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ハーバード、イェール、国内大学でも必須!「英語を書く力」の学び方

五感を刺激するストーリーブック学習法

2020年に大学受験が変わることはご存知の人も多いだろう。国語、数学で記述式が導入されることに加え、英語に関しては「書く」「話す」を評価する4技能試験が導入される。

また国立大学は、2021年に定員の3割を推薦型の入試で受け入れることを目指している。これにより単純な点数主義型から総合的な全人格を問う入試形式が増え、日本の受験制度はアメリカの受験制度に近づいていると言える。

そのアメリカでは、「アイビーリーグ」と呼ばれるハーバード大学やイェール大学などの名門大学で、自分の考えを相手に伝えるエッセイ(論文)が一番の評価のポイントとなっている。言い換えれば「書く力」が重要視されているのだ。

英語塾キャタルの代表・三石郷史氏は、4技能試験という言葉もまだない16年前から読む、聞く、書く、話すをバランスよく学ぶ学習法を提唱し、中でも「書く力」に重きをおいてきた。

自身も海外での生活経験がないながらTOEFL iBT102点取得し、マサチューセッツ工科大学に出願、合格し、この秋から留学予定である。そのプロセスで得たことについても話を聞いた。

なぜ、英語において「書く力」が重要なのだろうか? そして、英語を「書く力」を身につける学習法とは? キャタルのノウハウを公開する。

取材・文/佐藤智

全人格型入試では「人生のストーリー」が問われる

東大・京大で推薦入試が始まったことに加え、近年、海外大学への入学志望者が増加している。これにより、点数主義的な受験から、総合的な全人格型の入試で大学を目指すトップ層が増えてきている。

例えば日本の学生が、ハーバード大学やイェール大学などのアイビーリーグを目指そうと思ったら、SATと呼ばれる共通テストに加え、内申点を意味するGPA、そして海外生に課せられるTOEFL(ハーバードは必須ではない)が必要になる。トップ校では120点満点のTOEFL iBTで100点が足切りの目安となっているので、このスコアがトップレベルの高校生の世界基準となっている。

イェール大学/Photo by iStock

4技能試験のTOEFL iBTでは当然ライティングが課せられ、ここでアカデミックな書く力を示せないと高得点は望めない。

さらに受験の本番とも言えるエッセイ(論文)の提出が求められる。大抵の大学は、「Statement of Purpose」と呼ばれる志望理由書に加え、自分自身を大学に理解してもらうために書く「補助エッセイ」も書くことになる。つまりアメリカのトップ大学では、書くことを通じて考える力を示せなければ、突破することができない。

SATのスコアからGPA、そして志望理由書、補助エッセイまでが、その人にとっての一冊のストーリーになっていることが重要であると言われている。アドミッションオフィスと呼ばれる入学事務局は、その人の提出するすべてに通じるストーリーを見て、その大学にふさわしいかを判断している。

どんなに口で「ハーバードに行きたい」「イェールに入りたい」と主張したところで、SATの点数が悪かったり、GPAが低ければ「学習が伴っていないのだから、志望が強くない」と判断される。また学力が高くても、志望理由書で自分がその大学に入るために何をしてきたのかを、エッセイで示さなければ評価されない。

 

帰国子女でも「書く力」で英語力に差が出る

私は今でこそ英語塾を立ち上げているが、実は中学の頃英語が苦手だった。中2のときに英検4級に落ちたことを覚えているので、今考えると相当なスロースターターだ。実際に大学受験も苦戦をし、一年浪人をして大学に入学をした。地方の公立中学高校で英語を学び続けた経験を振り返ると、志望校レベルまで英語を上げるのには、人よりも時間がかかってしまったと思う。

大学に入れば入ったで、今度はキャンパス内に多く存在する帰国子女の英語力と国際経験の差を目の当たりにして、それにコンプレックスを感じた。彼らの英語力と受験勉強で得た自分の英語力との差に愕然とした。その差を埋めるべく短期留学などもするが、結局、受験英語は本場では役にたたず、挫折感をもってアメリカから帰ってきたことが思い出される。

さらに外資系証券会社に入社後は、一層自分の英語力のなさに打ちのめされた。出世するのも、留学してMBAを取りに行くのも、結局は英語ができる帰国子女だった。「英語ができないと馬鹿に見える」という、アメリカ人上司の言葉を今でも強烈に思い出される。

自分のような思いを下の世代にさせたくないという思いをもって、2002年に英語塾キャタルを作った。コンセプトとしては自分が小さい頃に存在さえも知らなかった帰国子女に、早くから出会い、彼らがバイリンガルになった勉強法で英語を学ぶことができる塾だ。

最初は帰国子女を集めて、彼らに英語を教えさせればいいだろう位の軽い気持ちでいたが、実際にはそれほど簡単なことではなかった。その一番の理由は、同じ帰国子女の中にも、英語力の高い人と、英語力の低い人がいて、英語力の高い人材の採用に苦労したことだ。

彼らの英語力の差は、会話をしていても現れづらい。では何で差がつくかというと、「書く力」である。海外滞在歴が長く、ネイティブの発音で話されるとさぞ英語力が高いのだろうと思ってしまうが、いざエッセイを書かせてみると日記のような簡単な英語しか書けないという人はたくさんいた。一方、海外歴はそれほど長くなくても、素晴らしい表現でロジカルにエッセイを書く人もいた。

それでは、帰国子女の英語力の差は、何でつくのだろうか。海外滞在歴の長さではなく、そこまでの読書体験によってその差が生まれる。

これに気づいたときに、大きく驚いたとともに、非帰国子女の日本人にも希望があると感じた。もしこれが本当であれば、日本においても英語の読書体験を積ませることができれば、バイリンガルになれるのではないかと考え、作ったのがキャタルのカリキュラムである。創業からの16年間で、数多くの生徒たちがその有効性を証明してきてくれた。

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