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 重さ1300tある橋桁を多軸台車に載せて一括架設しようとしたものの、道路脇に立っていた1本の車両感知器の支柱に阻まれ、架設位置まであと30cmのところで断念して引き返す“トラブル”があったのは2018年5月中旬のこと。施工者のIHIインフラシステム・JFEエンジニアリング・横河ブリッジ・三井E&S鉄構エンジニアリングJVは6月2日夜から翌3日にかけて、再び一括架設に挑んだ。

 2度目の失敗は許されない。問題となった支柱を事前に移設したのはもちろん、JVは1回目の反省を踏まえて橋桁をリフトアップする方法を変えるなど、いくつかの改善策も試みた。

 その結果、架設は2度目にして無事成功。まずは一夜の工事を動画で紹介する。

6月2日から3日にかけて一括架設した臨海道路横断橋(動画:大村 拓也)
5月中旬に実施した1回目の架設の様子。橋桁を橋脚に据え付ける直前になって、橋桁と道路脇に立つ車両感知器の支柱とがぶつかりそうになっていることが判明し、架設を断念した(写真:大村 拓也)
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6月2日から3日にかけて実施した橋桁の再架設では、事前に支柱を右手前に4mほど移した(写真:大村 拓也)
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 架設したのは「臨海道路横断橋」。東京都江東区有明から中央防波堤内側埋め立て地、外側埋め立て地を南北に結ぶ「臨港道路南北線」を整備する一環で、外側埋め立て地を東西に走る「東京港臨海道路」の上を立体交差する橋を架ける。東京都港湾局が事業を進めている。

「工事箇所」が臨海道路横断橋の架設位置。週末の夜間、赤線の区間を通行止めにして架設した(資料:東京都)
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現場周辺を西側から見た完成予想図。今回の橋桁は「臨海道路横断橋」に当たる。「海の森水上競技場」は2020年東京五輪のボート・カヌー競技の会場として整備される(資料:東京都)
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 実のところ、IHIインフラシステムJVは車両感知器の支柱が橋桁とぶつかる位置に立っていることを最初から把握していた。そこで、土木工事などの別工事を手掛ける他のJVが支柱をあらかじめ移設しておく計画だった。

 ところが、別工事のJVは車両感知器を管理する警視庁との協議などを受けて、「橋桁の架設日までに支柱の移設が間に合わない」とIHIインフラシステムJVに伝えたという。IHIインフラシステムJVの担当者はこの報告を失念したうえ、支柱が実際に移設されたかどうかの最終確認や測量を怠っていた。

 1回目の橋桁の架設が失敗した後、再架設する直前の5月28日になって車両感知器の支柱を4mほど横へ移設する工事が完了。IHIインフラシステムJVは支柱と橋桁との離隔が3.759mあることを確かめたうえで、再架設に臨んだ。