一年五カ月ぶりの党首討論。首相と野党党首が丁々発止と議論するために設けられたが、せっかくの機会を生かし切れているとは言い難い。討論の意義を再確認し、運営方法を見直す必要がある。
前回の党首討論は二〇一六年十二月。昨年は一度も開かれていない。なぜこれほど長い間、開かれなかったのか。一四年五月には当時の与野党七党が「月一回開催」を確認したにもかかわらず、である。公党間の約束を放置した与野党双方に猛省を促したい。
その上で、今回の党首討論が、この制度の導入時に想定していた「政策本位」にふさわしい議論の場となっていたであろうか。答えは、残念ながら「否」である。
冒頭、初めて討論に立った枝野幸男立憲民主党代表は森友・加計両学園の問題に絞って追及した。
両学園をめぐる問題は、公平・公正であるべき行政判断が、安倍晋三首相の間接的または直接的な影響力でゆがめられたのか否か、という極めて重要な問題だ。野党が追及するのは当然ではある。
両学園の問題がいまだ真相解明に至っていないのは、政権側の不誠実な態度にある。とはいえ追及の場は予算委員会などほかにもある。あえて党首討論でも取り上げるべきだったのか、疑問は残る。
枝野氏は安倍首相の退陣や衆院解散・総選挙を求めている。ならば政権交代が実現した場合、どんな政策を進める考えなのか。政権追及にとどまらず、党首討論の場でこそ具体策を聞きたかった。
枝野氏と同じく初めて討論に立った国民民主党の玉木雄一郎共同代表は、枝野氏とは対照的に、日米の通商問題や、日ロ間の領土交渉、米朝首脳会談など経済、外交問題に絞って討論を展開した。
とはいえ、玉木氏の持ち時間は四十五分中の十五分、最も多い枝野氏でさえ十九分だ。これでは政策論争が深まるわけはない。
英国の制度を参考に導入された党首討論は小渕内閣当時の〇〇年二月、正式に始まった。当初は衆院への小選挙区制導入に伴って政権交代可能な二大政党の党首同士が政策論争することを想定し、野党の離合集散による多党化は念頭になかったのだろう。
野党勢力の再結集が当面難しいなら、持ち時間を譲り合うなど政策論争を深める工夫をすべきだ。開催回数を増やす必要もある。
官僚を排した政治家同士の政策論争を通じて、国民に政策の選択肢を示す。党首討論が果たすべき役割をあらためて確認したい。
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