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企業が求めるディープラーニング人材像
では、現場で活躍できるディープラーニング人材の人材像はどのようなものか。パネリストの間では、ディープラーニングの専門性に加えてビジネスセンスや他の専門領域の学習意欲を挙げる声が目立った。
佐藤氏は欲しい人材像について「深層学習などのAI技術がビジネスに与えるインパクト、つまり『どれくらい儲かるか』を切り出すコンサルティングができる人材」とした。「さらに欲を言えば、(コンサルティングで)自分が提案した内容を実際に深層学習のモデルとして落とし込める人材が一番欲しい」(佐藤氏)。これに加え「最新の英語論文を読みながら次の日に『こんな結果が出ました』とスピード感を持つ人材も必要」という。
ただ、そこまで突出した人材でなくても「大企業であれば、ディープラーニングを学びたがっている優秀な人材が必ずいる。こうした人材を再教育すればよい」(佐藤氏)とした。エヌビディア日本法人の井﨑氏も「ディープラーニング活用で一番重要なのは社内人材育成への投資」と語る。会社の業務時間外にディープラーニングの講座を自主的に受ける会社員が増えているというが「会社の本来業務として社員にディープラーニングを学ばせるべき。AI技術でどう収益を上げるかを考えた上で、大規模に投資した方が良い」(井﨑氏)。
では、ビジネスの経験に乏しい新卒の学生に求める素養は何か。製造業の立場からAI人材を採用する安川電機 開発研究所の関山友之氏は、採用したい学生について「ディープラーニング一辺倒でなく、数学や物理、機械や電機、など大学でしっかり基礎を勉強してきた人」を挙げる。「ディープラーニングについて言えば、カメラの調整や画像の前処理などを含め、システム全体の構築に取り組んだ経験があるのが望ましい。『この専門分野しか分からない』では製造業で通用しない」(関山氏)。
AI開発スタートアップABEJAの岡田陽介社長は、採用したい学生の必須条件として「ビジネスを学ぼうとする姿勢と、最低限の数学の素養やプログラミング能力、『これはやってはいけない』ことが分かる倫理観」と語った。「学生に(中途採用者のような)ビジネスセンスを求めるのは厳しい。ただビジネスに興味があるならセンスが育つ可能性はある」(岡田氏)。
東京大学の松尾氏は「ディープラーニングは非常にとっつきやすい。理系で線形代数や確率などを勉強したなら絶対できる。他の学問分野との融合もできる」として、専門分野に関わらず幅広く学生にディープラーニングを教えるべきと提言した。「インターネットが登場した当時、HTMLファイルを書けた人は真っ先に様々なことに挑戦できた。そうした人が、今のインターネット産業の中心にいる。ディープラーニングも同じだ」(松尾氏)と聴衆に呼びかけた。