機能の削除に伴う、既存アプリケーションとの互換性の影響にも留意
Windows 10は、新しいバージョン、つまり機能更新プログラムによるアップグレードによって、新機能が継続的に追加されます。一方で、古い技術や利用されていない機能が削除されたり、将来の削除に向けて使用が推奨されなくなったりします。それまで利用できていた技術や機能が、アップグレードによって利用できなくなると、アプリケーションやデバイスの互換性に影響が出る場合があります。以下は、Windows 10バージョン1703以降から削除された機能、および非推奨になった機能のリストです。
Features removed or planned for replacement starting with Windows 10, version 1803
https://docs.microsoft.com/en-us/windows/deployment/planning/windows-10-1803-removed-features
Windows 10 Fall Creators Update で削除された機能または推奨されなくなった機能
https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/deployment/planning/windows-10-fall-creators-deprecation
Windows 10 Creators Update で削除された機能または推奨されなくなった機能
https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/deployment/planning/windows-10-creators-update-deprecation
たとえば、Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709)では、「IIS 6管理互換」と「IISダイジェスト認証」の機能が非推奨になりました。これらの機能はWindows 10 April 2018 Update(バージョン1803)の時点では削除されていませんが、古い技術に依存したWebサイトやWebアプリケーションに影響する可能性があるため、使用している場合は早めに対応しておくことをお勧めします。
Windows 10バージョン1803では、「ホームグループ」と「XPSビューアー」の機能が削除されました。また、「ソフトウェアの制限のポリシー」の機能が、非推奨(開発終了)という扱いになりました。実際には、Windows 10バージョン1703以降、ソフトウェアの制限のポリシーが機能しない場合があることが確認されています。そのため、Windows 10バージョン1607まではポリシーで禁止できていたものが、その後のバージョンで実際には無制限になっていたなど、すでに企業内のセキュリティ管理に影響を与えている可能性があります(
画面3)。
代替の機能にAppLockerがありますが、AppLockerをポリシーで管理できるのは、Windows 10 EnterpriseおよびEducationに限られます。以下のAppLockerのシステム要件によると、実際に機能するか否かに関係なく、ソフトウェアの制限のポリシーはWindows 10では既にサポートされない機能という扱いになっています。
Requirements to use AppLocker
https://docs.microsoft.com/en-us/windows/security/threat-protection/windows-defender-application-control/applocker/requirements-to-use-applocker
古いファイル共有プロトコルである「SMB(サーバーメッセージブロック)1.0/CIFS」は、セキュリティ上の理由からWindows 8.1およびWindows Server 2012 R2の時点で非推奨になりました。Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709)からは、状況に応じてSMB 1.0/CIFSのサポートが自動的に削除される仕組みが組み込まれています。これにより、古いネットワーク接続型ストレージ(NAS)デバイスへのアクセス(SMB 1.0/CIFSのサポート削除により)、ネットワーク上の名前解決(Computer Browserサービスの削除により)に影響する場合があります。詳しくは、以下のサポート情報で確認してください。
Windows 10 Fall Creators Update と Windows Server バージョン 1709 の既定では SMBv1 はインストールされません
https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4034314/
更新対象外や機能削除にどう対処すればよいか?
SMB 1.0/CIFSのように影響を回避できる場合は、適切に対応すればよいのですが、完全に削除されてしまった技術や機能に依存する互換性問題の場合や、ハードウェアがWindows 10の半期チャネルの対象外になってしまった場合は、どう対応すればよいのでしょうか。利用中のWindows 10バージョンのサポート期限(通常、リリース後18カ月)内に、互換性問題の発生しているデバイスやアプリケーション側を対処するのが望ましい本来の対応です。
しかし、たとえば、専門的なソフトウェアで後継バージョンが開発されていない、あるいは開発者やコードが利用できない古い業務システムといった場合、アプリケーションのアップグレードや修正による対応が難しい場合があります。そのような場合は、
この連載の第1回で説明したように、ダウングレード権を行使してWindows 7やWindows 8.1にする、あるいは固定バージョンであるWindows 10 Enterpriseの「Long Term Servicing Branch:LTSB」(次期バージョンからはLong Term Servicing Channel:LTSC」)に移行するのが1つの方法です。
これまで説明してきたようにLTSB/LTSCは汎用的なOSとしての利用は想定されていませんが、リリース時の技術と機能をそのまま維持できるため、業務システムの互換性問題を解決するのには適した代替OSと言えるでしょう。
いずれも、問題に対応するためのさらなる時間的猶予を得る方法であり、根本的な解決ではないことに留意してください。もちろん、ハードウェアが最新モデルの場合は、旧バージョンがサポートしているかどうか、プロセッサ要件にも注意が必要です。