6月14日がグーグル最終日でした。8月からPFNに混ぜてもらう予定です。退職や入社も重要イベントなんでしょうけど、転職活動それ自体が大変に楽しい体験だったので、入社したからって突然次の会社についての知見にあふれているわけでもなし、このタイミングでなんか書こうと思いました。どうせ暇だし。
前回との差分
http://shinh.hatenablog.com/entry/2016/03/11/142748 が前回までのあらすじ。このちょっと後で、「ニューラルトランスレートすげー」とか思って Google Translate のチームに入れてもらって、自然言語/機械学習研究入門+プロダクショナイズ+TensorFlowまわりのあれこれおもしれーとか、その他いろいろをやってた、というのが現在との差分です。
機械翻訳というのは、他の機械学習応用分野と同じく、ニューラルさんによってすさまじく簡略化されてしまったとのことです。とはいえ、機械学習初心者が10年選手に囲まれている状態で、学ぶこともすごく多くて、咀嚼するより早く新しい話題が現れている感じで、まだまだやってみたいことあるな、という感じでした。
でもやめるという話
じゃあなんでやめるかというと、飽きたのでした。グーグルでは色々新しいことが起きてて、そういうのは楽しいわけです。最近だと Swift for TensorFlow とかすげー楽しいと思いました。グーグルの外だと X 社の A と Y 社の B と Z 社の C を組み合わせて……みたいな感じでやってることを全部自社で持ってるみたいなこと多いですしね。
じゃあ何に飽きたかというと、プロジェクトとかじゃなくて、環境に飽きたということかな、と思います。
グーグルというのはやはりすごい会社で、個々の技術的な判断もそうですが、プロセスなんかもすごく合理的にうまく回ってると思います。そしてそのプロセスを改善するメタなプロセスもうまく回ってる。例えば不満があるとしても、不満を集めてきて修正する方のレイヤが割とうまく動いてるので、同じ不満をずっと持ってる、ということになりにくい。
プロダクトとかも、全体で見ると成功しているプロダクトがとても多くて、なんかあのプロダクトは地味かな?とか思ってるようなものでも、話を聞いてみると他の会社だと大成功レベルでうまくいってるような感じだったりして。成功してるおかげで投資がなされて面白プロジェクトが次々に出てくるし、自分自身はぱっとしないことやってても高い水準の給料が出る。
で、それらはすごくいいことなんだけど、なんかそういう良い環境に飽きてしまった。飽きたってのは単純な話で、単純な話だけに対処法が特に無い。しかも良い環境であることに飽きたという感じなので、どうしようもない。居心地いいからと言って11年もいたのは長過ぎでした。
というわけでグーグルはいい会社だと思います(言わされてるわけじゃないよ!)。辞める私が言うのもなんですが、おすすめ。
就職活動楽しかったという話
書きたかったのはこっちでした。人生初と言っていい就職活動がとても楽しかったんです、悩ましくもあったけど。
他の会社が何をやっているか、自分にあう仕事があるかなど、ハタから見ててもよくわからないので、気になる企業はサイトに書いてある連絡先から応募していきました。あと普段無視してるようなエージェントや会社の人事からのメールにも返事して、色々と対応していただきました。たくさん受けても一社以外行けないわけで、冷やかしみたいで失礼かなぁ……とも思ったのですが、まぁそんなしょっちゅうすることじゃないので許してもらおう……と考えることにしました。
知人がいる会社もあったので、そういう人に口を聞いてもらうという手もあるのかもしれなかったのですが、なんだか断りにくくなりそうなのでやめておきました。採用プロセスを実際に見た方が、未来の同僚がどういう方法で採用されるかを推測できるというメリットもあるな、とも思いました。かわりに、知人がいる会社では最初の面接時に「ご飯でもどう?」と声をかけてみたりもしてみました。
で、面接に行ってみるとすごく楽しいのでした。普通にオフィス見学に遊びに行っているのと違って、会社でやってることについて細かく説明をしてもらって、私が入社するとするとどういう仕事がありそうか、などに突っ込んで聞けるので。そういう突っ込んだ話をしていると、とても勉強になる。グーグルの X に対応するものは Y でこういうふうに使っているんだなぁ、とか、グーグルだと基本 B2C だけど B2B だとこういう感覚なんだなぁ、とか。
聞く話は大変面白そうな話が多くて、なんだそれ面白そう俺も混ぜろ、と思って毎度面接の後は「よしここにするかー」みたいに思ってるというような状態になりました。まぁ流されやすいのもあると思いますが。最初の頃は「グーグルには満足してるけど、もし面白そうな話が一つくらいあれば……」くらいの気持ちだったんですけど、これだけ面白い話があるなら、「どこかには転職するだろうな……飽きたし。あと転職活動に費した労力がもったいないし(サンクコスト)」、という気分になっていきました。
複数社から楽しそうな話を聞けたのは本当に嬉しい誤算でした。感じたこととして
- 人々が普通に楽しそう。10年前だと「エンジニア中心の会社です!」みたいな広告がなされてた気がするんだけど、もうそんなことは割と自明になってしまっている
- 小さい会社が普通にテクニカルな意味で(私の興味基準で)すさまじく面白そうなことをやっている
- お金も割とちゃんと出そう
体感ですが、10年前だと上のうち1つ満たす会社はあるけど、5年前くらい前までは2つ満たすのも難しかったのでは、と感じました。なんかいい時代になってるんじゃないかな、と思いました。AI系の会社に関してはAIバブルのおかげとかもありそうですが。
一方で、「どこも楽しそー」となってしまうと、候補を減らしていくのが大変でした。各社、楽しい議論を時間を割いて一緒にしていただいていただけに、断るのがとても心苦しくて。
最後、数社でどうしたもんか……と、今までこんなに悩んだことあったかなーというくらい考えました。結局なんで PFN のオファーを受けようと思ったかというと、いろいろあるけど、 PFN が一番うまくいかなさそうな気がしてきたからでした。良く言うとゴールが高いということもあるかと思います。うまくいかなさそうというか、「この会社どうなるんだろ?」と素直に疑問というか、良く言うとわくわくするという感じかもしれないです。
PFN より規模の小さい会社もいくつか候補にあって、割と高確率でうまくいくと思っていたので、会社が成功すると株とかで一攫千金!みたいなのはとても魅力的だったし、「もったいないことしたかなー」とも思っています。まぁでもグーグルで一番楽しかったプロジェクトはうまくいかないと思いつつ入って、実際にうまくいかなかったやつなんですよねえ(不吉)。
あとなんか、よく言われることですけど、採用とかはどっちから見ても縁というかタイミングというかですね。もう数年前だったら、もう数年後だったら、それぞれ違うところに行ってた気がします。実際、今回も他の会社のオファー受けかけたりもしましたし。なんにせよもう少し頻繁に転職とか考え(る|られる)べきだな、と思いました。
最後に、今回応募させてもらった会社の対応してくださった方々にとても感謝しています。色々と今まで考えてもなかった視点を持てたように思います。ありがとうございました。
まとめ
- グーグルいい会社だけど11年は長すぎた
- 転職活動楽しかった。おすすめ
- 8月まで暇なんで遊んでください