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 Webサイト運営者がサイト訪問者の端末を無断で利用して仮想通貨を獲得する行為について、警察機関が一斉検挙に乗り出したことが議論を呼んでいる。

 警察庁は2018年6月14日、「仮想通貨を採掘するツール(マイニングツール)に関する注意喚起」と題する文書を同庁の公式サイトで公開。「閲覧者に対して明示せずにマイニングツールを設置した場合、犯罪になる可能性があります」との見解を公開した。Twitterアカウントでもこの文書を引用して注意を喚起した。

出所:ツイッター、警察庁
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 さらに神奈川県警や愛知県警、宮城県警など全国で10の県警が摘発を進め、同じ日までに計16人を検挙したことが、警察庁の集計で明らかになった。2017年末か2018年初めには各県警が捜査に着手していたようだ。主な容疑は「不正指令電磁的記録に関する罪」、いわゆるコンピュータウイルスの作成や保管、供用(多くの人が使えるようにする)などに関する罪である。

 一方、サイバー犯罪に詳しい識者からは「コンピュータに破壊的影響を与えるものでなく、ウイルス罪の要件を満たしてない」との意見も出ており見方が分かれている。

UNICEFは寄付の手段に採用

 検挙されたWebサイト運営者が使ったマイニングツールは複数あった模様だ。代表的なツールが2017年から注目を集めている「Coinhive(コインハイブ)」である。JavaScriptのコードをサイトに埋め込むと、サイト訪問者の端末のCPUを使って「Monero(モネロ)」と呼ぶ仮想通貨を採掘する。

 Coinhiveの開発チームはコードを自社サイトで広く公開し、Webサイト運営者に広告に変わる収益手段として使って欲しいと採用を呼び掛けている。採掘の成功で得た収益は、3割をCoinhiveの開発チームが得て、7割をWebサイト運営者に分配する。

 利用者に同意を得る形でCoinhiveを設置しているサイトもある。UNICEF(国際連合児童基金)のオーストラリア支部が開設しているサイト「The Hopepage(www.thehopepage.org)」は、Coinhiveを寄付の手段として採用した。

 サイトには特別なコンテンツはなく、このサイトに滞在することで仮想通貨の採掘を通じて寄付ができるという主旨を説明している。説明を確認したうえで、寄付のための採掘を始める場合はWeb画面上で「寄付を始める(Start Donating)」ボタンを押す。