名古屋で鍛えた地下アイドルが東京で見る夢

メイド志望だった少女は闇を吹っ切り生きる

地下アイドルの世界で生きていく決意をした兎乃さんが「今がいちばん楽しい」と話す理由(写真:川本史織)
アイドル、女優、モデル、ミュージシャン、ダンサー、ライター、イラストレーター、漫画家――。日本最大の都市であり、多くの人とおカネが集まる東京には「表現者」の女の子がたくさん集まっています。彼女たちはいったい何を夢見て、どのように生計を立て、どんな部屋で暮らしているのでしょうか。女子部屋を撮り続ける川本史織の写真と、自らも地下アイドル兼ライター業で生計を立てている姫乃たまが記す、東京に暮らす「夢追い女子」のお宅訪問インタビュー第1回。

女の子の部屋に行く機会なんてほとんどないので、とりあえず駅前のコンビニでチョコレートと少し高いフルーツジュースを買いました。そわそわとビニール袋を握りながら、マンションのエントランスでインターホンを押します。

この記事は連載第1回です

玄関を開けてくれたのは、くったりとした部屋着姿が女の子らしい兎乃結衣(うの・ゆい)さん。チョコレートを受け取りながら輝かせた大きな丸い目と、ショートパンツから伸びた長い脚に思わず目が留まります。

ワンルームのテーブルの上にはゲームのリモコン。テレビ画面にはプレー中のゲームが止まったままになっていました。クローゼットの中にはコスプレとライブのための衣装。冷蔵庫に貼られた買い物のメモ。兎乃さんはこの部屋にひとりで暮らしています。

「ずっとソロで地下アイドルやってて、2018年の1月からユニットになったんです。美羽えりちゃんって相方なんですけど、えりちょもソロでやってて、くっついたんです。メイド喫茶で運命的な出会いを果たしたんですよ!」

兎乃さんは都内のメイド喫茶で働きながら、ライブ活動をしている地下アイドルです。以前は名古屋のメイド喫茶で店長もしていました。

東京に来たらメイドはやらないと決めていた兎乃さんですが、好きなコスプレイヤーが働いてるメイド喫茶を見つけ、そこで働くことに。初日に出会ったのが美羽さんでした。最初は誰とも仲良くする気がなかったのに、コスプレという共通項で意気投合しました。

「どうなりたいの?」と聞かれて衝撃を受けた

美羽さんと出会った時の兎乃さんは、名古屋から上京してきて、趣味でコスプレをしながら、時々メイド喫茶で働いて、月に一度だけライブをしている地下アイドルでした。しかしある日、美羽さんから「兎乃ちゃんはどうなりたいの?」と聞かれて衝撃を受けます。

「えりちょに、私は『芸能で食べていきたい』って言われて、すごいびっくりしました。私はそこまで考えてなくて、たまにライブして、みんなと楽しい時間を過ごせたらそれでいいと思ってたから、芸能で食べていきたいってすごい衝撃だったんです」

次ページ「今がいちばん楽しい」
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

  • NO NAME785ab4696e17
    「大好きな相方と地下アイドルの世界で生きていく兎乃さんのこれからの道が、今度は大人の都合で絶たれないようにと願いました。」は、読んで私も思いました。この方はしっかりしている、幸せにくらしてほしい。
    up0
    down0
    2018/6/21 17:41
  • NO NAME6da068367018
    しかしAKBを筆頭に”アイドル”という見える部分だけにだまされる典型例みたいに見えるのだが…。
    これで踏み誤ると性風俗に流れていくし、それもAV嬢ならまだマシのところまでいけるからなぁ。
    どうしたものだか。
    up0
    down0
    2018/6/21 17:36
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
社外取締役のお寒い実態<br>なり手不足と低い出席率

「1人でも社外取締役がいれば」という時代は終わり、「取締役の3分の1以上必要」という時代へ。上場企業全体では6000人以上も不足することに。出席率の低い95人の実名を公開。