シンガポールで国際社会の耳目を集めた米朝首脳会談が行われて1週間あまりが経った。この会談に対する評価は、トランプが妥協しすぎた、金正恩の一人勝ちだとか、あるいは一番の勝者は中国の習近平である、といったものが多いようだ。理由は、米朝首脳会談後に発表された共同声明にCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)の文言や非核化の期限設定が入らなかったこと、なのに米国側が米韓合同軍事演習の中止という妥協を早々に決めたこと、あたりだろう。軍事演習の中止は、中国にとってもありがたいことであるのは間違いない。では、この首脳会談で米国は敗者だったのだろうか。この結果に、中国がほくそ笑んでいるのだろうか。
米朝首脳会談について簡単に振り返っておこう。共同声明で確認されたのは4点。
①米朝は両国民の平和と繁栄への希求に基づき、新たな米朝関係の樹立を約束した。
②米朝は朝鮮半島の恒久的かつ安定した平和体制を築くことに共同で取り組む。
③2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全なる非核化に取り組むことを約束した。
④米朝はすでに身元が分かっている遺骨の即時返還も含め、戦争捕虜や行方不明兵の遺骨収集を約束した。
会談後のトランプの記者会見では、共同声明には盛り込まれていないが、北朝鮮側が非核化の検証やミサイルエンジン実験場の廃棄に同意したこと、米国は経済制裁は非核化が再核化しないと判断した段階で解くとしたことなどが説明された。また朝鮮戦争の終結についても、「終わりはもうすぐだ」と期待を示した。
米韓軍事演習を「金のかかる戦争ゲーム」と表現し、その中止を言明、「いずれ在韓米軍を撤退させたい」とも語った。人権問題についても提起し、今後も議論するとした。また、日本人の拉致問題についても共同声明には盛り込まれていないが、話し合いに「取り組む予定」とした。非核化の費用については、日本と韓国が支援してくれると思う、とし、米国が助けなければならないわけではない、とした。
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