競泳の最終日に行われるメドレーリレーは、自分たち、すなわち日本というチームの強さをアピールしたいという思い入れの強いレースだ。その五輪を有終の美、いい形で締めくくりたいという思いを選手は胸に秘めて泳ぐ。
■メダル狙う意気込み、若手に伝わった
今回の男子メドレーチームは実力通りのレースができればメダルに手も届いたと思う。ただ少し各自が自己ベストで泳ぎ切ることができなかった。2004年アテネ五輪の銅メダル以来、08年北京五輪も「銅」、12年ロンドン五輪で「銀」と表彰台に立ち続けてきた種目であり、途絶えさせてはいけないとの重圧もあっただろう。
それでも第2泳者の小関也朱篤選手は隣の世界記録保持者、ピーティー選手(英国)に食らいつくべく積極的にいけていたし、4人それぞれがメダルを狙うという意気込みを込めていた。それは見る側にいる日本の若いスイマーに伝わるものだったと思うし、決してマイナスなレースではなかったのではないか。
ただし3分31秒97というタイムはロンドン(3分31秒26)や北京(3分31秒18)と比べて大幅に遅いわけではないけれど、米国チームは背泳ぎのマーフィー選手が第1泳者で世界記録を達成。高速水着時代の09年に記録された51秒94をついに破った。英国の平泳ぎのピーティー選手も56秒59(世界記録は自身が第2日に出した57秒13)というスピードでバトンをつないでいる。
泳ぎ終えた小関選手が「世界のレベルが上がってきている」と語っていた通りで、この自覚をしっかり持ち、意識を変えていくくらいの覚悟でいないと、東京五輪ではさらに水をあけられかねない。
大会全体をみれば、オーストラリアが男女ともに元気がなかった。メダルを狙えたはずの種目で取り損ねていた。大会に向けての調整が合わなかったのだろうか。逆にカナダはチームとしていい結果を残している。大会直前の調整も含め、この五輪前の数カ月の練習でうまくメダル奪取へベストのコンディションに合わせてきた印象がある。
池江璃花子選手が7種目に挑んだことが注目されたが、こうして複数種目をこなすことは海外では珍しくはない。米国やオーストラリアの小中学生の大会では7~8種目を平気で泳いでいる光景を目にする。日本のレースだと選手が1日1種目、あるいは2種目ずつ「集中を高めて……」という雰囲気だが、日本とは違って水着を替えることもなく、当たり前のように、小さい頃から次々とレースを重ねていく。
■タフさ育む環境、メンタルにも影響
その状況が普通である環境にいると、選手のメンタルや考え方というものも変わってくると思う。1つのレースに対して「これがダメなら……」と感じがちになるのとは対照的に、「(ほかもあることだし)これがダメでも」と思えてくるように。海外の選手のインタビューからそんな空気を読み取れることもある。良しあしはともかく、たくさんの種目をこなす環境で育つタフさがあるのだろう。
女子100メートル自由形で優勝した16歳のオレクシアク(カナダ)は、100メートルバタフライでも銀メダルだ。若いスイマー、新しい力の頑張りが目立ったリオ五輪でもあった。米国に目を向けてもフェルプス選手がラストレースを迎える一方で、19歳の新鋭が活躍していた。新旧交代の予感とともに、続く次の世代がしっかりと新たな時代を作ろうとしているようにも思える。
そんな兆し、世界の流れを、池江選手たちはリオのプールでしかと体感したはずで、同世代の中高生も同じく刺激を受けたことだろう。その自覚が力へと変わり、4年後の東京五輪で爆発することを期待したい。
(シドニー五輪100メートル背泳ぎ銀メダリスト)
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選手が高みを目指そうとすれば、努力が結果に裏切られる悲しさも時として味わうことになる。そうやって苦しんだことのあるスイマーなら、誰もがあの金藤理絵選手のレースに心を揺さぶられたのではないだろうか。
初日から「ダブル表彰台」に日本新記録のラッシュ。私が思った以上の競泳第1日になった。
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