【ネタバレ】『この世界の片隅に』(漫画)の伏線解説! | イラストで綴る日常

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こんにちは、イトウエルマです。

 

話題の作品をようやく読みました。

映画が大ヒット、ロングランを記録する

『この世界の片隅に』です。

上 中 下巻からなります。

 

読んで、また手に取って読み返し、

そして何度も読み直すはめに!

 

『この世界の片隅に』がそれだけ力のあるお話であり、

感想を述べずにはいられない作品であることを

まず申し上げたい。

 

そして、こちら

超ネタバレな内容になっております。

このブログはお話の筋の分からない人にはまったく意味のないものであり、

これから読もうという人には迷惑でしかない内容になっておりますので

どうか、お気をつけ下さいませ。

 

それと、『この世界の片隅に』はおそらく

読む人によって解釈が変わって来るものだと思います。

こちらはイトウの独断と偏見に満ちた、

一方的な考えの元に書かれており、

 

あんた!そりゃ違うだろ!!!

 

と思われる向きもおありかと思いますが

多様な考え方のできる作品である『この世界の片隅に』の

奥深さのひとつだと思ってご覧下さいませ。

 

さて、それでは本題に。

 

『この世界の片隅に』は、

すずという絵を描くのが好きで気だてが良く働き者で、

ぼーっとしたおっちょこちょいの女性が主人公。

すずは広島の中心部から少し離れた三角州にある

江波という町で生まれました。

 

話の最初の方は説明のつかない(それに対しての説明もない)
オチもはっきりしない摩訶不思議な出来事ばかりが出てきます。

例えば、幼少の頃に怪獣のような人さらいにさらわれそうになったり

(このときに将来のダンナさんになる周作に出会う)

おばあちゃんの家の天井から女の子が降りて来たり
(座敷童の話か!?……と誰もが思うようなお話)
など。

実は!この冒頭に出て来るふたつの不思議話が
この物語全体のキーにもなっているのです。

 

伏線解説 その1

 

それではまず座敷童の女の子のお話から。

座敷童の正体

これは(遊女の)リンです。

すずが広島から呉に嫁いで初めてできたお友達、
それがリン。
二葉館という遊郭の前で初めてリンに会った(とすずが思い込んでいる)ときに着ていた
ワンピースの柄にリンが反応、すずの出身地を言い当てました。

 

リン:あんたもよそからきんさったんじゃろ、広島?

 

こちらはリンに会ったときのすずです。

 

*マンガはモノクロですが、分かりやすくするために

敢えて色をつけてます。

 

この柄の着物が、座敷童のお話にも出て来てました。

 

おばあちゃんの家(草津という広島の西の方の町)

すずとお兄ちゃん、そして妹の3人だけで行くことになったある夏の日。

兄弟喧嘩をしつつ泥だらけになっておばあちゃんの家に到着すると

おばあちゃんは毎年そうであるように新しい着物を仕立ててくれていたので

それを着て親戚らとお墓参りに行きます。

そしてすいかを食べた後、昼寝をしていたときに

 

「こどもにはこどもの世知辛い世界があること」

 

を知る現場に居合わせるのです。

(つまりすずは自分が見たものが座敷童ではないことを分かっている)

昼寝の最中にたまたま目が覚めたすずが見たのは、

天井から降りて来た貧しい身なりの女の子。

兄弟が食べ残したすいかの残骸をさらに歯でしごく様にして食べだした子、

それが、かつてのリンです。

物語の終わり近くにこれらのお話が結びつきます。

それは

 

「どこでなにをしているんだろう…」

 

と、すずが思いを馳せる「右手」による解説によるもの。

(すずはその後空襲の際に時限爆弾で右手を失い、絵を描くことができなくなっている)

 

すずの与り知らぬところでこの右手は我々読者のために、

すずの知り得ないこのお話のサイドストーリーを

イラストや漫画で、クレヨンのタッチで描いてくれているのです。
 

すずの失われた右手によると、

貧しい家庭で育ったリンは

子供のころ子守り役としてお金持ちの家に売られます。

しかし、そこでの暮らしが我慢できずにその家を飛び出し、

夜も駆け通しで辿り着いた、

すずのおばあちゃんの家の屋根裏に忍び込みます。

おそらく、おばあちゃんが自分の孫くらいでしかない

幼い女の子を不憫に思って家族に内緒で匿っていたのでしょう。

親戚みんなが家に戻り、おばあちゃんがひとりっきりになると、

すずの着物を作ったときに余った端切れを使ってボロボロの服を繕う

おばあちゃんと傍らに女の子のいるシーン(すずの置いて行った着物を着ている)が、

座敷童のお話の最後辺りに唐突にでてきています。

 

すずが女の子にあげた着物は失われた右手解説の時にも登場します。

おばあちゃんの家を出た幼いリンは

(こっそりしのびこんだ)汽車に乗って呉に行きます。

町中で遊郭の女将さんに出会い、

連れて行ってもらったカフェーで

アイスクリームを食べているときに着ているのが、

すずが置いて行ったのと同じ柄の着物。

(リンは人前で堂々と着て歩けるちゃんとした衣類を手に入れたのですね)

 

その後二葉館で小間使い的な仕事を始め、

後に客を取る様になるリン。

そうしてやってきた客の一人が

後に、すずのダンナになる周作。

(おそらく女性は初めてだった)周作は

お色気ムンムンのリンを

お嫁さんにしたいと真剣に思うほどに入れあげます。

 

ふとしたことで周作とリンの間にあった過去に気づいて、

それでも周作のことももリンのことも嫌いになれず

(むしろどちらも大切に思っている)

一人悩むすずでありました。

 

さて、この複雑な関係の当事者のひとりの

リンの気持ちはどんなものだったのでしょう。

それを示すコマがあります。

 

まず、すずの名前を聞いて

 

リン:北條(周作と同じ名字)……(沈黙) ……すず!さんじゃね

 

と、すずがびっくりするほどの大声を出す。

これこそが、リンがすずのおばあちゃんの家で出会った女の子の着ていた着物の柄と、

かつて草津の家で耳にした思いやりのある女の子の名前が結びつき、

あの優しい女の子が目の前にいるすずであることに気づいた瞬間です。

 

その後、すずのダンナがかつての恋人であることに気づきつつも

リンの態度は変わらず。

すずと別れた直後、すずが描いてくれたすいかやアイスクリームの絵を

小さな貴重品袋に仕舞い、しっかりと握りしめているときの表情が

とても恋のライバルに対してとは思えないほどに優しいのでした!

 

リンの表情と、手にしている(肌身離さず持ち歩いている)小物入れに注目!

 

ずばり、リンの中でのウエイトは

周作<すず

でしょう。

 

家族が討ち入りにやってくるほどに

男性を自分に夢中にさせて自分のところに通わせるのがリンのお仕事。

お偉いさんのご指名も多そうな(おそらく人気ものの)リンにとって

周作のようなウブな男性を落とすのなんて朝飯前。

そんなリンが周作の前にも後にも他の男性に本気で言い寄られることが

まったく無いなんてことはまず、ありえない。

よーするに男性との出会いしかないのがリンの日常で、

いちいちひとつの恋愛で悩んでいるひま何ぞないのでありました。

リンはまだまだ若い。何よりこれからどんどん美しくなるお年頃。

ますますモテに磨きがかかることでしょう。

ですから周作に未練を持つ必要はないし、そんな様子が見て取れます。

 

かたやリンにとってすずは、貧しくて追われる身の上だった頃の自分に優しさをくれた人。

そのとき食べたすいかの味が、彼女の人生の中の一番の食べ物であることが

前後のリンの様子からも伺い知れます。


伏線解説 その2

 

さて、すずにも淡い恋心を抱く相手がおりました。

 

幼なじみの水原哲くんです。

 

哲は生きているのか、死んでいるのか!?

 

はっきり申し上げますと、死んでいるでしょう。

サギのメタファーがそれを示しています。

 

サギは江波に居て、呉にはいない鳥です。

そして、この鳥の羽と思しきものを

呉に寄港した軍艦を降りた水兵の哲が

すずの元を訪ねてお土産にくれたことがありました。

 

つまりサギは哲を表しています。

サギ=哲(幼いころの思い出の人。プラトニックな愛)

だとして、読み進めてみましょう。

 

戦争は激しさを増し、軍港である呉に敵機が飛んでくる様になり、空襲が増え

(そしてすずは義理の姪っ子晴美さんと自分の右手を同時に失う)

その後呉で海戦が起こったある日、

なぜかサギがすずの家の庭先にやってきた!

 

空襲警報が鳴り続ける中、サギを追いかけて家を飛び出したすずは、

敵機の機銃掃射に遭遇します。

しかし右手と晴美さんを失って生きる楽しみと自分の居場所を失い

死ぬ事しか考えていなかったすずは逃げようともしない。

そのとき、そこをたまたま通りかかった周作がすずを側溝に引き込んで助けます。

その際に手を離れたバッグの中身が散らばって哲からもらった羽も飛び出した!

 

(もらった羽をバッグに入れて持ち歩くくらいに

哲への未練があったんだろうなあ〜。

笑って別れる哲のことを後に思い出しつつ

「うちは未だに苦いよ」

とつぶやいてましたね、前に)

 

哲の羽が機銃掃射によって無残な姿になるのを見ながら

この日は呉中の軍艦が応戦していることを周作から聞かされて、

サギ(哲がすずに別れの挨拶にきた)と羽(哲自身の命)から

哲の死を悟ったのだと思います。

 

すずの幼い頃の恋心を象徴するアイテムは他にもあります。

それはつばき。

子供の頃、哲の代わりに海の絵を描いたとき、そばに生えていたのがこの花で、

哲が集めてくれたこくば(焚き付け)にも添えられていました。

いつもはいじめっこの哲がすずへの気持ちを表した

甘酸っぱいシーンがここであり、

すずもまたつばきの花にうっとりして

お風呂の温度に気がまわらなくなるくらいに

哲に心惹かれていた様子が印象的でした。

 

学校を卒業後、おばあちゃん家で

のりを漉くお仕事を手伝うようになったすず。

おばあちゃんの家にいたすずに

いきなり(周作からの)縁談話が舞い込んで来るのですが

そのときおばあちゃんがこういう時のために用意したのだと

タンスから出してきたのがつばきの柄の友禅。

すずには哲と結婚する運命というのも、

可能性としてはあったのではないだろうか。

 

戦後、この友禅をすずは農家に持って行って

食料と物々交換するのですが、その帰り道で見かけたのが、

無傷で、以前の通り精悍なままの哲。

朽ち果てた青葉(哲が乗っていた軍艦)を笑顔で見つめている。

 

……ですが、おそらくその人物は幻なのだと思います。

戦争が終わった今、身寄りのいない呉に

哲がいるというのも説明がつかない。

お兄さんの遺志を継いで水兵になったくらいの人なので

日本を守るべく勇ましく闘って散って行ったのだろうと推測)

 

おそらくすずも、この人は哲の幻だと思っている。

 

そして、すずは心に軍艦青葉を、はねる波のウサギを、羽ばたくサギを

それを傍らで見つめる自分と晴美さんを

夕日の中ではっきりと思い描くのです。

 

生きる事に消極的だったすずが、

過去のいろんなものと決別して

哲の思う「普通に生きているすず」に戻れたことを

このシーンは示しています。

 

初めて(哲との約束通りに)

哲のことを、晴美さんのことを

笑顔で思い出せるようになった、

そんな瞬間だったのではないでしょうか。

 

つばき柄の友禅を手放したことで

ようやく哲から解放されたようにも見えますね。

 

だからといって、すずの周作への愛が

哲への気持ちに劣るものだったのかというと、

そうではありません。

周作をすずは深く愛していて、

だけど整理のつかない気持ちに対しても

正直に向き合っている。

そんな様子をこの漫画はきちんと伝えています。

 

さて、謎はまだ残されています。

 

伏線解説 その3

 

人さらいの正体です。

 

人さらいは本当にいたのか!?

 

幼少期に出て来て、お話の最後辺りに出てきた

あの野獣のような人さらいは、ずばり

お兄ちゃん(正確には鬼いちゃん)です。

 

それはすずが描きたいと思っていたけど

右手が無いがためにできないでいた、

それで代わりにすずの失われた右手が書いた

「鬼いちゃん冒険記」を読むと分かります。


つまり、この「鬼いちゃん冒険記」は
すずの考えたものではない、失われた右手だけが作り出した
もうひとつの世界であると考えられます。

(そうでなければいくらニブいすずでも

野獣を見て鬼いちゃんだと気づくはず)

 

子供時代は意地悪な鬼いちゃんでしたが、

野獣になり、時空を超えて

すずの運命の糸を幸せな方に

結びつけてくれた人になった、ということなのでしょうか。

(そうじゃなきゃ、今頃戦争未亡人になってましたよ、すずは)

 

しかし!?
鬼いちゃんが野獣になるなんて
そんなことあるんだろうか!???

現代社会に於いて、これはまったく現実的なお話ではないのですが
水木しげる先生の時代には妖怪が信じられていたように
戦前、戦後の日本には信じ難いことが
当たり前に信じられるような空気があったのではないかと
そんな気配が少しは残っていた昭和生まれの自分は思うのです。
何より、おとぎ話以上に非日常なのが戦争であることを
『この世界の片隅に』は教えてくれます。

 

それとも、

すずの縁談が舞い込んで来たのは

おにいちゃんが出兵中のときのこと。

家族がいくら手紙を出してもなしのつぶて、

そんな頃でした。

 

運命の糸が結び直されたのは

もしや英霊の仕業か!?

 

……という塩梅に、

 

このお話の解釈は無限に広がってゆくのでありました。


どんなことが起こってもおかしくない時代の、
平凡な人の平凡な暮らしに潜む
数奇さや不思議さがこの本の魅力であり、
一度読んだだけでは分からずに
何度も見返し、その度に発見をする……。

映画館に何度も通う人の気持ちが
漫画の『この世界の片隅に』を読んで
よくわかりました。

 

漫画の『この世界の片隅に』により

大きな感動に包まれている気分の自分、
映画には、もう少し気持ちを落ち着けてから行ってみます。

ひとまず立ちそばで休憩!

 

 

 

 

 

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