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福島清海さんは佐賀市呉服元町の浄土真宗・正雲寺第14代住職で、県陶芸協会でも異色の僧りょ作家。作業場や窯場などの設備は庫裏の裏手にあり、僧衣を脱いで工房にこもるとき福島さんは陶芸家の顔になる。 異色といえば、作品も土味を重視した練り込み焼き締め陶器などのいわゆる土物。この点も同協会の作家の中では少数派といえよう。 代表作を見ると、鉄分の含有率が異なる2種類の土を混ぜて使用しているのが分かる。2種類の土は異質なまま層を成すように混ぜ合わされ、面白いラインを生み出している。焼成によって白い部分と黒っぽい部分のコントラストは一層強調され、巧まざる文様になって浮かび上がる。 焼き締めのざらついた感触もいいし、透明釉(ゆう)のガラス質を透かして見える景色もいい。土味とフォルムの調和が絶妙だ。「一番苦労しているのが模様」と言うが、同時に「模様にばかり気をとられると全体が見えない」とも言う。細部と全体のバランスをいかに両立させるかが腕の見せどころ。 元中学教師だった福島さんが焼き物と出合ったのは30代半ば。金立養護学校に勤務し始めてからで、生徒の療育訓練で窯芸を指導するようになり、焼き物の思わぬ魅力を発見した。 「同僚だった山本律夫先生(佐賀市)と勉強しながら、次第にろくろ技法や土の違いが分かるようになっていった。師匠などいなかったが、気がつくといつの間にか焼き物に夢中だった」 学校現場で培った技術は創作の意欲を刺激し、県展や美協展に出品するようになる。わずか数年で入賞レベルに達し、10年後には光風会展に初入選。間もなく日本新工芸展に移るが、そこから日展を目標に制作するようになった。現在まで日展入選は7回。 一男二女があり、奥さんも陶芸を楽しむ。寺の門徒婦人会の希望者に陶芸の基礎を教えているが、元教師だけに指導力は板についたもの。 佐賀新聞社5階で毎月2回開かれているカルチャー講座「陶芸」。自分の手で好みの器をつくってみたいという熱心な老若男女が集まってくるここでも、福島さんはやさしい先生だ。言葉で伝えるのが難しい陶芸技法の勘所が、福島さんの的確なアドバイスと実演で無理なく伝わる。 有田や武雄などの産地に比べると焼き物の伝統がやや希薄な県都・佐賀市。その佐賀市にも焼き物文化は徐々に浸透している。まだ数こそ少ないが、市内に工房を構える陶芸家も少しずつ増えているのが実情だ。 静かな焼き物ブームの背景に、愛好家育成に貢献する福島さんのような作家たちの努力があるのは間違いない。 |
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