「日本のデジタルメディアの先頭を行く日経新聞グループのサイトで、メディア論を展開してまいります」と銘打ってBPネットに元朝日新聞記者の田部康喜氏がコラム「メディアラボ――メディア激動の時代を考える」を寄稿されている。7月6日には、光栄にも「オリンパス報道を考える」と題して、FACTAと小生のことを論じていただいた。尊敬する「元」ジャーナリストが、企業広報に転じて立場を異にした場合、人間性がどこまで変わるかをみごとにご提示いただき、心より感謝申し上げます。
彼のプロフィールについては、「田部康喜公式サイト」があるのでそちらをご参照いただければ、朝日beエディターを辞めて2002年にソフトバンクの広報室にお入りになり、2009年に顧問に退いて、翌年、ソフトバンクや電通、毎日などの出資でビューンを創業されていることが分かります。
ソフトバンクでよほど良い待遇だったせいか、be編集長との軋轢や朝日社会部CIAに尻尾をつかまれたことなどはもうすっかりお忘れのようです。朝日にはまだ顔向けできないせいか、日経の子会社の電子版を使ってのまことに堂々たる論陣、いやはや立派なもの。爪の垢でも煎じて飲みたいほどです。
それにしても、「オリンパス報道を考える」というタイトルの割には、90年代の山一やら、私がかつて所属していた「選択」やらの話題に脱線が多いようで、要するに私もしくは「オリンパス症候群」を論じたいという魂胆がありありのようです。あの本をご購読いただき、虫眼鏡でのぞくように精読していただいたのは大変ありがたい。ブログで恐縮ですがお礼申し上げます。
それにしても、この暑いのにわざわざ九段の法務省出張所まで赴いて、弊社の法人登記をおとりになったとは、それこそ経済記者の鑑です。最近はその労すら惜しむ記者が多いのですが、田部氏は範を垂れてくれました。
ただ、これは公開されていますので、昨年の減資も弊社は何も隠しておりません。そこまでご覧になったのなら、弊社の全株がFACTAホールディングスの保有となり、決算期も3月に変更になったことも、登記のコピーを見ればお分かりのはずでしょう。
そこから先、エンジェルがどうのこうのと勝手な憶測をしておられますが、なんの裏付けもとっていませんね。ちょっと取材が甘いんじゃない? しかしながら、わが社の将来にご心配いただき、これまた身に余る光栄です。ご指導ご鞭撻、それにご支援のほどよろしくお願いします。
さて、小生の履歴を日経の記事検索でお調べになったようで、これまたご苦労様です。イトマンのスクープに私の署名がない? はい、その通りです。あれはいまや日経から蛇蝎のごとく嫌われているO記者のお手柄です。彼の本をいまだにお手本にしているとは、いやはや、見上げたお心がけです。あんまりあれを絶賛すると、日経にもSMBCにも嫌われますけどね。
90年代はチーム取材で、署名がないのが当たり前の時代です。小生も社説や「春秋」や連載企画やら署名原稿よりは無署名のほうが多いので、せっかく探しながら骨折り損です。それに「おれがおれが」の性格ではないので、「オリンパス症候群」では「幻」だけご紹介させていただき、これは抜いたとか品のないことは言えない性分ですので悪しからず。
どうも調査報道なんてえらそうなことを言うな、とおっしゃっていらっしゃるようで。ごもっとも。ただの報道です。だが、読売も朝日も日経も、ただの報道すらしていないから、わざわざ「調査」とつけなければいけないんですよ。ふつうの報道のほうは、これから「言いなり」報道とか、「ポチ」報道とかにしてくれますかな。紛らわしくっていけません。
しかし、ソフトバンク広報室長時代に弊誌が孫正義経営の批判記事を何度も載せた腹いせでしょうか。なぜこんなお気の毒な文章になったんでしょう?
ほんとは自分が「選択」編集長を受けていれば、こうはならなかったとおっしゃる。その通りです。「選択」元編集長なんて、自慢でもなんでもない、欲しければそんな過去なんてノシをつけて差しあげます。企業広報に魂を売ったほうがどれだけ楽だったかと、私だってときどき思います。「元」ジャーナリスト気取りで、BPネットにしゃしゃり出るご身分になれますからね。
これは「王子と乞食」の寓話ですか。田部氏はどっちでしょう? そんなにジャーナリストとみてもらえないのが悔しいなら、今からでも遅くはありません。BPネットなんかで物欲しそうな顔をしてないで、うちで記者をおやりなさい。大歓迎しますよ。なにせ大特ダネをどんどん書ける記者さんですから、孫ソフトバンクのドロドロの内情を書いてくださいな。そうすればもう、古巣の朝日経済部記者を恫喝して、後輩に陰口をたたかれることもなくなりますから。
以上。乱筆乱文お許しください。