN’S WORLD」

MAN’S WORLD

 数々の修羅場をくぐり抜けて来たスバルの専用機・デュランダルは、ここに来て激しく疲労の色を見せていました……。

「やっぱりあかんねぇ。途中で止まってしまうなぁ」

 敏腕メカニックのホンダ・シゲルコ中尉(岐阜出身)も苦戦するほどの不調です。前回、宇宙チワワに引きちぎられた右腕も直ってません。

 

 

 核融合エンジンの不調にお手上げなシゲコさん、「開発者に直接聞きたいくらいやわ」と弱音を漏らしました。

 その声を聞いたスバルは、思い出すのです。


(父さん、か……)


 デュランダルの開発者、ソウイチロウ・イチノセを……。

 

 

 

 


 建造中のデュランダル、そのコックピットで遊んでいる二人の少年。

 ビックリマンシールっぽいシール「デュランダル“神”騎士」をモニターに貼り付け得意な顔を見せるのは、幼少期のスバルくんです。
 咎めるのは、同じく幼い兄、イスズ兄さん。

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

「勝手にシール貼るなよ。父さんに怒られるぞ」
「大丈夫だよ。父さんは僕らよりも研究に夢中なんだから……」

 

「いつまでもグランマースの叡智を待っていてはダメだ……。我々は越えていかなければならない……!」

 険しい表情で研究を続ける、ジャックバウアー声な父を、誇らしげに、そして寂しげに見つめる兄弟……。

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

 

「何してんだよっ、これ超レアで手に入りにくいやつだぞっ?」

 イスズ兄ちゃん、スバルの貼ったシールがレア物であったことに気付いてご立腹。「スバルは絶対に俺のを勝手に使うんだから……」と呟いて、モニターのシールを剥がそうと頑張ってます。

 イスズさん、この頃から「絶対」が口癖なんですね。


 モニターをかりかり引っかいているうちに、デュランダルの片腕が上がり、親父さんが九死に一生を得ました。それはもうサラリと得ました。

 

 

「スバル、もう余計な事すんな。お前はいつも絶対しなくて良いことをして、俺や父さんを困らせる……、」


 がちゃ。


 コックピットで足を組んでいたイスズ兄さん、空中へ飛び出しました。スバルがしなくて良いことをしたからです。好奇心って怖いね。

 緊急脱出装置で宙を舞ったイスズさんは、運よくお父さんに受け止められました。

 

 

 そんなスバルは、

「コックピットって……、すごい……!!」

 コックピットが持つ無限の可能性に、瞳を煌かせていました。
 反省しろ。

 

 

 

 思えば、デュランダルと共に成長してきた人生。

(俺とデュランダルなら……、どんな相手だって負けない……!)

 父が作り、息子に受け継がれた白い機体、デュランダル。
 しかし今、その専用機は満身創痍であり……、

 

 

 

 

 ティラミス艦内が、衝撃に揺れました。

「なんやねんっ!?」
「例の黒い機体の襲撃ですぅ!」
「くそっ!」

 悪態をつき、デュランダルの操縦桿を握るスバル。
 しかし、デュランダルの出撃はシゲコさんからストップがかけられました。戦闘中に停止する恐れがあるためです。

 

 


「ちょっと付いて来や!」

 デュランダルの代わりに紹介された代替機は、

 

(こんな俺っぽくないヤツに乗れってか……!?)


 ダサい。

 主人公はまず乗らないレベルでダサい。


 デュランダルが「フリーダムガンダム」だとすると、「70年代ロボットアニメの雑魚」くらいの落差があります。よく知らんけども。


 ……いや、軽くググったところ、おそらくもっとダサい。
(70年代ロボアニメ、面白そうだな……)

 

 

 

 とにかく、機体上部のコックピットへ向かうスバル。
 操縦席を覆うガラスを叩き、

「こんなの一発でも喰らったらアウトでしょっ?」
「ヘリコプターにも使ってる強化ガラスやから大丈夫やてー!」
「ヘリコプターって……。本気で言ってんのか……?」

 

 そんな強化ガラスを開けると、

臭ッ!? 汗臭いっていうか……、古い油が混じったような……。父さんの電気シェーバーの蓋を開けた時みたいな……)

 


 しばらく口呼吸することにして、渋々乗り込みます。

(前乗ってたヤツのセンス凄いな……)

 目の前に垂れる、なんかあのホラ「ネイティブっぽい円に羽根が三本ぶら下がった飾り」を目にして、前の操縦者に思いを馳せるスバル。

 

 


 何気なく握った操縦桿は、


 ねちゃっ。


(ッ!? レバーがねちゃねちゃする……! 前乗ってた奴なんなんだ……ッ!?)

 

 我慢の限界を迎えたスバルはコックピットを開け、

「シゲコさんっ、流石にこれはキツイです! デュランダルの中にあるウェットティッシュと消臭スプレーを取って、」


「優等生ッ!」
「?」

「馬鹿野郎ッ!!」

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

「ここは男の世界だ! そんなもんいちいち持ち込むんじゃねぇ!!」

 先輩であり中尉でもあるヴォルガー・ハマーさんに叱られれば、やるしかありません。

「黒い奴は俺が相手する。テメーはこの機体で援護しろ。いいな」

 

 

(分かりましたよ、やればいいんでしょう……ッ!!)

 気合を入れて、マニュアルに目を通すスバル。


(多少変な臭いがしようが、起動方法が紐を引っ張る式のやつであろうとッ!!)

 気合を入れて、紐を引っ張る式のエンジンを駆動させるスバル。


(俺は男だからッ!!)


 愛とぉ~、友ぅ~情と~♪


(ッ!? なんでステレオがフルボリュームのままなんだッ!! 前乗ってた奴バカかッ!?)


 次々と降りかかる困難を乗り越え、必至に出撃準備を進めるスバル。君は男だ。

 

 

 


 ハマーさんは「黒いデュランダル」と交戦中ですが、流石に一対一では厳しい様子。
 ティラミスのハッチから狙える位置におびき寄せ、スバルがD-フォトンランチャーで狙撃する作戦に出ます。

(とは言ったものの……、こいつ両手がドリルだからD-フォトンランチャーを担げない……)

 このロボ、どこまでもチープなデザインです。

 


 D-フォトンランチャーにドリルをねじ込んでの強行作戦、無理にでも目標を達成する構えのスバル。
 ハッチから銃を構え、黒いデュランダルへ向けました。

「ターゲットスコープ……、こいつかッ!」

 目元に添えるタイプの古めかしいスコープを見つけ、(確実に当てて見せる……)と静かな闘志を燃やします。

 

 いいぞスバル、今回なんか主人公っぽいぞ。

 機体はダメダメだけど関係ない、漢を見せろスバル・イチノセッ!!

 

 


「くっせぇーーッ!! このターゲットスコープくっせぇーーーーッ!!」


 リタイヤァ!!

 スコープのあまりの臭さに打ちのめされました。

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〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉

 

「これ(スコープ)を皿代わりにしてたこわさ食ってた形跡がッ!?」

 


「なんなんだ前乗ってた奴ッ!!」

 


「前乗ってた奴ぅーーーーッ!!」

 

 

 

 宇宙歴157年。

 ヴォルガー・ハマー中尉は、後から駆けつけてきたリージュ中尉の援護で、事なきを得ました……。

 

 

 

 

まとめ。

 うん、スバルはやっぱり主人公です。

『宇宙戦艦ティラミス』の主人公です。


 やはり「世界観」という運命からは逃れられませんね……。


 そして、次回は遂に最終回。

 この調子で、イスズ兄ちゃんとの決着はつくのか……。