MAN’S WORLD
数々の修羅場をくぐり抜けて来たスバルの専用機・デュランダルは、ここに来て激しく疲労の色を見せていました……。
「やっぱりあかんねぇ。途中で止まってしまうなぁ」
敏腕メカニックのホンダ・シゲルコ中尉(岐阜出身)も苦戦するほどの不調です。前回、宇宙チワワに引きちぎられた右腕も直ってません。
核融合エンジンの不調にお手上げなシゲコさん、「開発者に直接聞きたいくらいやわ」と弱音を漏らしました。
その声を聞いたスバルは、思い出すのです。
(父さん、か……)
デュランダルの開発者、ソウイチロウ・イチノセを……。
建造中のデュランダル、そのコックピットで遊んでいる二人の少年。
ビックリマンシールっぽいシール「デュランダル“神”騎士」をモニターに貼り付け得意な顔を見せるのは、幼少期のスバルくんです。
咎めるのは、同じく幼い兄、イスズ兄さん。
〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉
「勝手にシール貼るなよ。父さんに怒られるぞ」
「大丈夫だよ。父さんは僕らよりも研究に夢中なんだから……」
「いつまでもグランマースの叡智を待っていてはダメだ……。我々は越えていかなければならない……!」
険しい表情で研究を続ける、ジャックバウアー声な父を、誇らしげに、そして寂しげに見つめる兄弟……。
〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉
「何してんだよっ、これ超レアで手に入りにくいやつだぞっ?」
イスズ兄ちゃん、スバルの貼ったシールがレア物であったことに気付いてご立腹。「スバルは絶対に俺のを勝手に使うんだから……」と呟いて、モニターのシールを剥がそうと頑張ってます。
イスズさん、この頃から「絶対」が口癖なんですね。
モニターをかりかり引っかいているうちに、デュランダルの片腕が上がり、親父さんが九死に一生を得ました。それはもうサラリと得ました。
「スバル、もう余計な事すんな。お前はいつも絶対しなくて良いことをして、俺や父さんを困らせる……、」
がちゃ。
コックピットで足を組んでいたイスズ兄さん、空中へ飛び出しました。スバルがしなくて良いことをしたからです。好奇心って怖いね。
緊急脱出装置で宙を舞ったイスズさんは、運よくお父さんに受け止められました。
そんなスバルは、
「コックピットって……、すごい……!!」
コックピットが持つ無限の可能性に、瞳を煌かせていました。
反省しろ。
思えば、デュランダルと共に成長してきた人生。
(俺とデュランダルなら……、どんな相手だって負けない……!)
父が作り、息子に受け継がれた白い機体、デュランダル。
しかし今、その専用機は満身創痍であり……、
ティラミス艦内が、衝撃に揺れました。
「なんやねんっ!?」
「例の黒い機体の襲撃ですぅ!」
「くそっ!」
悪態をつき、デュランダルの操縦桿を握るスバル。
しかし、デュランダルの出撃はシゲコさんからストップがかけられました。戦闘中に停止する恐れがあるためです。
「ちょっと付いて来や!」
デュランダルの代わりに紹介された代替機は、
(こんな俺っぽくないヤツに乗れってか……!?)
ダサい。
主人公はまず乗らないレベルでダサい。
デュランダルが「フリーダムガンダム」だとすると、「70年代ロボットアニメの雑魚」くらいの落差があります。よく知らんけども。
……いや、軽くググったところ、おそらくもっとダサい。
(70年代ロボアニメ、面白そうだな……)
とにかく、機体上部のコックピットへ向かうスバル。
操縦席を覆うガラスを叩き、
「こんなの一発でも喰らったらアウトでしょっ?」
「ヘリコプターにも使ってる強化ガラスやから大丈夫やてー!」
「ヘリコプターって……。本気で言ってんのか……?」
そんな強化ガラスを開けると、
(臭ッ!? 汗臭いっていうか……、古い油が混じったような……。父さんの電気シェーバーの蓋を開けた時みたいな……)
しばらく口呼吸することにして、渋々乗り込みます。
(前乗ってたヤツのセンス凄いな……)
目の前に垂れる、なんかあのホラ「ネイティブっぽい円に羽根が三本ぶら下がった飾り」を目にして、前の操縦者に思いを馳せるスバル。
何気なく握った操縦桿は、
ねちゃっ。
(ッ!? レバーがねちゃねちゃする……! 前乗ってた奴なんなんだ……ッ!?)
我慢の限界を迎えたスバルはコックピットを開け、
「シゲコさんっ、流石にこれはキツイです! デュランダルの中にあるウェットティッシュと消臭スプレーを取って、」
「優等生ッ!」
「?」
「馬鹿野郎ッ!!」
〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉
「ここは男の世界だ! そんなもんいちいち持ち込むんじゃねぇ!!」
先輩であり中尉でもあるヴォルガー・ハマーさんに叱られれば、やるしかありません。
「黒い奴は俺が相手する。テメーはこの機体で援護しろ。いいな」
(分かりましたよ、やればいいんでしょう……ッ!!)
気合を入れて、マニュアルに目を通すスバル。
(多少変な臭いがしようが、起動方法が紐を引っ張る式のやつであろうとッ!!)
気合を入れて、紐を引っ張る式のエンジンを駆動させるスバル。
(俺は男だからッ!!)
愛とぉ~、友ぅ~情と~♪
(ッ!? なんでステレオがフルボリュームのままなんだッ!! 前乗ってた奴バカかッ!?)
次々と降りかかる困難を乗り越え、必至に出撃準備を進めるスバル。君は男だ。
ハマーさんは「黒いデュランダル」と交戦中ですが、流石に一対一では厳しい様子。
ティラミスのハッチから狙える位置におびき寄せ、スバルがD-フォトンランチャーで狙撃する作戦に出ます。
(とは言ったものの……、こいつ両手がドリルだからD-フォトンランチャーを担げない……)
このロボ、どこまでもチープなデザインです。
D-フォトンランチャーにドリルをねじ込んでの強行作戦、無理にでも目標を達成する構えのスバル。
ハッチから銃を構え、黒いデュランダルへ向けました。
「ターゲットスコープ……、こいつかッ!」
目元に添えるタイプの古めかしいスコープを見つけ、(確実に当てて見せる……)と静かな闘志を燃やします。
いいぞスバル、今回なんか主人公っぽいぞ。
機体はダメダメだけど関係ない、漢を見せろスバル・イチノセッ!!
「くっせぇーーッ!! このターゲットスコープくっせぇーーーーッ!!」
リタイヤァ!!
スコープのあまりの臭さに打ちのめされました。
〈アニメ『宇宙戦艦ティラミス』公式サイトより引用 © 宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会〉
「これ(スコープ)を皿代わりにしてたこわさ食ってた形跡がッ!?」
「なんなんだ前乗ってた奴ッ!!」
「前乗ってた奴ぅーーーーッ!!」
宇宙歴157年。
ヴォルガー・ハマー中尉は、後から駆けつけてきたリージュ中尉の援護で、事なきを得ました……。
まとめ。
うん、スバルはやっぱり主人公です。
『宇宙戦艦ティラミス』の主人公です。
やはり「世界観」という運命からは逃れられませんね……。
そして、次回は遂に最終回。
この調子で、イスズ兄ちゃんとの決着はつくのか……。