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ある時期潜伏していたように見えたエンジニアが、再び元気な姿を見せてくれることもある。表に出なくなっていた時期に、どんなことに取り組みどんなことに苦しんでいたのか、そうした話をブログに書いてくれることもある。そうした姿を見ると、少し懐かしくうれしい気持ちになる。
二つ目のパターンは「知名度を売り物にするエンジニア」だ。自身の知名度をフックにして、現職よりも条件がよい企業に転職したり、コンサルティングを提供する企業を増やしていったりする。
こうしたことは、別に間違ったことではない。自身の知名度を生かして仕事を充実させていくのは、むしろエンジニアの望ましい姿だと言えるだろう。
ただ、こうしたエンジニアの中のごく一部に対しては、個人的にあまりポジティブな印象を持てないことがある。有名企業の間を短期間で渡り歩いたり、知名度を生かした転職先企業のPR活動に消極的に見えたりするケースだ。「それなりに高い待遇を提示されて迎えられたはずなのに」と思ってしまう。
もちろんこれはあくまで外から見た印象だ。実はその企業の中では、知名度で貢献せずとも、サービス開発や人材育成などで大活躍しているのかもしれない。それに、企業に直接貢献しているように見えなくても問題がない場合もある。その企業が利用しているオープンソースソフトウエア(OSS)の開発に専念するフルタイムコミッターとして入社するケースだ。こうした場合は、その企業の業務や対外活動に関わっていなくても、そのOSSの開発に取り組むこと自体を企業から期待されている。
水面下で足をかき続ける白鳥
三つ目のパターンが「知名度にふさわしくあろうとするエンジニア」である。そうしたエンジニアとして私が思い浮かべるのが、テスト駆動開発(TDD)の日本での第一人者として知られる和田卓人氏だ。
私は上記のインタビューで和田氏から「ソフトウエア開発の実力を維持するために受託案件の開発を続けている」と聞いて驚いた。和田氏はコンサルティング業で十分に成功しており、あえてソフトウエア開発受託まで手掛けなくても、和田氏の実力を疑う人はいないだろう。にも関わらず、知名度に見合った実力を維持しようと意識して努力している姿に感銘を受けた。