掛け軸と三浦祥善住職=佐賀市本庄町の東光寺

■年老いた顔、牙から真っ赤な舌

 佐賀に人魚伝説? 佐賀市本庄町の東光寺に、年老いた「人魚」を描いたとみられる謎の掛け軸がある。胸から下は魚、肩口までうろこをまとったその姿は、確かに人魚。笑っているのか、むき出しになった牙の隙間から真っ赤な舌がのぞき、目を見開いて振り返る様子は、見る人が声を上げるほど、おどろおどろしい。

 「いつ誰が何のために描いたものか、全てが謎」と住職の三浦祥善さん(68)。絵に落款はなく、裏側は白紙で日付も作者の名前もない。

 東光寺は佐賀藩祖・鍋島直茂の父清房の代まで祖先供養する氏仏(うじぼとけ)として崇敬され、その後も直茂が薬師堂や厨子(ずし)を建造するなど、鍋島家とゆかりが深い。

 掛け軸にまつわる言い伝えは一切なく、「現在の建物に寺を移した1953年には既にあったと記憶している」という。三浦さんの祖母が「人魚(にんぎょ)の魚(ぎょ)」と呼んでいたため、今もその名前を使っている。

 かつては絵が見えにくいほど表面が黒ずんでいた。20年ほど前に「どう描かれているのかよく見てみたい」とクリーニングで汚れを取り除いたところ、舌の鮮やかな赤色が現れ、「不気味な容姿にあらためてびっくりした」という。

 寺を訪れた子どもが掛け軸を見て泣き出すこともあったため、普段は飾らず床の間にしまっている。三浦さんは「見る勇気のある方は、ぜひご連絡を」と話す。問い合わせは東光寺、電話0952(24)6774へ。