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医療・健康・食 週刊現代

歯医者を疑え!簡単なQ&Aで彼らのウソを見抜く方法

ケース別 迷ったら、こう訊ねよ

何度も削ったり埋めたり。歯の治療には、「本当に必要か?」と思うことがたくさんある。でも、いくつか質問をするだけで、その要不要が判別できるんです。

「残念なことですが、歯医者の中には、カネ儲けのため、患者にとっては必要のない治療をする人がいることも確かです。彼らは必要もないのに、虫歯を削る、何度も作り直しが必要な義歯を誂えるなど、ムダな治療を行っています」

著書に『歯科医は今日も、やりたい放題』がある林歯科の林晋哉院長はこう溜め息をつく。林氏が言う通り、歯の治療には「ムダ」がつきもの。カネ儲けのためには、その治療が必要であるかのようにウソをつく歯医者もいる。患者はどうウソを見破ればいいのか。

有効なのは、「質問」だ。歯科医の提案に対して的確に質問をぶつけられれば、それが本当に必要な治療かどうかを見抜ける。

提案を受けたケースごとに、どのような質問をすればいいのかを紹介していこう。

 

インプラントを勧められたら

「インプラントに関するトラブルは、いまだに多く起きています。少し前に来院した40代の男性は、別の病院でインプラントの治療を受けていました。

土台となる金属部品を差し込み、その上に被せ物をしたのですが、直後からその部分がグラグラし始め、ものを噛めない状態になってしまったと、相談にいらっしゃったのです」

こう語るのは、「削らない治療」を標榜する天野歯科医院の天野聖志院長である。

周知の通りインプラントとは、歯を抜いてしまった後、アゴの骨にネジ状の金属部品を差し込み、それを土台に、セラミックなどでつくった人工の歯を被せたものだ。

保険適用外なので、価格は医院によって異なるが、相場では1本10万~100万円とかなり高価で、値段の幅も大きい。

「入れ歯やブリッジに比べて高価ですが、うまく治療できれば、入れ歯よりも硬い食べ物も噛みやすく、自分の歯を使って過ごしていた時と比べても生活の質が低下しにくい」(日本歯学センターの田北行宏院長)

しかし、腕の悪い医師がカネ目当てでインプラントを設置すると、先に天野氏が述べたように、つけた直後からグラグラし始める、ネジが骨から取れてしまう、歯茎に炎症が出る、ひどい場合には、アゴの神経を傷つけて口内が麻痺してしまうトラブルが起きる。

では、キチンとした治療をしてくれるかどうか、どのような質問で確かめればいいのか。神田中央通りいけむら歯科の池村和歌子院長が言う。

「インプラントを埋め込む際に大切なのは、ほかの歯との兼ね合いなどを含めて、口腔内全体の環境がどうなっていくのか、という点です。

たとえば上の歯にインプラントを入れると、それに対応する下の歯が、硬いインプラントの影響で抜けやすくなることもあります。

診断力の高い医師であれば、インプラントを入れることによって、ほかの歯にどのような影響が出るかを予測することができる。

だから、インプラントを提案されたら、『インプラントを入れてから、5年後、10年後、ほかの歯はどうなりますか』と訊ねてみてください。

インプラント以外の歯に、今後どんなリスクがあるか、どんな治療をする可能性があるかについて答えてくれれば、かなり信用が置けます。それができない歯科医は、その場限りの治療をしている可能性が高い」

ほかに、リスクの高い歯医者を見分けるには、治療を受ける歯科医院の「体制」を確認しておくことも重要だ。前出の天野氏が語る。

「最近は、歯科医の業界でも専門分化が進んでいます。インプラントも専門医の養成が進んできている。

一人しか歯科医がおらず、その人が虫歯治療も、矯正治療も、インプラントも、すべての治療を行っている医院は、相対的にリスクが高いかもしれません。

一人しか歯科医がいない医院でも、インプラントや矯正といった専門的な技術が必要とされる治療の場合は、ほかの医院から専門医を呼んでくるというところもあります。

治療を提案された際に、『インプラントの専門医に治療してもらうことはできますか』と訊ねてみて、医院側がそうした対応をとってくれれば、信頼が置けると言えます」

高いカネを払うのだから、診断力が高く、丁寧に治療をしてくれる歯医者を見つけたい。

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