死の超越者は夢を見る   作:はのじ
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前話のサブタイトルを「カルネ」から「トーマス」に変更。
カルネは姓だったんですね……

地雷をマインスイーパーする説明回。




少し性表現あります。



モモンガの後継者 Aパート

「あのっ! アルベド様! オーレオール・オメガの事なのですが!」

 

 オーレオール・オメガ。

 

 戦闘メイドプレアデスの末妹。レベルは一〇〇と階層守護者に匹敵する。かつてはナザリックの階層間移動ゲートの管理者として桜花聖域に詰め、同時にギルド武器であるスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを預かり管理していた。その役割の重要さ故にパンドラズ・アクターと同様、滅多に表に出る事はなかった。

 

 ユリ達は未だ六連星(プレアデス)として活動している。七姉妹(プレイアデス)ではない。プレアデスがプレイアデスに移行する時、チームリーダーはセバスからオーレオールに変更される。しかし移行には主の承認が必要だ。モモンガ不在の現在、プレイアデスとなる事は決してない。

 

 アルベドが口を開こうとした時、デミウルゴスが視線で制した。アルベドは誰にも気づかれない小さなため息をつくとデミウルゴスに続きを促した。

 

「彼女の事は放っておくように」

 

「でもっ」

 

「二度、言わせないで欲しい」

 

 デミウルゴスは冷たく切り捨てた。

 

 オーレオールは不老ではあるがナザリックに所属する唯一の人間だ。ギルド武器を預かり、管理するというパンドラズ・アクターに匹敵する重要な任務にも就いていたことからモモンガの信頼も厚かった。

 

 プレアデス姉妹とも仲が良く、人間嫌いのアルベドも唯一の例外としてオーレオールを嫌ってはいない。だがナザリック全ての下僕がそうであるとは限らない。異形種で構成されるナザリックの下僕の中には、人間であるというだけで毛嫌いする者も一定数存在した。

 

 オーレオールは建設中の拠点から自ら距離を置き、恐怖公の眷属が徘徊する森の奥で至高の存在から借り受けたウカノミタマやオオトシ達といった配下と共に一人で暮らしている。

 

 恐怖公の眷属はオーレオールから一定の距離以上近づかず、彼女に悪意を持つ者が近づけば即座に恐怖公からデミウルゴスに知らせが届く体制を構築していた。

 

 これらは転移前にオーレオールを気遣ったアルベドがデミウルゴスと相談して決めた事だ。

 

「……申し訳ありませんでした……」

 

 アンデッド特有の白磁の青ざめた肌色を持つ顔を伏せ、ユリは引き下がった。オーレオールがナザリックの下僕達から距離を取っている理由を察しているユリはこれ以上強く出ることは出来ない。

 

「……彼女を仮拠点(ここ)へ呼ぶつもりはないわ。でもね、ユリ。あなた達(プレアデス)が彼女に会いに行くのを止めるつもりもないわ。会いに行く時は恐怖公に声をかけなさい。いいわね? 恐怖公」

 

「我輩に異存などあろうはずがありませんぞ。眷属達にもお嬢様方には決して近づかぬよう伝えておきます。特に眷属喰……エントマ殿には決してに近づかせません」

 

 どこに腰があるのか。器用に椅子に腰掛け、テーブルの天板から頭と触覚を覗かせながら恐怖公が快諾する。

 

「デミウルゴスもいいわね?」

 

 デミウルゴスは軽薄な笑みを貼り付けたまま無言で頭を下げた。

 

「アルベド様! 恐怖公様! ありがとうございます! ……えっと……その……デミウルゴス様も……」

 

 ユリの感謝に恐怖公は片目を瞬かせる洒脱なウィンクで返した。

 

 アルベドとユリの頬がひくひくと引きつった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄金の飾り羽がゆらゆらと揺れた。退化した翼が床をさっとひと撫でする。どうやって持っているのか、掴む指もないフリッパーの先端の白い布巾が床を撫でると土塊(つちくれ)を剥き出しにした床は凹凸を無くし鈍い艶を放った。

 

 床に這いつくばる小柄な楕円の黒い生き物がさっと(フリッパー)を振るう度に大地は平滑になり土塊らしさを失っていく。

 

「ワックスが欲しい所だが贅沢も言ってられないな」

 

「イー」

 

 目出し帽をかぶった執事服の男性使用人達が同意の声を上げた。彼らも床に膝を突き黒い生き物と共に拠点(・・)維持に汗を流していた。

 

「ちょうどいい。お前、私を持ち上げろ。壁に手が届かない」

 

「イー」

 

 男性使用人に持ち上げられた黒い楕円の生物はイワトビペンギンだ。

 

 エクレア・エクレール・エイクレアー。

 

 種族レベル一のバードマン。至高の存在の一人、餡ころもっちもちに創造され、執事助手の役職を得ている。アインズ・ウール・ゴウンの支配を目論む野心家でもあった。

 

「ペストーニャもセバスもメイド達に何を教えているんだ。掃除というものを全く分かっていない」

 

 エクレアが(フリッパー)を、さっ、さっと振る度に土塊を剥き出した壁は平滑になり鈍い艶を放つ。

 

「ふふふ。ナザリックの支配は間に合わなかったが、こうして功績を積み上げていくいことで私は新たな拠点(・・)の主となるのだ」

 

 さっ。さっ。

 

「なんせ私はモモンガ様から後継者に指名されたも同然なのだからな」

 

 さっ。さっ。

 

「それでどうだ? 何か聞こえたか?」

 

 エクレアは(フリッパー)を止めず、一人の男性使用人に尋ねた。

 

 さっ。さっ。

 

 扉の前に耳を押し付けた男性使用人は静かに首を横に振る。

 

「そうか。魔法で音が漏れないようにしているのか。策士がいるな。デミウルゴスだな。私を警戒しての事に違いない」

 

 さっ。さっ。

 

 簡素な両扉の向こうでは、アルベドが中心となり各部署の代表者が集まって今後の活動方針について会議をしている最中である。

 

 エクレアは会議の内容を盗み聞きしようとここまで来たが、遠くない未来に自らのものとなる拠点(・・)の廊下の見窄らしさに我慢できなくなり掃除を始めたのだ。

 

「アルベドもアルベドだ。何故私を呼ばない。まぁいい。私は寛容だからな。主となった暁にはアルベドは副ギルド長、デミウルゴスには守護者統括の席を用意してやってもいい」

 

 さっ。さっ。

 

「お前たちは全員、階層守護者に昇格してやろう」

 

「イー」

 

 ――そう言えばこんな設定だったなぁ……ナザリックの支配かぁ……。んんっごほっ。エクレア・エクレール・エイクレアーよ。転移した新たな世界でもお前の野望を許そう。

 

 エクレアの野望は果てしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 野望に燃えるエクレアと扉を挟み、室内では代表者の報告が行われていた。

 

 参加者はアルベドの他に、デミウルゴスとパンドラズ・アクター。

 

 階層守護者を代表してアウラ。領域守護者からは恐怖公。メイドを代表してメイド長のペストーニャ・(ストロベリー)・ワンコ。

 

 男性使用人を代表して家令のセバス。図書館からスケルトン・メイジである司書長のティトゥス·アンナエウス·セクンドゥス。ユリ・アルファはプレアデスの代表として。

 

 厨房から副料理長であるマイコニドのビッキー。鍛冶場からは鍛治長が参加していた。

 

「料理長はモモンガ様の勅命で一料理人となりました、この世界の素材を使用した新しい料理を模索すると宣言して、採集と狩猟のスキルを持った者と共に外と厨房を往復する毎日です」

 

 一料理人となっても至高の存在が決めた役職を変更することなど出来ない。役職はそのままに、一料理人となった料理長は転移で資源が枯渇した事と、モモンガの勅命で現地の素材を利用する地産地消の料理を研究している。舌が肥え、大量の食事が必要な下僕は多い。二四時間活動し続ける料理長には会議に参加する余裕などなかった。

 

「モモンガ様から下賜頂いた紙は、元のデータ量が少ない為に大量にあります。それこそ一〇年以上は保つでしょう。司書一同、かつての大図書館を再現するため、昼夜問わず図書の復元に取り組んでおります。もちろん至高の御方達が残して下さった図書を最優先で。皆早く使い切ろうと張り切っております。スクロールの再現は、素材の質が悪く未だ満足いただけるレベルに達しておりません」

 

 司書達は記憶を頼りに図書の復元に取り掛かっていた。モモンガに下賜された紙に触れることは、司書にとって至福の気分を味わえると共に緊張感を孕む。それは時がいくら経過したとしても変わらない。

 

 やりがいのある仕事を常に幸せな気持で。紙を使い切り大図書館を再現させた暁にはモモンガの褒美まである。

 

 司書長のティトゥス·アンナエウス·セクンドゥスはモモンガの大いなる慈悲にどれほど感謝してもし足り無い。

 

 反面、戦力補強用の、魔法のスクロールとして使用する羊皮紙の開発は遅々として進んでいない。素材を変え試しているがまだまだ試行錯誤が必要だった。

 

「それについては少しばかり心当たりがある。もう少し待ってもらえるかい?」

 

 司書長はデミウルゴスの言葉に頭を下げることで了承の意を表した。

 

「次はあたしの番だね」

 

 アウラ・ベラ・フィオーラ。

 

 弟のマーレと共にナザリック第六階層を守護する階層守護者だ。コキュートスは配下と共に自ら陣頭で周辺の警戒に当たっているため、守護者代表に選ばれた。シャルティアが選ばれなかったのは妥当である。

 

「とりあえず周囲二〇キロに驚異になりそうなのはいないね。それ以上先はあたしも一緒に行かなきゃあの子達が寂しがっちゃうから、必要なら言ってよ」

 

 足の速いアウラの配下は広範囲の探索に最適だ。

 

「そうね。後で話すけど、お願いすると思うわ。今は警戒に切り替えて怪しい侵入者は全て殺しておくだけでいいわ」

 

「りょーかいー。あとさぁ、レベルは大した事ないんだけど、こーんな大きい見たことないネズミを一匹見つけたんだ」

 

 アウラは両手を広げて大きさを表現した。可愛らしい仕草を素直に受け取ればアウラが抱きついて少々余る程度の大きさに思えるが、まだ幼いところがあるアウラの事だ、想定より大きかもしれない。

 

「ふかふかで気持良さそうだから貰っちゃっていいかな?」

 

「ふむ。大きい……珍しいネズミ……」

 

「ふかふかですか……」

 

 アウラの発したキーワードに司書長とデミウルゴスが反応した。ビーストテイマーのアウラが知らない生物だ。相当のレアだ。

 

「なにさ。あたしが欲しいんだから横取りは駄目だよ」

 

 強気になったアウラに司書長は立場的に強く出ることが出来ない。司書長は残念そうに口をつぐんだ。しかしデミウルゴスには関係ない。

 

「いえ、そのネズミの皮に興味がありまして」

 

「えー。あたしも皮が欲しいんだけど」

 

「勿論アウラが貰ってくれて結構です。ですが一部を譲ってくれませんか。羊皮紙の代用品を探してまして」

 

「一部ってこれくらい?」

 

 アウラは手の平で空間を四角に切り大きさを表現する。

 

「それくらいあればサンプルとして十分です」

 

「じゃいいよ」

 

「アウラ様。生きたまま連れて来て下さいませんでしょうか? 原生生物は不明な点も多く、生きたまま剥いだ方が効果が高いとの報告もあがっています」

 

 今しかないと司書長がアウラに条件を追加する。

 

「おっけー。じゃアルベドの連絡を待つね」

 

「お願いします」

 

 アウラとデミウルゴスはお互い納得の笑顔だ。

 

 アウラが席に座るとアルベドはペストーニャに視線を送り促す。

 

 視線を受けてペストーニャが立ち上がった。

 

「報告させてもらいますわん。メイド達はモモンガ様の不在で気落ちしている者も多く、仮拠点の掃除も最低限で済ましていますので、仕事のリズムを崩して体調を崩す者が出ています……わん。パンドラズ・アクター様が至高の御方に変身してメイド達を慰労して下さってくれるので一時的に気は持ち直しますが……わん」

 

「モモンガ様の勅命は効果がなかったのかしら?」

 

「はい。お陰様で数名のメイドは元気を取り戻しています。さすがモモンガ様です。残りの者は時間が解決してくれるかと」

 

「そうね……」

 

「………………わん。モモンガ様の像をお磨きする仕事があればいいのですがわん」

 

「鍛冶長。頼めるかい? 大きさは今は小さくていい」

 

 デミウルゴスの要望に、鍛治長は無言で頷いた。ペストーニャが頭を下げた。

 

 セバスが立ち上がった。

 

「男性使用人もメイドとよく似た状況です。ですがエクレアを中心とした何人かは初日から張り切っておりました。間違いなくモモンガ様のお陰でしょう」

 

 エクレアの名を耳にしたアルベドの心がざわついた。ナザリックの支配を公言するエクレアの言動に眉をひそめる者は多い。転移前のアルベドなら気にする事はなかったが、今は心がささくれてしまう。

 

「そういう事……忌々しいわね……でもモモンガ様がお決めに……一体どんな意図が……まさか……そんな……ありえない……そこまでお読みに……」

 

「アルベド様? いかがしました?」

 

「……なんでもないわ。ありがとうセバス」

 

 思索の海から即座に帰還したアルベドは何事もなかったように装うが受けた衝撃で心臓が早鐘を打っていた。一二通りの可能性とそこからさらにいくつも枝別れする未来予測。一つ一つを全て否定を前提に検証し、やがて至った一つの結論。デミウルゴスを見えれば額から汗を流している。どうやら同じ結論に達したようだ。

 

「モモンガ様、かっけー……」

 

「まさに端倪すべからざる御方……」

 

 二人が得た結論。それは二人にしか分からない。

 

 報告は続く。

 

 鍛治長は淡々と物資不足と鉱石の探索を訴え、恐怖公は人間を食用とする領域守護者のストレスを問題視し、ユリはプレアデスをルプスレギナのように外部の探索に加えて欲しいと嘆願した。

 

 密度の濃い会議は長時間に渡り続いた。人間ならば集中力を失い何度も休憩を入れているだろう。しかし彼らは、有り余る体力、もしくは疲れ知らず、または疲労無視の指輪で集中力を失う事がない。例え疲れを覚えたとしてもモモンガへの忠誠心がそれを忘れさせる。

 

 問題点を洗い出し、アルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクター以外の参加者に解決策を提出させる。三人が解決策に対して問題点を重ね、限りなく完璧な答えへとブラッシュアップしていく。

 

 答えを出すだけならアルベド達三人で十分だ。しかしそれではいけない。これは会議に参加している者達を育てる場だ。下僕は成長していかなければならない。

 

 これが下僕をモモンガに託されたアルベドなりの一つの答えだ。

 

 モモンガなら一人で片手間で出来る程度の仕事量。アルベドには疑う余地すらない。

 

 この未知の世界をモモンガはどこまで先を読んでいるのか。その時になって初めて分かるのだ。遠く離れたモモンガの指先一つで踊らされ、驚かされる事のなんと甘美で耽美なことか。

 

 ナザリックの智が三人、全力を振り絞っても姿すら見えないモモンガの足元にも及ばない。

 

 ナザリックで優秀さを自負していたアルベドは汗顔の至りだ。

 

 もしモモンガがこの世界にいれば、アルベドはイケイケドンドン、ナザリック最強と声を高らかに進撃すべしとモモンガに進言するだろう。だがそれは甘えだ。モモンガが背中に控えていると頼り切っているが故に出来るただの思考停止だ。

 

 モモンガがいないという不安。それがアルベドの心を押し潰そうとする。

 

 モモンガはただの至高の存在ではない。最後まで残った唯一無二の至高の存在だ。多くの至高の存在が去ってしまっても寂しさを抱えながらも下僕は生きてこれた。だがモモンガだけは駄目だ。モモンガが去る時、残るのは寂しさではない。絶望だ。虚無だ。

 

 モモンガは光だ。下僕の心を照らし続ける希望の光だ。光なくしてどうして生きてけいけようか。この光に縋る事は罪だろうか。ならアルベドは罪人で構わない。モモンガに鎖で繋がれた永遠の罪人で構わない。そうすれば光に照らされ続ける事ができるのだから。

 

 モモンガを想うだけでアルベドの心は簡単に揺蕩う甘美の川に流されてしまう。今は駄目だ。今はアルベドがモモンガが背負ってきたわずか一部だけでも背負う時なのだから。

 

 仲間を背負う重み。思いは重みだ。

 

 アルベドは一人も欠けることなくモモンガに下僕をお返ししなければならない。

 

 重い。なんと重すぎる事か。アルベド自身の重みだけで自壊しそうだ。

 

 ユグドラシルでモモンガは下僕だけではなく、他の至高の存在すら背負いギルドを導いてきた。

 

 重圧がアルベドを襲う。出来るだろうかこのアルベドに。だが成さねばならない。必ずモモンガに自身を含む全てをお返しする。

 

 アルベドはモモンガを愛している。

 

 必ずモモンガの期待に応え、モモンガに愛の言葉を再び頂くのだ。そして二人は世界から祝福され永遠に愛し合う夫婦となる。初夜では緊張で失敗するかもしれない。この淫魔であるアルベドがだ。もしかしたら興奮の余り自らを制御できず襲いかかってしまうかもしれない。

 

 モモンガは優しく頬に触れ、髪を撫で背中に回した腕でぐっとアルベドを引き寄せる。唇が繋がり、大量の唾液と共にモモンガの粘膜がアルベドのそれを容赦なく蹂躙する。

 

 あぁモモンガ様! 幸せな口づけです! アルベドは頑張りました! どうかお情けを一晩中! 三日三晩! 抜かず七日! 十月十日! ずっとずっと! 

 

 んふあぁぁ!! こんなの淫魔のアルベドも知らないよう……うぎゅうぅぅっ……

 

 モモンガ様すごすぎますうっ……

 

 アルベドはモモンガ様の形を無理矢理覚えさせられました。もう他の骨では満足できません……うへっへへ。じゅるっ。

 

 赤ちゃんは一〇本でも二〇本でも一〇〇本でも産んで見せます! えぇ、体だけは丈夫なんです。え? 骨だけど単位が違う? うふふ。冗談ですヨ。

 

 触れて下さい。あ、動きました。えへへ、お腹の中で元気な骨が動いて……ほらッ! 刺さりました! 子宮に突き刺さってますぅぅぅ! あぁぁぁ……アルベドは世界一幸せな雌です……モ、モモン……だっ、だっ、だっ、旦那様っ……

 

「アルベド」

 

 産まれました! 元気な骨が産まれました! 私達二人の骨です! 舐めたいくらいに可愛い。当然舐めるんですけどね。れろれろ。 え? もう一本産んでくれ? 嬉しい! 勿論喜んで! あっ、あっ、あっ、あっ、あなた……

 

「アルベド。そろそろこちらに戻ってきてくれないかね」

 

 ……モモンガ様。名残惜しくありますが、アルベドは(勅命)を成し遂げ、いつの日か、必ず御身の下へご報告に参ります。……愛しています……モモンガ様……。

 

 アルベドの瞼が開かれ、縦に割れた黄金の瞳がきゅっと絞られると共に意識はぼやけること無く瞬時に覚醒し加速する。

 

「……何かしら、デミウルゴス?」

 

「戻ってきたね。粗方終わったよ。あとはパンドラズ・アクターの件のみだ」

 

「そう。ありがとう」

 

 アルベドはぐるりと視線を回した。枯れた者たちばかりだ。種族も違う。人間の交尾を見たとて僅かも感情が動くはずがない。それと一緒だ。どんな痴態を晒したか知らないが動揺している者など一人もいな……一人いた。ユリだ。

 

 ユリは青白い肌色はそのままに器用に上気し、顔を伏せていた。

 

 アルベドは、ねんねなのねと呟き、ユリの眼鏡をもっと上気で曇らせた。

 

「統括殿。ちなみにモモンガ様の肋骨は自由に取り外しできません」

 

 パンドラズ・アクターの一言で耳まで真っ赤になったアルベドが両掌で顔を覆った。

 

 

 

 

後半に続く。

 

 

 

 




【捏造】
①オーレオール・オメガの一部境遇を捏造しオリキャラ化を回避。

②副料理長のビッキーは愛称ですが、名前がないと不便なのでビッキーを正式名称として捏造。

③料理長について、寿命がある種族(種族不明)である事が判明し、当初の設定が破綻。捏造として寿命はあるが二〇〇年~五〇〇年と寿命に幅を持たせる捏造裏設定を追加。同じく詳細不明につき理由付けしてオリキャラ化を回避。

アルベドについては伏線張り済みなので捏造としません。







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