二〇一五年二月の加計孝太郎理事長と安倍晋三首相との面談はなかった、と加計学園が説明を変えた。愛媛県にうそをついていたのなら、獣医学部新設の正当性や大学運営の資格が問われて当然だ。
にわかには信じ難いが、学校法人加計学園が、一五年三月三日に愛媛県側と行った打ち合わせで説明していた加計氏と首相との面談の事実や、首相の発言内容が虚偽だったとのコメントを発表した。
この発表が事実か否か。真偽を確かめることが必要だ。まずは加計氏ら学園関係者の証人喚問を求めたい。国政調査権を有する国会は真摯(しんし)に対応すべきだ。
愛媛県が今月、参院予算委員会に提出した文書によると、加計氏は一五年二月二十五日、首相と十五分程度面談した際「今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指す」ことなどを説明し、首相からは「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とのコメントがあったと、加計学園が県側に説明していた。
この説明が事実なら、加計学園の獣医学部新設計画を初めて知ったのは一七年一月二十日だとする首相答弁とは明らかに矛盾する。
加計学園はなぜ三年以上も訂正しなかった県への説明を突然、変えたのか。学部新設への首相関与の有無が国会などで問題となり、学部新設への関与や加計氏との面談を否定する首相を守るため、と受け取られても仕方があるまい。
仮に、加計学園の県側への説明が虚偽だったとしたら、首相のコメントや、学園理事長と首相との面会の事実を捏造(ねつぞう)するような組織に学部新設だけでなく、そもそも大学を運営する資格や能力があるのか、という問題が浮上する。
首相はきのうの国会答弁で「会ったか、会わなかったかはまったく関わりがない」と、加計氏との面談の有無と獣医学部の新設認可手続きとは無関係だと強調した。
しかし、愛媛県文書では「総理案件になっている」と発言した柳瀬唯夫首相秘書官(当時)との一五年四月二日の面会は首相と加計氏との会食で地元の動きが鈍いとの話が出たことがきっかけだ。県や市が同年六月四日に学部新設を提案したのも、首相が加計氏との面談で「いいね」とコメントしたことが前提になっている。
首相と加計氏との面談の事実関係や、愛媛県への加計学園の説明の真偽を確かめることは、学部新設だけでなく、首相答弁の正当性に関わる重大な問題だ。「関わりがない」では済まされない。
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