自分がもし死んだら、家族がもし亡くなったら、そのパソコンやスマホのデータ、ネット銀行やSNSのようなオンラインサービスのデータなど、残されたデジタルデータはどうなってしまうのか? どんな備えをしておくべきなのか? そんな「デジタル終活」について、デジタル遺品研究会ルクシー代表理事の古田雄介氏が解説していく。

 「亡くなった旦那が仮想通貨をやっていたらしく、最近値上りしているので、調べて相続したい」(関東在住の女性、30代)

  データ復旧会社・デジタルデータソリューションに届く仮想通貨関連の相談はここ半年間でおよそ50件で、遺品事案に限らず顕著に増加しているという。内容は、ブロッグチェーンの秘密キー忘れや、リップルトレードのまま移行を忘れたことによるパスワード失念など様々だ。

 同じことを筆者が所属するデジタル遺品研究会ルクシーのメール相談でも感じている。国民生活センターと消費生活センターに届く仮想通貨絡みのトラブル相談も、2017年度には昨年度比3倍増の2666件となっており、世間の関心の高まりとリンクしているようだ。

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 では、仮想通貨を所持した人が亡くなった場合、どんなことが起こりうるのだろう?

 日本デジタル終活協会代表の伊勢田篤史弁護士は「仮想通貨は、デジタル遺品のなかでいま一番危ない存在かもしれません」と警鐘を鳴らす。

 「いわゆる“億り人”(仮想通貨で億単位の資産を所持している人)になった方が亡くなると、亡くなった時点での評価額で相続税が計算される可能性が高いといえます 。遺族が仮想通貨のことを知らないでいた場合は、突然数千万円単位の税が課せられる可能性があります。さらに、家族が仮想通貨にアクセスできないとしたら最悪の事態になりかねません」

日本デジタル終活協会代表 伊勢田篤史弁護士
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