露、光回線敷設を通告 北方領土で10日にも着工 日本政府抗議

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 ロシア政府系企業による極東のサハリン(樺太)と北方領土を結ぶ光ファイバー回線の海底敷設計画をめぐり、ロシア政府から日本政府に対し、敷設作業を開始すると通告があったことが9日、政府関係者への取材で分かった。

 早ければ10日にも着工するとみられ、日本政府はロシア政府に抗議した。工事業者には中国の通信機器大手が選定されている。

 日本政府は北方領土での第三国の企業活動について「ロシアの管轄権を認めることにつながる」として警戒してきた。今回の工事でロシアの実効支配が一層強化されるとともに、北方領土開発への外国企業参加の呼び水になる恐れがある。

 政府関係者によると、ロシアの水路当局から日本の海上保安庁に5日、オホーツク海南部で10日から11月15日の期間に海底線敷設作業を実施すると通報があった。海保から連絡を受けた外務省が7日、「大規模なインフラ開発は北方領土に関する日本の立場と相いれず、遺憾である」とロシア側に抗議。海保は9日、周辺を航行する船舶に注意を呼びかける航行警報を発表した。

 光ファイバー計画では、サハリンのユジノサハリンスク(豊原)から択捉島の紗那(しゃな、ロシア名クリリスク)、国後島の古釜布(ふるかまっぷ、同ユジノクリリスク)、色丹島の穴澗(あなま、同クラボザボツク)を結ぶ。海底区間は全長765キロで、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」が敷設工事を受注した。

 北方領土では現在、携帯電話会社のモバイル回線などでインターネットが使われており、光ファイバー回線の整備はインターネット通信環境の改善が目的とみられる。当初は2019(平成31)年中の完了を予定していたが、計画を前倒しした。

 敷設はロシア当局が主導し、予算33億ルーブル(約58億円)の約8割は連邦予算からロシア政府系の通信大手「ロステレコム」への補助金。ロステレコムの競争入札で、華為技術が調査や計画策定の事業を落札。敷設工事も、フィンランド通信機器大手「ノキア」との争いを制して華為技術が受注した。