きのう告示された新潟県知事選。事実上の与野党対決となり、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題を含む県政の課題に加え、安倍政権の政治姿勢も問われることになる。県民の判断を注視したい。
米山隆一前知事が女性問題を理由に任期途中で辞職したことに伴う県知事選。三人が立候補し、自民党が支援する花角英世前海上保安庁次長(60)と立憲民主、国民民主、共産、自由、社民各党が推薦する池田千賀子元県議(57)との事実上の一騎打ちとなった。
森友・加計学園の問題や財務省前次官のセクハラ問題などで安倍内閣の支持率が低下した中での選挙戦だ。安倍晋三首相が衆院解散に踏み切る場合を除き、国政選挙は今年予定されておらず、県政立て直しに加え、国政の問題や安倍内閣に対する審判の場にもなる。
最も大きな課題は県内にある柏崎刈羽原発の再稼働問題だろう。
二〇一六年の前回県知事選で再稼働に慎重な姿勢を掲げて当選した米山氏は、福島第一原発の事故原因▽原発事故が健康と生活に及ぼす影響▽万一原発事故が起こった場合の安全な避難方法-の三つの検証が終わらない限り、再稼働の議論はしないとしてきた。
花角、池田両氏とも三つの検証の「継承」を掲げるが、その先に原発ゼロを強く志向するのか、再稼働も視野に入れるのか、よく見極める必要がある。
花角氏は新潟駅前での街頭演説で「原発に依存しない社会を目指す。検証結果が出れば一定の結論を出し、信を問いたい」と、検証後に再稼働の是非を問う出直し県知事選を行う考えを示した。
原発ゼロを目指す姿勢は評価できるとしても、花角氏は再稼働を進める自民党の支援を受ける。政権の論理を超える覚悟があるか、選挙戦での訴えに耳を傾けたい。
池田氏は新潟駅前での第一声で「原発のない新潟をどうつくるのか。検証の結果を県民と共有し、丁寧な議論の上で決定する」と訴えた。告示日前日には同県魚沼市で原発ゼロを訴えた小泉純一郎元首相に会い、脱原発の思いは「確信に変わった」という。
とはいえ、池田氏を支持する連合新潟には原発を推進する電力総連傘下の労組も加盟する。組織の論理が脱原発の足かせになることはないのか、不安は残る。
原発再稼働をめぐる県民の選択は、国民全体にも影響する。候補者は三つの検証の先にある原発の在り方について曖昧にせず、堂々と県民に語り掛けるべきである。
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