このセリフおかしくない? ってのがあればご指摘下さい。
初春との熾烈な戦いががが。
微エロ注意。
足の裏の地面が、ずずずと小さく揺れた。地震だ。兆候は一切なかった。ごく小さな地震はアウラでなければ気が付かなかったかも知れない。または気がついても気にしないかだ。
アウラは
仮拠点外縁の防御を固めるアウラは階層守護者だ。命を賭けて守護すべきナザリック地下大墳墓の第六階層は転移で失われた。
だから?
第六階層を失っても彼女は誇り高きナザリック地下大墳墓第六階層階層守護者だ。彼女を階層守護者の任から開放出来るのはこの世で唯一人。至高の存在に階層守護者に任じられたアウラは、今までも、そしてこれからも、階層守護者を胸を張って名乗る義務がある。
例え旅の空の下であっても。
■
不自然な地震に気付いたアウラは
何者かの襲撃だとしてもシャルティアとコキュートスが迎撃するだろう。しかし魔法の転移以外で、アウラの防衛網をすり抜けた相手であれば油断は出来ない。
お願い、とだけ声をかけられた巨狼は二つの喜びを以って主に応える。一つは風を纏い全力で疾走出来る事。もう一つは主に命令を授かった事だ。魔法で強化した四肢は大地を掴むと一気に力を開放する。風を纏った身体は空気の壁をするりとすり抜ける。巨狼にとって全力で疾走することは喜びだ。主を乗せているなら尚更だ。尻尾がぶんぶんと揺れるのを懸命に我慢する。褒めて貰うのは主を送り届けてからだ。
しかし走り始めた巨狼の喜びは直ぐに霧散した。アウラが巨狼の首筋を小さく叩いたからだ。巨狼は主に負担を掛けぬよう急制動をかける。大地を抉り巨狼の爪が砂煙を上げながら大地に食い込んだ。
「くーん、くーん」
アウラはお気に入りの魔獣の首筋を優しく撫でた。なりは大きくとも魔獣は全員甘えん坊だ。
「よしよし。ごめんね。違ったみたい。あははは、くすぐったいよ」
首を伸ばして甘えるフェンをいなすアウラの視線の先に砂柱が上がっていた。連続して上がる砂柱は仮拠点を中心に円を描くように立ち登っていた。フェンの体を経由して伝わる不自然な振動。原因はマーレだ。
「そう言えば侵入者用の罠を作るって言ってったっけ?」
「わふ?」
「そう。じゃあ一度戻ろうか? お腹空いたでしょ?」
巨狼の尻尾がぶんぶんと音を立てた。
■
「てめらさっさとしろよ! このグズ!」
ドスの効いた声が響いた。同時に肉がぐちゃりと潰れる音。筋繊維がぶちぶちと引きちぎれる音も。
「あ"ぁ!! もう! 何やってんだごらぁぁ!!」
「申し訳ありません! シャルティア様!」
「しゃべんな! 口動かす前に体動かせっつってんだよ!」
五体の
「があぁぁぁぁぁ!! また
アウラの視線の先に頭を抱え髪を振り乱しながら、どすんどすんと怒りを大地にぶつけるシャルティアがいた。
血の狂乱もかくやと思わせる程、シャルティア・ブラッドフォールンは怒り狂っていた。今の彼女に戦闘力を持たない下僕は近づけない。もちろん最後の一線を守り、下僕を直接傷つける事はない。だが彼女の力は巨大だ。余波で万が一もあり得るからだ。
シャルティアは転移直後、デミウルゴスに詰め寄ってから終始機嫌が悪かった。一時的に収まる事はあってもちょっとしたことで癇癪を起こした。
癇癪を起こしたシャルティアを力で押さえられる者は少ない。片手の指で数えられる程度だ。だが押さえれるからといって実行は出来ない。レベル一〇〇同士の争いは周囲に甚大な被害をもたらす。
「シャルティア」
アウラはシャルティアに対抗出来る数少ない者の一人だ。力ではない。アウラはシャルティアと同じレベル一〇〇だが個の戦闘力では到底太刀打ち出来ない。
シャルティアの首がぐるんと回った。
「チビ助!!」
「チビ助でもなんでもいいよ。今度は何があったのさ」
「今度も何もあいつらが! あぁぁ!! もう!! 腹が立つ!」
シャルティアは怒りをぶつける様に再び地面をどすんどすんと蹴った。
「あいつらって
「あぁ!? わたしが無能だって言いたいのか!?」
「それ以外に聞こえた?」
ぷちんと何かが切れた音が聞こえた。
空気が明らかに変わった。シャルティアはアウラを睨みつけ、アウラは正面からその視線を受け止める。
血の通わぬシャルティアの白皙の肌は怒り狂っても色を変えない。代わりに何かのスキルなのか、温度が上昇し陽炎のように周囲の空気を歪ませた。シャルティアを中心に周囲の景色がゆらりゆらりと揺れた。
アウラはそれでも動じずシャルティアを睨んだままだ。
きっかり一〇秒。にらみ合いで先に口を開いたのはシャルティアだった。
「殺す!」
アウラの額にピキリと井桁が浮かんだ。瞼がすっと眇められオッドアイの虹彩がキュッと動いた。口元が動きにぃっと三日月の形に変わった。
「殺す? 誰が? 誰を?」
「あ」
物理的に空気が変わった。具体的には陽炎は消え去り歪んでいた景色が元に戻った。上昇していた温度は元に戻るどころか低下した。
「もう一回聞くよ? 誰が? 誰を? こ・ろ・す・って?」
「あっ……あっ……」
アウラの本気の怒りを正面から感じてシャルティアの怒りは一気に醒めた。流れていないはずの血が頭からさーっと引いていく音が聞こえた気がした。
「えっ、あっ、いっ……」
シャルティアの身長は一四〇センチ。アウラは一〇四センチ。見下ろしていたはずがいつの間にか見下されていた。違う。腰が抜けていた。腰が抜けてお尻が地面についていた。
「何か言うことあるでしょ?」
「ごっ……ごっ……ごっ……」
「ご?」
「ごめんなさい」
シャルティアはわんわんと泣き出した。
「うん。よろしい」
アウラは、にかっと笑った。
■
「全く、何をイライラしてんのさ?」
「…………」
シャルティアは膝を抱えその膝に顔を埋めていた。アウラの声が耳に届く。アウラの声に怒りはなく、呆れの色が少し混じっていた。
「シャルティアはアンデッドなのに感情の起伏が激し過ぎだよ」
シャルティアは転移してから感情を抑えることが難しくなった。簡単に感情が振り切れ激高してしまう。召喚したモンスターに八つ当たりしてもなかなか収まらない事も多い。
原因は分かっている。モモンガだ。ただ一人ナザリック地下大墳墓に残ってくれた慈悲深き愛しの君。
転移直後、シャルティアは階層守護者としてモモンガを護ろうと動いた。しかし探しても探してもどこにもいない。シャルティアはスキルと魔法を駆使し、手当たり次第に尋ねもした。
嫌な予感がした。
見渡せば下僕達は不安顔だ。アルベドが指示を下してシャルティアは訳が分からず役割をこなすことで不安を紛らわした。配下を防衛配置しながら同時にモモンガを探していた。
不思議に思った。何故アルベドはモモンガを探さない。デミウルゴスは何故普段と変わらない態度なのだ。この異常事態に。
嫌な予感がさらに膨れた。
配下の配置を終わらせるとシャルティアはアルベドとデミウルゴスに詰め寄った。
『結論からいいますと私も分かりません。少なくともこの世界に転移していない事だけは確実です』
ペロロンチーノは去ってしまった。モモンガにも見捨てられた。
存在意義が、がらがらと音を立てて壊れる音がした。
淡々と語るデミウルゴスを非難し罵倒した。なんでお前は平気な顔をしている! 裏切り者! 不忠者! 鬼! 悪魔! 蛙面!
宥められようが、賺されようが、理で諭されようが納得出来るはずがない。真っ暗で出口のない迷路に一人残されたように、絶望が押し寄せ心がすり潰される。
シャルティアは子供のように泣いた。必死の形相のデミウルゴス。気落ちする下僕達。指示を出すアルベド。
何故だ。何故お前たちは絶望していない。わたしとお前たちの違いはなんだ。
パンドラズ・アクターに介抱されながら、シャルティアは皆との決定的な違いを知る。
シャルティアはモモンガの勅命を下僕の中で唯一知らなかった。
■
「はぁーーー!!?? ばっかじゃないの!?」
素っ頓狂な声はアウラだ。
「でも」
「でもじゃない!」
「だって」
「だってじゃない!」
「そんな大事な話をしてるって知らなくて……」
「そういう事じゃないでしょ! モモンガ様に見惚れてお話を覚えていないって……馬鹿っ!!」
情けない、申し訳ない、見放されたくない。
シャルティアはモモンガの勅命を聞きそびれていた事をこれまで誰にも話していなかった。話せるはずがなかった。
いやいやと膝に顔を埋め、何も話そうとしない態度に、直感で何かを隠していると気付いたアウラが、無理矢理口を開かせた答えが、
『モモンガ様と……二人切りで……浮かれてて……見惚れてて……聞きそびれて……』
だ。
「もう! 信じらんない!」
「ごめんなさい」
「それで八つ当たり!?」
「自分にイライラして……」
「ほんとっ!……ばかぁっ!!」
「ごめんなさい」
シャルティアはアウラに言っていないことがある。性的に興奮していたことだ。
転移の数日前、『付き従え』の命令を受諾したシャルティアはモモンガの背中を追い掛けた。
支配者のオーラを撒き散らしながら強く命令するモモンガに、マゾでもあるシャルティアは濡れた。盛大に濡れた。うっとりと、あぁ、愛しの我が君……と性的な熱に浮かされながら。
第ニ階層の死蝋玄室から転移門を経由して一〇階層にある玉座の間まで二人っきり。時々モモンガが振り返り語りかけてくる。その姿にもうっとり。まるでデードだ。いやこれはデートだ。モモンガはシャルティアを女性として見てくれていたのだ。この幸せがいつまでも続けばいいのに。
玉座の間にたどり着いたシャルティアは、幸せな記憶を反芻した。何度も何度も。それこそ転移する直前まで。
やがて始まるモモンガの演説も最前列でうっとりと眺め、気がつけば転移していた。異常事態にシャルティアの意識が切り替わり、最優先でモモンガを探した。
「はぁ、本当どうしようこれ」
アウラは頭を抱えていた。
隠していた失態を知られてしまった。こうなれば恥も外聞も意地も挟持も何もない。シャルティアはもうアウラに縋るしかない。
「アウラ! お願い、なんとかして!」
シャルティアは文字通りアウラの足元に縋り付いた。
「何とかしてって言われても、アルベドに相談……」
「それだけは駄目ぇぇ!」
アルベドはモモンガを性的に虎視眈々と狙っている。アルベドに知られればいつかモモンガが帰還した時、これを理由にシャルティアをモモンガから性的に遠ざけるかもしれない。それだけは断固拒否だ。
「駄目って言われても後はデミウルゴスに……」
「それも駄目ぇ!!」
デミウルゴスの必死になった顔が忘れられない。これ以上同格の階層守護者として負い目を持つのは絶対に嫌だ。
「さっき『それだけは』って言ったのに……そうなるともうパンドラズ・アクターしかいな……」
「もっと駄目ぇぇ!!!!」
至高の存在に変身出来るパンドラズ・アクターは当然モモンガの外装も持っている。八割の能力を使いこなす事が出来る彼なら
「あれも駄目これも駄目って、じゃあ一体どうするのさ!」
「おねがいしますなんでもしますからおねがいします」
切れかけるアウラにシャルティアは呪文のように言葉を繋げ懇願を続ける。アウラは呆れたようにため息を一つ吐いた。
「本当に何でもするんだね?」
「何でもします」
「アルベドに……」
「それだけは駄目ぇぇ!」
「何でもじゃないし……本当にこれが最後の手段だからね。行ったらもう引き返せないからね」
「……わかりました」
しょんぼり元気のないシャルティアを見て、調子狂うなぁ、とアウラは自らの頭を撫でた。
「よし。じゃ行くよ。ほら立って」
アウラはシャルティアを立たせて歩き出した。シャルティアはその背中にぽつりと呟いた。
「アウラ」
「何?」
アウラは振り返らず歩き続ける。
「いいの?」
シャルティアは様々な意味を込めて尋ねた。
モモンガの心遣いを無にしたのに、調子こいて喧嘩売ったのに、迷惑かけたのに。
「仕方ないでしょ。乗りかかった船だし、それにね」
アウラは振り返った。
「放っとけないでしょ」
それは間違いなくアウラの本心だった。
■
「いるー?」
仮拠点地下五階層の一室。アウラは扉をノックし住人を呼び出す。
「ねぇ、ここって」
「黙ってて」
下僕達の住居は基本的にナザリックと同じ階層だ。第五階層はコキュートスが守護していた階層だ。必然、住人はコキュートスの部下になる。
「はーい」
中から濁声が聞こえた。扉が開き花のいい香りが鼻孔をくすぐった。
最初に触手に似た指が見えた。ネイルアートをしている。触手に似たではなかった。触手だ。六本の触手。ぶよぶよと溺死体の様に膨れ上がった白い肌。体を申し訳程度に覆う、白い肌とは対象的な黒い
「あらん。アウラじゃない。それと
「ニューロニストに聞きたい事があるんだけど?」
「藪から棒ね。何かしらん」
「ニューロニストって口は堅い?」
ニューロニスト・ペインキル。
ナザリックが誇る五大最悪の一角。ナザリック地下大墳墓特別情報収集官に任じられたブレインイーターだ。つまりは拷問官。ナザリックを侮辱した者を拷問する尊い仕事についている乙女だ。訂正する。心は乙女だが肉体に性別はない。ちなみに心の底からモモンガにぞっこんラヴ。
「アウラ。この仕事はね、口の軽い者には勤まらないのよん」
憂いの篭った声。だがダミ声だ。
「あとさぁ、本人が覚えてない記憶って思い出させる事って出来るかな?」
「それこそ得意分野なのねん。脳を舐めて刺激を与えてあげると、みんないい声で歌ってくれるわよん」
シャルティアは逃げ出した。だがアウラに回り込まれた。
「無理無理無理無理無理無理無理無理ぃぃ!!」
「なんでもするって言ったよね?」
井桁付きの笑顔でシャルティアに迫るアウラ。
「ででででででもっ! でもっ!」
「思い出したいの? 思い出したくないの?」
「ののののの脳を、を、を、なな舐めるってってって」
シャルティアは白い顔色はそのままにガタガタと体を震えさせた。
「あらん。小娘の脳を舐めてあげればいいのねん? 大丈夫よ。や・さ・し・く・してあげるわん」
口元から触腕をにゅるりと伸ばしたニューロリストがのしり、のしりとシャルティアに迫り、その影がシャルティアを覆った。シャルティアは眼球をぐるりと裏返し、泡を吹いて気絶した。
■
扉がかちゃりと開いた。中を覗くと簡素な部屋だ。転移前は拷問道具で溢れていた。今は簡単な家具がいくつかあるだけだ。
「終わったのねん」
扉を潜って出てきたニューロニストがアウラに満足そうに報告した。
「思い出したの?」
「私はこの仕事に誇りを持っているのねん」
心外だと言わんばかりのニューロニスト。尤も表情はアウラでもよく分からない。
「本当に脳を舐めたの?」
アウラはげんなり顔だ。脳を舐められるなんて自分なら絶対にお断りだ。
「あれは聖歌隊だけの取っておきよん。脳を舐めて思い出すなら魔法なんていらないのねん」
魔法には対抗策がある。スキル、アイテム・装備、対抗魔法、バフ魔法での強化。意識の有無は効果に影響を与える。ニューロニストは意識を失った者に有効な記憶回想魔法を所持している。意識を失わないと効果は得られない。
脳を舐めるのはモモンガに捧げる聖歌を歌わせる手段の一つだ。思い出せないと言い張る捕虜の脳をたっぷりと舐めて心を折ってから歌って貰うニューロニストの極悪コンボ。当然脳を舐めても記憶など取り戻せない。目的を達せれば最後は美味しく頂く。
「えぐい」
「伊達に五大最悪なんて呼ばれてないわよん」
「と、兎に角ありがとう。シャルティアの様子みてくるよ」
「もう意識は取り戻してるのねん」
アウラは扉をくぐり室内に入った。シャルティアは直ぐに見つかった。扉からは死角となる部屋の隅にいた。
「ニューロリスト! なんで裸なのよー!」
シャルティアは裸だった。一糸もまとっていない。
魅了の魔法がかかったかのように異性の視線を惹きつけてやまない白磁の肌。小振りながら形の良い、
創造主、ペロロンチーノの趣味嗜好を全力全開で詰め込んだ
「その方が魔法を効率的に使えるのねん。装備に魔法の対策がされていても困るしねん」
「うわぁ……」
シャルティアは白磁の肌を全身余すことなく、テロテロと光を反射させる薄く泡立った粘りのある謎の液体で汚されていた。液体は泡立つ事で元の透明から薄い白色に色づき、シャルティアの顎、肘、耳、髪からポタポタと粘りのある糸を引いて垂れ続けている。
「ちょっとぉ!!! この液何なのさ---!!」
「うふ。乙女の秘密よ。害はないから安心してねん」
アウラは部屋の隅に行くと、申し訳程度に備え付けられた寝具のシーツを剥ぎ取りシャルティアに頭から被せた。
横座りになり、両の掌で顔を覆うシャルティアの体は小さく震えていた。
「シャルティア……」
「うっ、ひぐっ、うぐっ…ひっく……えぐっ……」
シャルティアは嗚咽の声を小さく漏らしている。こんな目に合えばさもありなん。まるで集団に無理矢理致された事後の様だ。アウラは死んでもこんな目に合いたくない。
「シャルティア……野良犬に噛まれたと思って……その……ね?」
こんな時どう慰めればいいんだろう。嗚咽で体を震わせるシャルティアにかける言葉が見つからない。
「ひっく、ひぐっ……モモンガさまぁっ……」
「シャルティア……」
アウラは少しだけ後悔していた。脳を舐め回されるだけならモモンガの勅命を聞き忘れていた失態の罰として不十分ではあるが、当面はよしとしようとは思っていたが、まさか乙女の尊厳を蹂躙するような展開になるとは思っていなかったからだ。
シャルティアは顔を覆いながら嗚咽し続ける。
「……わたしは……シャルティア・ブラッドフォールンは……御身に永遠の忠誠を……誓います……」
「ん?」
「……あぁ、慈悲深き愛しの君……シャルティアの永遠の愛もお受けくんなまし……二人でどろどろに溶けてしまうほどに……」
「あれ? シャルティア?」
何か様子がおかしい。アウラはシーツのかかったシャルティアの肩を揺らした。
「んっ……チビ助? どうしたでありんすか?」
正気に戻ったのか、眼の前のアウラをきょとんとした顔で見るシャルティア。
「何が起きたか理解してる?」
「理解?……あぁ、その事でありんすね」
シャルティアは瞼を数回、ぱちぱちと
「思い出したみたいだね」
なんだかんだと心配していたアウラは安心した。シャルティアが意気消沈していればどうも調子が狂ってしまう。しかし次の瞬間アウラは別の意味で調子が狂う。
「思い出す? なんの事だかわからんでありんすねぇ。何を言ってるかさっぱりでありんす」
「何ってモモンガ様の勅め……」
「黙れチビ助!!」
アウラは突然叫ばれ驚いて目を丸くしたが、直ぐにシャルティアの態度の意味を察してしまった。
「あぁ……そういう事……」
「そういう事もああいう事もないのよ! わたしは何時も通りなの! ん? この汚い布切れは?」
。シャルティアは体を隠していたシーツ掴むとばさりと剥ぎ取った。惜しげもなく未成熟な裸身を堂々と見せつけるように晒し、鼻をふん、と鳴らした。
ペロロンチーノに創造された自慢の体だ。恥ずかしがる理由など何一つない。勿論素肌を見せていい異性はペロロンチーノとモモンガの二人だけだ。その場合はやはり大きな羞恥に翻弄されるだろう。
胸のサイズを気にするのはペロロンチーノにそうあれかしと創造されたからだ。好きな異性の前で未成熟の小さな胸を気にする少女。ペロロンチーノの趣味全開だ。
体中に付着したベトベトの液体も気にならない。普段から愛妾の
シャルティアは指をぱちんと弾く。スキルか魔法か、黒く熱のない炎の霧がシャルティアの全身を包んだ、やがて一点に吸い込まれるように消えた霧のあとに残ったシャルティアはいつものポールガウン姿に戻っていた。
完全に自分を取り戻した。アウラは確信した。ニューロリストの魔法で本人すら覚えていなかった記憶を取り戻したのだ。それは自己の存在意義を取り戻した事と同義だ。
「シャルティア。貴方は何?」
哲学的で意味不明な質問。誰もが直ぐに答えられる質問ではない。でも今のシャルティアには答えられる気がした。正しい答えなどないし、どんな答えでも正解だ。
シャルティアは一度瞳を閉じ、直ぐに開いた。八重歯にも見える牙を唇から覗かせ可愛い唇を開いた。
「私は残酷で冷酷で非道で、そいで可憐な化け物でありんすえ」
誰もが魅了される飛び切りの笑顔だった。
【捏造】
①アウラの種族特性。エルフだから不自然じゃないと思われ。
②フェンの速度。整地されてない森とか平地を時速一八〇キロとか草。
③
④ニューロニストの記憶回想魔法。無意識の相手に特効。忘れた記憶を思い出させるだけでニューロリストはそれを拷問で聞き出す。
原作では魔法で回復させながら長時間の拷問 → 脳をちゅーちゅー。
⑤脳を舐めてからの極悪コンボ。ありそうで怖い。
⑥謎の白濁液。ニューロニストの体表からにじみ出る