ワールドカップ、盛り上がってますか?
ワールドカップといえば、平和の祭典。ロシアで始まった2018年ワールドカップは、日本でも盛り上がりを見せている。それでは2014年以降、そのロシアとの間で領土を巡る戦争が続き死者まで出ているウクライナの人たちは、ロシアW杯をどう見ているのか。
BuzzFeed Newsは、ウクライナの首都キエフ中心部にある独立広場(マイダン)周辺で、市民に聞いた。
大学生のダニエルさん(19)
サッカーをプレイするのは好きだが、ワールドカップは「見る時間がないから、見ない」という。
ボードにウクライナ語の「ノー」にあたる「(Нi)ニー」と書いてくれた。
会社員のアンドレイさん(33)
キエフでは5月26日、欧州チャンピオンズリーグ決勝のレアル・マドリード対リバプール戦が行われた。
アンドレイさんはサッカーファン。レアルが3−1でリバプールを下した試合にスタジアムまでは行かなかったものの、テレビでレアルを応援しつつ見入ったという。
では、W杯は?
「忙しくて観戦する時間がないよ」といい、英語で「NO」と書いた。
仕事で忙しいんですか?
「うん。仕事とか、いろいろあってね」
アンドレイさんの友人、ニコライさん(35)
チャンピオンズリーグ決勝ではアンドレイさんと一緒に試合を見つつもリバプールを応援したというニコライさんも「なかなか見る時間がなくて、W杯は一試合も見ていない」。
ニコライさんが書いてくれたのも、ロシア語で「ノー」を意味する「ニエット」だった。
なお、1991年に独立するまで長くロシア(旧ソ連)による支配が続いたウクライナでは、ロシア語を母語とする人や、ウクライナ語とロシア語両方を話す人も多い。
サッカーの好きな人に尋ねても、チャンピオンズリーグは見てもW杯は見ないという答えが続く。どこか不自然だ。
大学生のミシャさん(18)
ミシャさんは「国と国との関係に問題があるし、僕も忙しい。だからW杯は試合は見ない。スコアだけチェックしている」と語った。
「国と国の関係とは、ロシアとウクライナのこと?」と尋ねると「政治の話は止めよう。ウクライナは今回、W杯に出場していないけど、僕はいつもウクライナを応援している」と話し、ボードに「ウクライナ♡」と書いた。
なお、ウクライナは2006年のドイツW杯に初出場し、ACミランでイタリア得点王となったエースFWシェフチェンコらの活躍でベスト8入りしている。
シェフチェンコを生んだキエフの地元クラブ、ディナモ・キエフはUEFAクラブランキングで23位を占める、欧州でも有数の強豪だ。なお、22位はチャンピオンズリーグ準優勝のリバプールだ。
NGO職員のアレクセイさん(34)
サッカーが本来、大人気のはずの国で、なぜ多くの人々がW杯については口ごもるのか。
戸惑っていると、NGO職員のアレクセイさん(34)が説明してくれた。
アレクセイさんは東部の工業都市ドネツク出身。故郷は2014年、親ロシア派民兵に占拠された。その後、親ロシア派がドネツク周辺のウクライナからの独立を宣言したため、身の危険を感じてキエフに逃れたという。
「私はもともと、サッカーをテレビで観戦する方ではない。それに加え、今回のロシアW杯は問題がある。これはスポーツの祭典というよりも、プーチン大統領が自らの支持者に、ロシアの強さと偉大さを訴えるための政治的なイベントだ。だから見る気がしない」
アレクセイさんや地元での報道によると、ウクライナではW杯開幕前日にスポーツ担当相が、ロシアW杯に参加した各国にボイコットを呼びかける書簡を送った。
国民に対しても、W杯観戦を目的としたロシア渡航を中止するよう求めるなど、ボイコットの空気が広がっているという。
100人が命を落とした広場
マイダンは2013ー14年、親ロシア政権が倒れるきっかけとなった大規模デモが起きた場所だ。周囲には、警察などに撃たれて命を落とした人々約100人の遺影が飾られている。
大勢の人々が広場を埋め尽くした2013年12月1日のデモ。
2014年2月に入ると、治安部隊の発砲などで流血の事態に発展。混乱が広がる中で、親ロシア派の政権が退陣した。
続いた戦争
これ以降、東部やクリミア半島で、親ロシア派民兵(実態は正体を隠したロシア軍やロシアの工作員とみられる)が入り込んで、ウクライナからの分離工作を始めた。
この写真は東部の主要都市ドネツクで撮影された。NGO職員アレクセイさんの出身地だ。親ロシア派民兵がウクライナの国旗を引き裂いている。
クリミア半島でロシアが編入を宣言したほか、ドネツクなどウクライナ東部では親ロシア派がウクライナからの分離を宣言。今も戦闘が続いている。
国連によると、W杯の開幕後も親ロシア派支配地域からの砲撃や銃撃などが続いているという。
クリロナのハットトリック
ロシアに対する反感と、自国に対するナショナリズムが高まるなか、サッカー好きの人たちが、人前でW杯を見ていると公言できない空気ができているのだ。
ただし、全員が「見ない」と答えたわけではない。
恋人と談笑していたアレクセイさん(25)は「ポルトガルを応援する」と言った。
「ポルトガルとスペインの試合を見ただろう?クリスチャーノ・ロナウドのハットトリックはすごかった。あんな選手は、ほかにはいないよ」
さて、緊迫する空気の中でブラジル人は…
渋い顔をしてW杯を語る人が目立つマイダン広場を、ブラジルのユニフォームや国旗を身にまとった3人が足早に歩いていた。
3人はブラジル出身。ブラジル対スイスの試合を、友人らと集まって見るという。
ロレインさん(22)は「ウクライナ人の友人が、W杯はボイコットすると言っていた。ぜんぜん理解できない。政治家にサッカーを見ていいとか、見てはいけないとか決める権利があるわけがない。私たちはサッカー無しでは生きていけない」。
3人はキリスト教系のボランティア団体に所属し、ウクライナに派遣されているという。ウクライナでどんなボランティアをしてるんですか、と尋ねようとしたら「ごめん、試合におくれちゃう。じゃあね」と走っていった。
ブラジルには、世界のどこにいても、何が起きても、やっぱりサッカーが好きだという人が、たくさんいるようです。
BuzzFeed Newsは日本ユニセフ協会が主催するプレスツアーに加わり、ウクライナを取材している。ツアーには日本メディア5社が参加している。ユニセフは日程の調整などをしているが、原稿の内容には関与していない。
キエフでみなさんに聞いてみました
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Yoshihiro Kandoに連絡する メールアドレス:yoshihiro.kando@buzzfeed.com.
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