アイスランドが初出場を果たしたFIFAワールドカップ ロシア大会の期間中、首都レイキャビクの広場や公園、パブなどに集まってチームを応援する熱心なファンの中に、意外な集団が見られるだろう。アイスランドを第二の故郷にするポーランド人だ。
「一般に、アイスランドにいる外国人にとってサッカーのようなスポーツが大切なのは、コミュニティに参加するきっかけなるからです」と話すのは、39歳のトマシュ・クイアトコウスキ氏だ。10年前からアイスランドで暮らしている。
クイアトコウスキ氏は、アイスランドに1万2000人近くいるポーランド移民の一人だ。アイスランドの人口はわずか35万170人で、ポーランド人は過去20年以上にわたってこの国最大の移民グループであり続けている。そのアイスランドが「史上最小国」として出場する2018 FIFAワールドカップでは、多くのポーランド人が、やはり今大会に出場する祖国のチームを応援しながら、アイスランドチームのことも同じくらい真剣に見守っている。
ポーランド人移民の多くは、経済的理由から、雇用機会を求めてこの国にやって来た。2006年には、アイスランド経済が急激に拡大しており、特に建設関係の仕事はいくらでもあった。アイスランドで働いて、お金を貯めてポーランドに戻るつもりの移民も、コミュニティーのなかでアイスランドのサッカーへの愛情を自然と育んでいった。(参考記事:「絶滅危惧種のナガスクジラ漁岐路に、アイスランド」)
生活の拠点として暮らしているうちに、その国に帰属意識を持つようになるとクイアトコウスキ氏は言う。「それにポーランド人とアイスランド人の間には、勇敢さや不屈の精神など、共通する価値観があります。アイスランドのナショナルチームは、この価値観を体現しているのです」(参考記事:「バイキング、その恐るべき戦法と強さの秘密」)
アイスランドを拠点にしているピョートル・ギーディク氏は、「Piłkarska Islandia」(フットボール・アイスランド)の設立者だ。これはアイスランドチームのファンクラブであり、この国のサッカーを愛するポーランド人のデジタルコミュニティでもある。ギーディク氏は2013年8月にクラブを立ち上げ、フェイスブックとツイッターに、メンバーが戦術について話し、愛を語り合うためのファンページを開設した。5年間でフェイスブックのページはフォロワーが5500人を超えるまでに成長した。その4分の3以上がポーランドから会話に参加している人たちで、実質的にはワルシャワが拠点だ。
アイスランドは、2016年のUEFA欧州選手権(Euro 2016)の予選ラウンドに、臆することない挑戦者として登場し、ポーランド人をさらに夢中にさせたとギーディク氏は語る。実際、アイスランドが予選を突破して欧州最大のサッカートーナメントへの出場を決めると、Piłkarska Islandiaのメンバーはチェコ共和国にまで応援に行った。さらにこの島国のチームはイングランドに2-1で勝利し、フランスとの準々決勝に進出。フランス戦には5-2で破れたものの、世界中のサッカーファンの尊敬と賞賛を集めた。
こうして、アイスランドに住むポーランド人に加えて、ポーランドに住む人の心もつかんだのだ。