『西の魔女が死んだ・梨木香歩作品集』を読んだ感想【ネタバレあり】

西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集

 

西の魔女が死んだ梨木香歩作品集』を読んだ感想

成長過程で揺れ動く、少年少女にプレゼントしたくなる心温まる作品でした!

初版は1994年ですが生きる上で大切な普遍的なヒントが盛りだくさんです。元少年少女や親世代、祖父母世代にもおすすめしたい名著です。

「西の魔女が死んだ」梨木香歩さんの名作本に忠実な映画もよかった! - エブリディ・マジック-日だまりに猫と戯れ

私がブログを始めたころからお付き合いをさせて頂いているshoyo (id:koboaoineko)さんから教えて頂いた作品です。

物語のあらすじ

思春期の少女まいと魔女である祖母の物語。

まいのパパは単身赴任中、ママはキャリアウーマン。

進学してまもなく中学へ行くのが嫌になってしまったまい。まいは他人から良く思われたいのではなく、正しく理解されたいと思っている。感受性が鋭く他者との違いを敏感に感じ取り、迎合する矛盾を受け入れられない。

死や孤独にも押しつぶされそうになっているまい。ある日、ママのママである自称魔女、祖母の家での暮らしが始まる。

英国出身で東洋の島国に来て結婚、夫(まいの祖父)に先立たれてからは田舎で一人暮らしをしている祖母。自然との調和の中であるがままの人間として生きている祖母は、まいに魔女修行が必要だと告げる。

 

祖母の元で魔女修行をして、次第に成長する少女の物語。

魔女修行とはいったいなんでしょうか。柔軟さと強さを合わせ持った、異文化人である祖母は魔女の異名にピッタリです。

英国から一人でやってきて異文化を受け入れる事は、相当な努力と柔軟さを求められたことでしょう。まいのママを育てる上でも想像を超える大変な苦労があったと思います。

さまざまな経験をして魔女になった祖母が孫に授けた生きる知恵とは。

 

魔女の教え

魔女修行とは
  • 意志の力・自分で決める力・決めたことをやり遂げる力(p.59)
  • 意に反して見えたり聞こえたりするのは危険で不快だから避ける。顔を上げてそれらを無視する。(p.95)
  • 直観は大切。しかし直観に取りつかれて思い込みと妄想に支配されてはならない。(p.117)
  • 上等な魔女は外からの刺激に大きく動揺しない。(p.95)
  • 自身を支配するような不快な感情が生じないように自分でコントロールしなければならない。(p.114)
HANAの魔女修行
  • 必要な情報はインターネットを利用して選び取る
  • 本当に見たいもの、聴きたいものを主体的に受信する
  • 作られた情報やノイズは極力遮断することを意識する
  • ネガティブな言葉は使わない

危険を予測するためのアンテナを張り、ストレスやアクシデントを極力回避する。また、動揺の原因となる受動的な情報収集を避ける。

魔女になる為に

両親も祖母も学校に行かない理由をまいに尋ねません。

一流の魔女は自分で決める。でもどうするかはその時々に決めればいい。自分が楽に生きられる場所を求めたからって後ろめたく思う必要はない。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマはハワイより北極で生きることを選んだからって誰も責めない。(p.138)

祖母のことばは、まいの心を軽くします。

 

【みんな違ってみんないい 】(金子みすゞ)

この言葉大好き。

同調圧力の渦の中で自分を見失い、型にはめられた世界で傷つきながら生きて行く事は辛いから、自分らしく笑顔で生きて行ける世界へ飛び出そう!

個性や特性を活かせる場所、理解し共感してくれる人はきっと見つかる。

 東の魔女まい

修行途中で祖母から頬を打たれた事でまいは祖母に素直に大好きといえなくなってしまう。けれど再び自分の足で歩み始め、次第に自我を確立させて行く。

時は流れ、突然祖母の死と向き合う事になる。

タマシイ、ダッシュツ、ダイセイコウ…約束を覚えていてくれた文字を見つけて、大好き!と叫ぶまい。

既に東の魔女になったまいはゆっくり事実を受け入れて、やがて孤独も克服して自分の決めた道を歩み始める。

 

もし、道中で身も心もズタズタになったときには祖母のおまじないがある。「こんなことは私の致命傷にはならない」そう自分に言い聞かせること。そうすればこころとからだのどこかに新しい生命力の種がきっと生まれる。(p.194)

だから大丈夫…と。まいもみんなも大丈夫。

まとめ

四季を彩る植物・日々の暮らしの知恵・命を頂く感謝。これらをさりげなく取り入れながら物語は心地よく穏やかに進みます。

思春期の少年少女の心に宿る、妖精たちのざわめきが見事に描き出されていて、なぜかジブリ作品の「魔女の宅急便」を思い出しました。

この作品は小中学生の読書感想文にも最適だと思います。主人公は女の子ですが、特に感受性が鋭い男子にもおすすめしたいです。

読み終えた後、あたたかい気持ちが体中を駆け抜け幸せな気持ちになれました。

私も魔女修行、続けます!

 

✨最後までお付き合い下さりありがとうございます✨